東京流通センター第一展示場で、先日開催された「第二十二回文学フリマ東京」。
文学作品を中心とした展示即売会です。
参加者が文学と信じるものであれば、どのようなかたちの作品でも出品できるという少し変わった条件が特徴で、小説や詩集などだけではなく、栞や扇子、Tシャツ、手ぬぐい、手作りの巻物、自作のカードゲームまで、幅広く出展されていました。

文学好きのための文学のお祭り。そんな場所なら、普段めったに読めないような刺激的な奇書もたくさん集まっているのでは…。期待を胸に、長机に囲まれたブースの中を巡回していると、「これは…!」と思わず目を見張ってしまうものばかり。今回は、そうした本の中から5冊ほど、記者が個人的に気になって仕方なかった作品をピックアップしてみました。

食べることは"エロい"新たなスタイル、食フェチに注目した 写真集『食に淫する』



「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

ショートケーキや果物を口いっぱいに頬張ったり、舌先で舐めてみたり。写真には、色鮮やかな食べ物と、それをほおばる口唇(なんとモデルは男性とのこと!)が写し出されていて、見てはいけないものを見てしまったようなドキドキ感があります。
『食に淫する』は、食べることと、フェチの関係に迫ったミニコミ誌です。食とはなにか?エロスとはなにか?を考えるエッセイや対談などと共に構成されていて、刺激的なだけでなく、深く考えさせられるものになっています。

なぜ、このような本を製作したのか、冒頭にはこのように書かれています。
『とにかく食物を、目で耳で鼻で舌で頭で味わうとき。いつもむらむらとこみあげてくるものがある。(中略)だがこうした食事の猥褻さというものは、日常巧妙に覆い隠され、あるいは忘れ去られている。
それを引きずり出し、しゃぶりつくし、今一度骨の髄まで味わう』
普段意識しようとしないことに、あえて目を向ける、そこに刺激的な驚きがあるのかもしれません。

大学のサークルを潰すのは恋愛? サークルクラッシュの原因を分析した『Circre clash lovers assosiation』


「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ


ひとつの大学に星の数ほど存在する大学サークル。しかし、その内部ではドロドロとした人間関係に巻き込まれたり、こじれにこじれた色恋沙汰に遭遇したりと、入会した人に苦い思い出をつくることもしばしばあるようです。この本では、そんなサークルがクラッシュしてしまう原因や、小さい集団で置きやすい恋愛問題のあるある、さらには若者の居場所はどこにあるのかといった問題にまで踏み込んだものとなっております。
「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

『サークルクラッシュは遠い世界の物語ではない、われわれの生きている―分かり合おうとするがどうしても分かり合えない―この世界を映し出す鏡だ』(巻頭言より)
執筆メンバーは、現役大学生が中心。生々しいエピソードが満載の文章や漫画からは、生きている上で体験する様々な苦い思い出が詰まっていて、胸にこみ上げてくるものがあります。

エスペラント、ロジバン、エルフ語…深すぎる人工言語の世界を紹介する『人工言語カタログ2016』



「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ


普段、自然に話している日本語や英語、中国語、フランス語といった言葉とは違い、製作者が意図的につくりあげた言語のことを人工言語と言うそうです。この本はそんな人工言語に愛を傾けて止まない人たちによって作られた人工言語の解説書となっています。馴染みがないどころか、存在すら知らなかった言語がたくさん紹介されていますが、「全ての人の第二言語」というエスペラントから、エルフ語やアルカといった架空世界の物語にも登場する言語、日本人がたった1人でつくりあげたノシロ語まで、数々のエピソードと共に触れられています。

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ


とっつきにくい印象の人工言語ですが、執筆グループの方々はどうしてハマリ込んだのでしょうか。『中学生の時にハングル文字を見たのが一番最初ですね。最初は人工の文字を作ったりしていました。』『(旅行中)一週間タダで泊めてくれるっていうおじいさんがいたんですね。「一週間タダで泊めてあげるから、毎日一緒にエスペラントを勉強しよう」と言われて。
』『中学生の時に「アルトネリコ」ってゲームに出会って、それでヒュムノス語を知ったのがきっかけです』(以上、「人工言語友の会」座談会より)
人工言語、それは、一から言葉を設計するというロマンが魅力なのかもしれません。

ロシアで開催される謎の奇祭"ドストエフスキーの日"とは?『2015 ドストエフスキーの日 参加レポ』



「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ


毎年、夏にサンクトペテルブルグで開催されるという、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』で有名な文豪ドストエフスキーを祝う(?)イベント“ドストエフスキーの日”。しかし、インターネットのわずかな情報の他には、旅行会社や地元の観光ガイドにも知られていないとのこと。この本は、作者が、実際にロシアへおもむき、祭りの様子を取材したレポート漫画です。3メートルにもなるドストエフスキー人形によるバンド演奏や、小説のキャラクターたちのコスプレをした劇団のカオスな街頭パフォーマンスなど、その祭りの異様さが丁寧に伝わってくる内容となっております。

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ


著者の方は、中学生の頃に『罪と罰』を読んで以来のドストエフスキー好き。笑顔で「また今年も絶対に行きます!」と話してくれました。この夏、サンクトペテルブルグへのご旅行を考えている方に、こちらの奇祭はいかがでしょう?

これであなたも占い師に? 水晶玉のただしい使い方を解説した『水晶球霊視』


漫画やアニメで、占い師が水晶玉に手をかざして占うシーンを見たことがある人は多いはず。この本は実際に水晶で霊視するにはどうすればいいのかが具体的に紹介されています。ともすれば水晶玉を用いた魔術は正気を失う危険性もあるとのことなので注意が必要ですが、魔術に必要なアイテムやその活用の仕方、魔術に取り組むための気構えなどが、著者の体験エピソードを交えて丁寧に説明されています。

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

著者の方は現役の占い師の方。今回は親交のある占い師の方々でブースを出されていました。購入したところ、その場でタロット占いをしていただくことに。今後の将来のことについてうかがうと、自分から話していないことまでズバズバと言い当てられる結果になり、度肝を抜かれました。


全国に広がる文学フリマ 今年は京都、岩手、札幌で初開催!


「食フェチ写真集」「サークルクラッシュ研究本」 アヤシイ魅力の奇書が集結した文学フリマ

これまで紹介してきた本は、もちろん文学フリマで出展された本のごくごく一部です。アヤシイ魅力の本だけでなく、読めば感動するような創作や、知的な好奇心を刺激してくれるような評論集など、バラエティに溢れているところが文学フリマの強みのひとつであるように思いました。

東京で年に2回開催される文学フリマですが、現在は東京だけでなく、日本各地で開催されるようになりました。現在、大阪、金沢、福岡、岩手、札幌、京都での開催が決まっており、事務局によると、全国の百都市で開催されることが目標であるとのこと。

今後は地方在住の方でも気軽に参加することができるようになる文学フリマ。きっと、
そこでしか手に入らないような刺激的な本が待っているはずです。手にとった本をきっかけに、ブースの向こうの相手と仲良くなることもあるかも。一度、最寄りの文学フリマに足を運んでみては?

文学フリマ公式ホームページ
http://bunfree.net/

・『食に淫する』(著者・尊厳)
Twitter 
https://twitter.com/shokuniinsuru
HP
http://shokuniinsuru.tumblr.com/

・『Circre clash lovers assosiation』(著者・サークルクラッシュ同好会)
Twitter
https://twitter.com/circlecrush
HP
http://circlecrash.jimdo.com/

・『人工言語カタログ2016』(著者・人工言語友の会)
Twitter
https://twitter.com/t_conlang
ブログ
http://bgfree-conlang.blogspot.jp/

・『2015 ドストエフスキーの日 参加レポ』(著者・ドストエフ数寄大名)
ピクシブ
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=53658873

・『水晶球霊視』(著者 ヘイズ中村)
Twitter
https://twitter.com/HeithNakamura
mixi
http://page.mixi.jp/view_page.pl?page_id=301020

ゆりいか
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