「パッションフルーツ」って知ってますか。ハワイでは「リリコイ」と言われるトケイソウ科の果物で、球状の果実を割ると、ゼリー状の甘酸っぱい果肉と果汁、小さい種が出てきて、それをスプーンなどですくって食べるのが一般的だ。

パッションフルーツを八王子が推してる理由
この黄色い種のような部分を食べるんです。

自分は沖縄や台湾に行ったときに食べて大好きになったのだが、残念ながら巡り合える機会がなかなかない。だが、調べてみると、鹿児島や熊本、さらには東京・八王子でも栽培されており、八王子JAでは平成25年に組合を作ってパッションフルーツを推していることがわかった。

それにしても、なぜ八王子でパッションフルーツ? JA八王子パッションフルーツ生産組合・組合長の澤井孝行さんに聞いた。

「原点は、8年前にある花卉農家の方が熱帯果樹の研修のために小笠原へ行ったことでした。景気低迷の影響で、花卉農家は花苗の価格下落、過度の競争により収益率が大きく下がっていたため、新たな魅力を持つ植物を探していたのです」
そこで初めてパッションフルーツを食べ、その味に魅かれ、「八王子は暑いので、栽培できるのではないか」と考えた。6年前に栽培にチャレンジし、そこから苗の販売を兼ねてパッションフルーツを栽培してくれる農家を探していくうち、若手の農業後継者の間に広がり、2年前には生産者が8名になった。
澤井さんは仲間になった第1号だそう。

「ただ、パッションフルーツを栽培したはいいものの、なかなか売れないのです。ケーキ屋さんに飛び込み営業にいったこともありますが、個々の活動では限界がありました」
そこでJA八王子のひとつの部会として生産組合を設立。組織的な栽培・販売・営業をすることで効率化を進めることと、「パッションフルーツを八王子の特産品にする」ことが目的であった。
「八王子は農畜産物の生産金額・栽培面積ともに都内一ですが、実のところ特産品がないのです。そこで、『若手農業後継者8名(=八人の王子→八王子)で特産品に育て上げよう』という目標を掲げました。
八王子は、一昔前は都内最高気温を記録したということで、よくNHKのニュースで報じられていました。昔から暑いイメージがあり、しかも盆踊りで流れる曲の一節に、『太陽の街 八王子』とあるのです。八王子は“南国”なんですよ。冬は寒いですが」
南国をイメージするパッションフルーツは、特産品としてもってこいだったのだ。
パッションフルーツを八王子が推してる理由
八王子で育てられているパッションフルーツ。実はまだ青いです。

ところで、パッションフルーツの魅力とは?
「絶妙な甘さと酸味のバランスから来る味はもちろんですが、その香りも魅力でしょう。配達のために車に積んで運んでいると、車内が甘い香りで包まれます。
芳香剤になるのではと思うぐらいです」

ちなみに、パッションフルーツの種に含まれる物質「ピセアタンノール」という物質には、美白効果や肌のたるみ予防や回復、アンチエイジングなどの効果が期待されることでも、近年、注目されてきている。

食べ頃は、「皮にシワが入ってから」。シワがあると悪い実と誤解されることがあるが、パッションフルーツの場合は、シワがあるほうが、酸味が抜け、より甘くなるからだ。

生の果実の販売金額は時価だが、1個200~280円程度。現在、道の駅八王子滝山、JA八王子大和田支店ふれあい市場、JA八王子園芸センター(犬目町)、直売所「ねぎぼうず」(小比企町)で販売しているほか、組合による通信販売も行っている。

販売時期は8月中旬~10月中旬と、11月~年内いっぱいまで。
組合オリジナル商品として「ふるーみんどら焼き」「ふるーみんジャム」「ふるーみんゼリー」なども販売している。
意外に身近で味わうことができる「南国の味」パッションフルーツ。一度試してみては?
(田幸和歌子)