“腐女子”と呼称されている女子がいる。男性同士の恋愛、BL(※1)を扱った小説、マンガ、ゲームなどの作品を好む女子。
男性同士の恋愛を妄想して楽しむ女子。それらの女子を“腐女子”と指すが、最近はオタク女子全般を指す意味合いをもつこともある。

どちらにしても、一般ウケをしない趣味を持つ女子として、痛い目で見られることもあるようだが、“腐女子”と呼ばれる本人達もそれは重々承知している。

ライター自身、“腐女子”という言葉とはじめて出逢った当初は、「豆腐の“腐”、腐るの“腐”……女子を褒める言葉ではなさそうだな」というざっくりとしたイメージで、それ以上調査、分析することはなかった。

それから年月が経ち、BL商品に興味を持ち、読み始め、これは面白い!と新たな世界の入り口に一歩踏み出す時に“腐女子”という言葉に再会したのだ。

「私って正真正銘の“腐女子”なの?!」とBLという新しい世界を発見したと同時に新しい自分も発見してしまったようで少し興奮し、「もう戻れないかもしれない」と不安にも駆られた。


腐女子実録24時―FJS24―という本を見つけた。“腐女子”のあるあるネタを4コマ化にした本で、ライター自身の“腐女子”度具合をチェックすることができる優れものであった。

まず、表紙の“カートを持って歩いている女子”のシルエットを見て、ピンと来てしまった。カートの中にはコミケ(※2)でゲットした同人誌(※3)、もしくはコスプレ衣装が入っている可能性がきわめて高い。ここでライター同様にピンと来た方は“腐女子”の可能性アリと思っていただきたい。

担当編集者の方から本書の表紙について伺った。


「装丁にも実はこだわっておりまして、表紙はわかる方はわかると思うのですが、彼の聖地へカートを持った女子が歩いてむかっている表紙になっております。装丁をお願いしたデザイナーさんとも打ち合わせをしたのですが、わたしもこの表紙が出てくるとは思わなかったので、デザイナーさん(男性です)の腐女子への理解にもこの場をお借りして感謝したいです」

カートを引っ張り、背筋を伸ばして歩くさまは自分を偽らずに、前へ突き進んでいく女戦士だ……と、ピンクのシルエットから妄想してしまう。

ほかに以下のことが当てはまる女子は“腐女子”である可能性が高いと思われる。

■携帯電話のメールアドレスに2次元キャラクターの名前を入れている
■原宿や渋谷に行くには相当勇気がいるが、池袋は一人でも余裕で行くことができる
(ただし乙女ロード周辺に限る)
■「おとげー」といったら「乙女ゲーム」略称であり、ゲームソフトを持っている
(音楽シュミレーションゲームの略でない)
■自分は「●●萌え属性」である
(萌え属性とは、自分が心奪われてしまうタイプのこと)
■路線図を見るとつらい満員電車も平気である
(鉄道擬人化萌えであれば、線と線の乗り入れを見て妄想可能)

これらは本書のほんの一部だが、もっとレベルの高い“腐女子”あるあるネタが4コマで紹介されている。
ちなみにライターは上記の5項目中3つもあてはまってしまった!

担当編集者から本書の出版経緯を教えてもらった。

「元々この作品はWEBサイトで無料公開しており、WEBから投稿された実体験や時には編集部内の腐女子な編集者のネタを元にコミカライズし、単行本化した作品です。
最初のころは、投稿が少なく編集部からネタを提供することがあり、よく編集会議でオタクな実体験談を他の編集者から無理やり聞き出したり、自分の体験談を種十号先生方(色々なネタを面白くコミカライズしていただける2人組みの本書の著者)に身売り……お話ししたりと私自身も身を削った作品でもあります(笑)」

担当編集者自身の実体験も紹介されている本書。
担当編集者をはじめ、“腐女子”あるあるを携えている女子、共感できる女子って意外と多いのかもしれない。

「腐女子という言葉は今では、市民権を得てきていますが、まだまだマイナーなイメージを払拭するにはいたっておらず、声を大にして『私は腐女子です』と言える世間ではないと思います。ですが、この本を読んでもらって、『腐女子の中では当たり前だよ!』とか腐女子でない方には『腐女子ってそんなにおかしな趣味じゃないんだ』ということを実感してもらえる内容になっておりますので、腐女子理解への第一歩の入門編として、読んでいただければと思っております」
担当編集者の本書に対する思いを知った。

確かに初対面の人に「趣味は読書です。最近はBL作品をよく読みます!」と自己紹介しづらいことはおおよそ想像がつく。


もちろん、自分の趣味を周りにオープンするかどうかは本人の自由ではあるが、自分自身が“腐女子”のこと、“腐女子”の趣味のことを理解していれば、何も不安になることなく好きなことに没頭できるのだ。

本書には「師匠~!」と拝みたくなるくらいの著者の一言解説がネタごとに掲載されている。“腐女子”業界用語が出てきても問題なく読み進められるため、安心である。

きっと読者である女子たちも「“腐女子”って私の周りにいるかも」と気づいたり、共感できる趣味もあれば、「まだよくわからない世界だけど、なんか面白そう!」と“腐女子”のイメージが変わる女子も出てくるだろう。

そして「あれ?私、“腐女子”なの?」と思う女子もいるだろう。
不安に思うことはない。
ぜひ一歩、踏み出してみよう。
“腐女子”の世界へようこそ!!
(boox/茶谷)

※1
ボーイズラブの略
※2
コミックマーケットの略。世界最大規模の同人誌即売会。
※3
同人雑誌の略。漫画・アニメ・ゲームの二次創作された作品。