ここ数年、日本のワインの消費量が増えている。2012年に国内で消費されたワインはおよそ4億1,500万本相当! 実はこれ、2008年と比べて30%以上も増えているのだとか。
(※ヴィネクスポ/IWSR調査)。

それだけのワインが飲まれているということは、当たり前だがそれだけワインボトルが空いているということ。私自身、家でよくワインを飲むので、週1の回収日の度にかなりゴミを出していることを実感していたが、さすがに「コルク」についてはノーチェックだった。

ワインボトルの栓をするのに使われるコルクは、ボトル本体に比べると存在感はグッと小さいが、それでもチリもつもれば山。すでにアメリカやドイツではコルクのリサイクル活動がおこなわれているが、いよいよ日本でも本格的なコルク再生プロジェクトが始まった。その名も「TOKYO CORK PROJECT(東京コルクプロジェクト)」だ。


日本のワインのおよそ3分の1のワインが消費されるワインシティ、東京からスタートした同プロジェクトでは、飲食店などから使用済みのワインコルクを回収。工場で粉砕し、コルクの椅子やワインパーティボックスといったオシャレなプロダクトに生まれ変わらせている。プロジェクトを運営する株式会社パブロフの北村真吾さんに話を聞いた。

――なぜ、コルクに目を付けたんですか?
「もともと私自身が飲食店で働いたのですが、その店ではコルクをまとめて捨てていました。結構ワインが出る店だったので、1店舗でこれだけの量になるなら、まとめればかなりの量になる。何かできるのではと思ったんです」

もともと飲食業界は水を大量に必要としたり、食材ロスを出しがちだったり、環境への付加が高くなりがち。
そんな業界だからこそ何かポジティブなことがやりたいと考えたそうだ。

アイデアを思い付いたのは今から3年以上前の2010年末。もちろん、その時点での協力してくれる店舗はゼロ。そこで都内の飲食店に1軒ずつ電話をかけ、アポイントを取っていったという。いわば、飛び込み営業だ。そうした地道な努力の結果、協力店舗も着実に増え、今では都内に約470店、全国に約630店の協力店舗を抱えるまでに。
当初はプロジェクト側から各店へ協力を依頼していたが、400店を過ぎたあたりからは、プロジェクトを知った店の人から協力への申し出が増えてきたそうだ。

協力店舗の店内には、ワインの木箱を利用したコルクボックスが設置され、ある程度たまったところで引取りにきてもらう仕組み(※都内主要区の自社回収エリアのみ。他エリアは郵送で送付)。協力店舗の大半はレストランやバーだが、なかにはリカーショップやワインスクールもあるそうだ。

――毎月の回収量は?
「1カ月あたり380kgほど。ワイン約6万3500本分ですね」

かなりの数ではあることは間違いないが、日本国内のワイン消費量全体からすればまだごく一部。
ちなみにコルクのリサイクルに協力してくれるコルクメーカーを見つけるのにも、かなり苦労したという。参考までに、「スツール」(コルクの椅子)を作るにはワイン約850本分のコルクが必要。「ティースケース」(※欧米でポピュラーな乳歯入れ)なら75本分、「コースター」でも3~4本分が要る。また、クリエイティブエージェンシーGLIDERがプロデュースする「砂時計」のように、コルクを粉砕せず、元の形をそのまま活かしたアイテムもある。

これまでリサイクルプロダクトは、協力店舗への受注生産のような形が主だったが、この春からはオンラインでの一般消費者への販売も予定しているとのこと。

――最後に、プロジェクトへの思いを教えてください。

「ペットボトルや古紙など既存の再生資源と同様に、コルクを再利用する社会にしていけたらと考えています。コルクはワインという身近なものから出たマテリアル。ぬくもりを感じる素材感を活かしたプロダクトを作っていきたいと思います。生活を豊かにし、社会や協力店舗に還元していける仕組みです。興味がある店舗の方は、ぜひ問い合わせてください」

環境にもやさしい上に、見ると気持ちがほっこりするコルクのアイテムたち。ワイン好きならぜひチェックしたいプロジェクトです。

(古屋江美子)