動物好きなら、夜中にふと、こんなことを思ったことはないだろうか?「今の時間、動物はどんなところで、どうやって寝てるのだろうか?」そこで、そんな疑問を解消すべく、動物のお部屋を訪問することに。今回は、ハシビロコウファンの間ではおなじみの、伊豆シャボテン公園のご長寿ハシビロコウ、ビルさん(オス)の部屋にオジャマさせていただいた。


○本題に入る前に、そもそも、ハシビロコウとは?
まずは、ハシビロコウの生態を簡単にお勉強。

●生息地は中央アフリカ
●あまり動かない鳥として有名に。
●野生では1000~2000羽しかいない貴重な鳥
●知っている人におじぎをすることがある。
●飼育担当者にクラッタリング(くちばしを合わせて音を出すあいさつ)をする。
●国内では伊豆シャボテン公園の他に、上野動物園、千葉市動物公園、高知県立のいち動物公園で飼育されている。

野生のハシビロコウの生態そのものが、あまり判明していないこともあり、平均寿命もハッキリとは分かっていないとのこと。
(36歳前後という説もある)ビルの年齢は推定で40歳以上と思われていて、(来日した時の年齢が1~2歳だといわれていることから推測)いずれにしてもご長寿だ。ちなみに、伊豆シャボテン公園で飼育されている全ての動物の中でも、一番のご長寿だといわれている。※2位はチンパンジーの「パピー」で32歳。

ちなみに、「ビル」という名前は、英名の「Shoebill」(靴のような嘴)から付けられたもので、ビルは32年前に「シュー」というメスと共に伊豆シャボテン公園に来園。元々は、研究のために来日したハシビロコウだったそうだ。

今回は、ビルさんのことをもっと知るために、飼育担当者の鳥居将輝(とりいまさき)さんにお話を伺った。

――テレビ番組でもよく紹介されることもあって、全国からビルさんのファンが訪れるそうですね。ビルさんにはどんな特徴がありますか?

「他のハシビロコウにも言えることかもしれませんが、頭が良いので、人を見分けることができます。飼育員の後ろ姿がほんのちょっとだけ見えただけでも気づきますし、わずかな足音も敏感に察知しますね。飼育員が名前を呼んだ時は、ちゃんと振り向きます。飼育員が実習の学生さんと一緒にいるところを見ると、飛んできてヤキモチを焼く(飼育員をとられてしまうと、嫉妬している?)こともあるくらいで(笑)。性格は、おっとりしていてお客さんには温厚ですが、追いかけたりするとさすがにストレスがたまるようなので、そ~っと観察していただければと思います」

――年齢を多く重ねているとは思えないくらい、羽根が綺麗ですよね!!
「羽根は定期的に生え変わっていますが、大量に抜けることはないですね。
ここのバードパラダイスが比較的広いので飛びやすいということと、生きたコイを食べさせていることもあって、ストレスや外敵がいないのも若々しくいられる要因なのかもしれません」

関節を痛めていた時期はあるものの、大きな病気はしていないとのこと。コイは、その時の食欲にも左右されるものの、朝の時間帯に5~6匹、夕方に15匹ほどを食べている。
「必ず飼育員が見ている状態で食べさせます。そうしないと、コイを他の鳥に奪われちゃうんです(苦笑)」
決して、すばしっこい動きではないので、大変なのだ。

季節によっては、ハシビロコウ独特の行動も見られるそうで…
「巣作りの季節になると、木の枝をクチバシで加えて、お気に入りの飼育員のところにやってくることがあります。これは『一緒に巣を作ろうよ』というお誘いなんです。
屋外やおウチの中で、枝や葉っぱをビル好みにディスプレイしていることもありますよ」

人間も誘われたら、キュンとしちゃうかも。

●ビルさんの建もの(家)探訪

――では、ビルさんが家の外に出かけている間に、お部屋を拝見させてください。これまた、立派な門構えですね。早速入ってみましょう。おじゃましま~す。おっと、なかなか広い部屋ですねぇ~。

「だいたい縦×横2mの広さです。床にはおがくずが敷いてあります」
――床も暖かそうですねぇ~。
「赤外線ライトがありますので、冬でも温かいですね」
――冬はお部屋でどのように過ごしているのですか?
「昼間に休んでいる時は、立っているか、床でじっとしていますね。寒い時以外でも、風が吹くのが嫌いなので、風が強い時は部屋に入っています。逆に。雨は気にしないので、雨の日は外に出てたりして、そういうところはビルさんの気分次第ですね。
寝る時はベターっと伏せて寝ていますが、熟睡はしません。休んでは起きて、休んでは起きての繰り返しです」
――わかりました。本日は、伊豆シャボテン公園のビルさんのお宅におじゃましました。

今回は特別な許可をいただいて撮影させていただいたものであり、普段は部屋の中の様子を直接見ることはできない。そのかわり、中の様子をバードパラダイスに設置されたモニターで確認することができる。

ところで、今回の取材で何が一番ビックリしたかというと、ビルさんの部屋がシンプルで非常に綺麗だったということ。(←当たり前か)逆に、自分の汚い部屋をビルさんに見られたら、あきれてすぐに、伊豆に飛んで帰ってしまうのではないかと思うのであった。(やきそばかおる)

伊豆シャボテン公園