2016年6月26日、「風呂の日」に合わせて銭湯を舞台にしたとあるイベントが行われた。「オフロンピック」というタイトルで、五輪をモチーフにした競技大会だという。
銭湯で開催されるコンサートは過去に見たことがあったが、競技大会というのは聞いたことがない。どんな様子なのか、潜入取材を敢行することにした。
会場となるのは、大阪市住吉区にある「朝日温泉」だ。
露天風呂まで備えた充実の設備が印象的で、お昼過ぎから常連客で賑わう、地域に愛される銭湯である。
「オフロンピック」が開幕する午前11時半には少し余裕があったが、すでに近所のお子さんやそのご両親、朝日温泉の常連さんなどで銭湯内は賑わっていた。
いよいよ開幕の時間となり、入場BGMとともに聖火ランナーが登場。
扇風機から風が吹いて、聖火に見立てた赤いビニールテープがふわーっと起き上がるという可愛らしいアイデアが笑える。
選手宣誓の後、いよいよ競技のスタートとなる。5種目の競技を全16チームで競い合う形式で、記念すべき第1種目は「桶カーリング」となった。
風呂桶の底にキャスターが取り付けられ、それをデッキブラシで押し出して的の中心を狙うという競技で、2チーム対抗で行われる。
面白いのは、風呂桶の中にシャンプーや石鹸、タオルなどを入れ、そのアイテム数が多ければ多いほど獲得できる得点が高くなるというところ。中身が重ければ重いほど難易度が上がるという。
的の中心に上手に止まった子供の桶を豪快に弾き飛ばす大人、強く押し出し過ぎて桶が倒れて中身を散乱させてしまうプレイヤーなど、面白いシーンが続出して場内も白熱。
次の種目は、「叩いて桶ってじゃんけんぽん」。うっすらと予想できる通り、じゃんけんに勝った方がピコピコハンマーで攻撃、負けた方が風呂桶で防御するという動きを反射神経でスピーディーにこなす競技である。
ここまでの2種の競技を見ても分かるとおり、オフロンピックでは風呂桶が大活躍するのだが、お次の種目となる「ゴルフロオープンカップ」も浴槽に浮かべた桶におもちゃのゴルフクラブでボールを入れるという種目だ。
浮かぶ桶の色で得点が異なり、中央の銀色の桶に入れば高得点、というシステムになっており、上手に打たないとボールが桶を飛び越えて飛んでいってしまうのでなかなか難易度が高いようであった。
4種目目は「桶タワー積み」という競技で、文字通り風呂桶を積み上げてその高さを競うものなのだが、奇数回の桶にはお湯をくんで積まなければならないというルールになっている。高く積めば積むほどタワーが倒れた際に大量のお湯が飛び散り、周りのギャラリーもお湯まみれになってしまうという危険な競技なのである。
タワーが倒れるたびに悲鳴と笑い声が響き渡る大興奮の種目だったのだが、中でも注目を集めたのが、参加者の一人であるオカピーさんが25個の桶を積み上げるという前人未到の記録に挑戦したシーンだった。
自分の身長を遙かに超え、手を伸ばして届くギリギリの高さに桶をそーっと置く……。誰もが息を呑んだ瞬間、カメラのファインダーの中からオカピーさんの姿が消えた！
と思ったら、湯船にジャバーンと落水！
この日最も場内が盛り上がった一瞬であった。
最後の種目は、「桶殺！仕事人」。種目名からは内容が想像しにくいが、これがすごい。男湯の床に並べた桶が的になるのだが、プレイヤーは女湯に移動し、吹き矢を使って壁ごしに的を狙うのである。
もちろん女湯側から男湯の的は見えないので、まさに運まかせな競技なのだが、的に矢が落ちると見えない壁の向こうからわーっと歓声が上がるという不思議な面白さがあった。
と、ここまで紹介した種目に共通するのは、普段やったら絶対に怒られることばかりだという点である。桶カーリングのマネは子どもの頃にしてみたいと思った記憶があるし、男湯と女湯を隔てる壁の向こうに矢を飛ばすなんて、なんというか、考えることすら怒られそうな痛快な発想だ。
今回のイベントの司会をつとめた、「赤犬」というバンドでパーカッションを務める水口グッチさんにお話を伺うと、オフロンピックの種目については朝日温泉の田丸さんと共に「大人でも子ども関係なく楽しめるものにしようと思って考えました」とのこと。
「普段だと怒られることでもイベントにしてしまえば許されるというのが面白い。女湯もなかなか入れないですよね（笑）」と語る水口グッチさんの笑顔はいたずらっ子のようで味わいがあった。オフロンピックの次回開催について聞くと「まあ、4年後にやるかもしれません（笑）」というお返事。ぜひ冬季オフロンピックも開催して欲しいところだ。
また、朝日温泉の三代目・田丸正高さんは「こういうイベントを通じて銭湯に少しでも興味を持ってもらえればと思ってやっています。うちの銭湯だけじゃなくて、銭湯全体を気軽なコミュニケーションの場にして行きたいというのが目的なんです」と言う。朝日温泉では、普段から音楽イベントやワークショップ、寄席などを開催しており、それらも銭湯という場に色々な人に足を運んで欲しいという考えあってこそのこと。銭湯文化を次世代まで残していこうという気概を感じた。
オフロンピックの優勝は、湯船に落水したオカピーさんのチームに決定。優勝賞品として、水口グッチさんデザインによるオフロンピックのマスコットキャラ「ユフネン」の王冠型風呂桶が贈られた。
朝日温泉で開催されているイベントについては、公式サイトをチェックしてみて欲しい！今年の10月には大規模な催しも計画中だとか！
店舗情報：
「朝日温泉」
http://asahi-onsen.com/
住所：大阪府大阪市住吉区南住吉3-11-8
営業時間：14：00～01：00
定休日：未定
（スズキナオ）
銭湯で開催されるコンサートは過去に見たことがあったが、競技大会というのは聞いたことがない。どんな様子なのか、潜入取材を敢行することにした。
会場となるのは、大阪市住吉区にある「朝日温泉」だ。
露天風呂まで備えた充実の設備が印象的で、お昼過ぎから常連客で賑わう、地域に愛される銭湯である。
「オフロンピック」が開幕する午前11時半には少し余裕があったが、すでに近所のお子さんやそのご両親、朝日温泉の常連さんなどで銭湯内は賑わっていた。
いよいよ開幕の時間となり、入場BGMとともに聖火ランナーが登場。
風呂桶で扇風機に聖火を灯した。ちなみにランナーを務めるのは朝日温泉の三代目・田丸正高である。
扇風機から風が吹いて、聖火に見立てた赤いビニールテープがふわーっと起き上がるという可愛らしいアイデアが笑える。
選手宣誓の後、いよいよ競技のスタートとなる。5種目の競技を全16チームで競い合う形式で、記念すべき第1種目は「桶カーリング」となった。
風呂桶の底にキャスターが取り付けられ、それをデッキブラシで押し出して的の中心を狙うという競技で、2チーム対抗で行われる。
面白いのは、風呂桶の中にシャンプーや石鹸、タオルなどを入れ、そのアイテム数が多ければ多いほど獲得できる得点が高くなるというところ。中身が重ければ重いほど難易度が上がるという。
的の中心に上手に止まった子供の桶を豪快に弾き飛ばす大人、強く押し出し過ぎて桶が倒れて中身を散乱させてしまうプレイヤーなど、面白いシーンが続出して場内も白熱。
次の種目は、「叩いて桶ってじゃんけんぽん」。うっすらと予想できる通り、じゃんけんに勝った方がピコピコハンマーで攻撃、負けた方が風呂桶で防御するという動きを反射神経でスピーディーにこなす競技である。
ここまでの2種の競技を見ても分かるとおり、オフロンピックでは風呂桶が大活躍するのだが、お次の種目となる「ゴルフロオープンカップ」も浴槽に浮かべた桶におもちゃのゴルフクラブでボールを入れるという種目だ。
浮かぶ桶の色で得点が異なり、中央の銀色の桶に入れば高得点、というシステムになっており、上手に打たないとボールが桶を飛び越えて飛んでいってしまうのでなかなか難易度が高いようであった。
4種目目は「桶タワー積み」という競技で、文字通り風呂桶を積み上げてその高さを競うものなのだが、奇数回の桶にはお湯をくんで積まなければならないというルールになっている。高く積めば積むほどタワーが倒れた際に大量のお湯が飛び散り、周りのギャラリーもお湯まみれになってしまうという危険な競技なのである。
タワーが倒れるたびに悲鳴と笑い声が響き渡る大興奮の種目だったのだが、中でも注目を集めたのが、参加者の一人であるオカピーさんが25個の桶を積み上げるという前人未到の記録に挑戦したシーンだった。
自分の身長を遙かに超え、手を伸ばして届くギリギリの高さに桶をそーっと置く……。誰もが息を呑んだ瞬間、カメラのファインダーの中からオカピーさんの姿が消えた！
と思ったら、湯船にジャバーンと落水！
この日最も場内が盛り上がった一瞬であった。
最後の種目は、「桶殺！仕事人」。種目名からは内容が想像しにくいが、これがすごい。男湯の床に並べた桶が的になるのだが、プレイヤーは女湯に移動し、吹き矢を使って壁ごしに的を狙うのである。
もちろん女湯側から男湯の的は見えないので、まさに運まかせな競技なのだが、的に矢が落ちると見えない壁の向こうからわーっと歓声が上がるという不思議な面白さがあった。
と、ここまで紹介した種目に共通するのは、普段やったら絶対に怒られることばかりだという点である。桶カーリングのマネは子どもの頃にしてみたいと思った記憶があるし、男湯と女湯を隔てる壁の向こうに矢を飛ばすなんて、なんというか、考えることすら怒られそうな痛快な発想だ。
そんな種目の数々を銭湯側が用意し、それを常連のみなさんが和気あいあいと楽しんでいる様は非常に自由で風通しがよく、遊び心に溢れたものに見えた。
今回のイベントの司会をつとめた、「赤犬」というバンドでパーカッションを務める水口グッチさんにお話を伺うと、オフロンピックの種目については朝日温泉の田丸さんと共に「大人でも子ども関係なく楽しめるものにしようと思って考えました」とのこと。
「普段だと怒られることでもイベントにしてしまえば許されるというのが面白い。女湯もなかなか入れないですよね（笑）」と語る水口グッチさんの笑顔はいたずらっ子のようで味わいがあった。オフロンピックの次回開催について聞くと「まあ、4年後にやるかもしれません（笑）」というお返事。ぜひ冬季オフロンピックも開催して欲しいところだ。
また、朝日温泉の三代目・田丸正高さんは「こういうイベントを通じて銭湯に少しでも興味を持ってもらえればと思ってやっています。うちの銭湯だけじゃなくて、銭湯全体を気軽なコミュニケーションの場にして行きたいというのが目的なんです」と言う。朝日温泉では、普段から音楽イベントやワークショップ、寄席などを開催しており、それらも銭湯という場に色々な人に足を運んで欲しいという考えあってこそのこと。銭湯文化を次世代まで残していこうという気概を感じた。
オフロンピックの優勝は、湯船に落水したオカピーさんのチームに決定。優勝賞品として、水口グッチさんデザインによるオフロンピックのマスコットキャラ「ユフネン」の王冠型風呂桶が贈られた。
朝日温泉で開催されているイベントについては、公式サイトをチェックしてみて欲しい！今年の10月には大規模な催しも計画中だとか！
店舗情報：
「朝日温泉」
http://asahi-onsen.com/
住所：大阪府大阪市住吉区南住吉3-11-8
営業時間：14：00～01：00
定休日：未定
（スズキナオ）
