ここ近年の音楽シーンを見回すと、再ブームのきざしがあるのがへヴィメタル。
もともと根強い人気を誇るジャンルなのだが、昨年の夏フェス「SUMMER SONIC」にはシーンの大御所・メタリカがヘッドライナーで登場。
同じく昨年のメタルフェス「LOUD PARK」では約3万人の観客を動員。そして国内アーティストでは、アイドル×へヴィメタルという斬新な切り口でデビューしたBABYMETALの人気が沸騰し、ついに海外へ進出……。

そんななか(←強引)、メタルをテーマにしたレシピ本まで登場した。その名もズバリ『メタルめし!』(DU BOOKS/1799円税込)。
メタリカの名作『MASTER OF PUPPETS』のジャケットを、チキンナゲットと十字架型ポテトで再現した“マスター・オブ・ナゲッツ”、カレー好きなメタルの巨匠・オジー・オズボーンに捧げるカレーソースのホイル包み焼きハンバーグ“ハンバーグ・アット・ザ・ムーン ー月見ホイルー”、ヴァン・ヘイレンのギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンのビビッドなギターの柄をトーストの上で再現した“パン ヘイレン”……えっ! ダジャレですか?

著者のヤスナリオさんは、料理初心者向けの夜食レシピ本『深夜特急めし109』(主婦と生活社/972円税込)などが好評な“料理勉強家”。ちなみに“勉強家”と名乗っているのは、普段は表具師さん(ふすまや屏風を仕立てる職人)として仕事をしていて、料理が本業ではないためだそう。

ご本人にこの本を出したきっかけなどについて聞いてみた。

「数年前からブログでレシピを紹介していたんですが、ごはんブロガーはたくさんいるので、人と同じことやっても面白くないから『自分の一番好きなことは何だろう?』と考えて、音楽をテーマにしようと思ったんですよ。最初はロックバンド全般をテーマにしていたんですけど、僕自身が大のメタル好きなのと、友達に何か料理をふるまう時にもギャグでメタルっぽいメニュー名を付けて出したりしてたら、意外にウケがよくて。だんだん、メタルをテーマにした内容に固まっていきました」

そんなこんなで生み出されたレシピの数々は、缶詰や市販のソース類も活用するなど、初心者でも作りやすいよう工夫されている。スイーツもあるが、基本的にスパイシーだったりチーズやマヨネーズをきかせていたり、揚げ物もあって、なんだかビールが進みそうなラインナップなのだ。ヤスナリオさんによるメタルめしの定義は3つ。


・ネーミングはバンド名(または曲名)にかかっていなければならない
・ガッツリ系でなければならない
・食べてちゃんとおいしくなければならない

ネーミングは前述のようにほぼダジャレで、普通においしそうなメニューだったりするのだが、ブラック・サバスをリスペクトするバンド、人間椅子をモチーフにした「和製ブラックサバ酢」(サバ缶使用)のあとに本家ブラック・サバスをモチーフにした「サバ酢・ブラッディ・サバ酢」(塩サバ使用)が出てくるラインナップなど、意外にジワジワくる仕上がり。本人曰く「地味に苦笑いできるものがお気に入りで、例えばバンドのストライパーをモチーフにしたオムライスの“オムライパー”だとか。
あと、エアロスミスにちなんだ豚肉メニューの“和えろ酢みそ!ポーク・ディス・ウェイ”を思いついた時にはガッツポーズ出ましたね!」とのこと。確かに、スティーヴン・タイラーがシャウトしそうなネーミング……いや、嘘です。がしかし、メニュー名だけでなく本全体にみなぎるテンションの高さがもはやマンガのレベルに達していて、ぶっちゃけメタル好きじゃなくても結構ツボにハマりそうなのである。

ちなみにこの本にはゲストとしてジャパニーズ・メタル界のクッキングパパ(?)ANTHEMのベーシスト・柴田直人氏、OUTRAGEのドラマー・丹下眞也氏がプロデュースするレシピも紹介されている。


「中学生ぐらいの頃にANTHEMが大好きで、柴田さんに憧れて楽器を始めたりもしていたんです。彼が料理好きで、特にカレーが得意というのはファンの間では有名な話なので、この本を出すにあたって、“究極のANTHEMカレー”のレシピを作っていただけないかとお願いしました。OUTRAGEももともと大好きなバンドで、丹下さんもブログで毎日のように作ったメニューの紹介をしていたりするので、“地球最後の日に食べたい丼もの”をリクエストしてみました」

業界の大御所まで巻き込んだ『メタルめし』。レッド・ツェッペリンら70年代のハードロックバンドや80年代から活躍するアイアン・メイデンほかの王道メタルバンド、メタリカをはじめとするスラッシュ・メタル四天王、チルドレン・オブ・ボドムら00年代以降の新世代バンド、その他に“メタルコラボ番外編”としてBABYMETALをモチーフにしたキュートなピンチョス(位置的に三人娘の脳天からピン刺さってますが、これもある意味かなりメタル?)……などなど、モチーフにしているアーティストも幅広い。レシピだけでなく、メタル雑誌『BURRN!』協力のもと、モチーフにしたアーティストの名盤やトリビアを紹介するコーナーもあり、メタル愛あふれる読み物としても楽しめるのがポイントだ。

来たる夏~秋のフェスシーズンを待ちつつ、このガッツリ『メタルめし』でパワーをつけるべし! ……なお、食べすぎメタボにはくれぐれもご注意を。

(古知屋ジュン)