悲しい独身男性の私は、ときに……いや、頻繁にコンビニ弁当を買う。
ひとり淋しくコンビニ弁当を食べるとき、どうしても気になるのが漬け物やポテトサラダ。
事前にコンビニで温めてもらうと、当然のことながら、これらも温まってしまうのだ。
ほっかほかの漬け物にはかなり抵抗があるし、ポテトサラダは冷たい方が好きなので、いつもこれらはかなりの難所である。
残してもいいのだが、内に秘めたるMOTTAINAIマインドがそれを許さない。

そもそも電子レンジやコンビニ弁当が生まれて相当の年月が経っているはずなのに、なんでこの問題はいつまでも解決されないのか。
レンジで丸ごとチンして、漬け物とポテトサラダは冷たいままなのに、ご飯やほかのおかずはほっかほか。そんなステキなお弁当はないもんだろうか。


……というわけで調べてみたところ、過去に某コンビニが「冷たいものは冷たいまま」がウリの弁当を販売していたことが判明。
さっそく取材を申し込んだところ、販売時期がはるか昔のことということもあり、残念ながら取材NGになってしまった。
う~む、五里霧中。

くよくよしていても始まらないのでとにかく調査していると、なんと前述の弁当の容器の技術を提供していた会社を発見。
さっそく会社に赴き、取材してみた。

担当者の話によると、当時販売していたのは「日持ちをよくする」「添加物をなるべく減らす」などを目的としたチルドタイプのお弁当で、「ハンバーグ&生野菜サラダ」「天丼&冷やしうどん」といった組み合わせだったらしい。

冷たいままにしたいおかずはアルミ加工した特別なボックス状の容器で覆い、電子レンジの電磁波を遮断することで、温まらないようにするというものだったそうだ。
ただし残念なことにこのお弁当、画期的だったにも関わらず商業的には奮わず、コンビニからの撤退を余儀なくされたとのこと。

……あれ? じゃあ、その技術を応用すれば可能ってことじゃないの?
「う~ん……。現在常温で店頭販売されているタイプのお弁当を想定すると、同じ技術を使っても、ポテトサラダや漬け物だけを冷たいままにするというのは難しいんですよ」
との答え。結局、ポテトサラダや漬け物などの小さいスペースだけ電磁波を遮断しても、温めたものの余熱が伝わってしまうのだそうだ。
確かに、お弁当のほぼ全体を温めることを考えると、余熱や温まった蒸気が小さなスペースにまで影響してしまうのは否めない。


ただ、そこはさすがプロフェッショナル。がっかりしていた私に、
「がっかりしないでください。私たちも、お客さまやコンビニからの要望があれば、もちろん挑戦したいと思っています。現在は当時と較べて、技術も進歩していますからね!」
と、力強いお言葉をかけてくださった。

その力強い言葉が実現する日を信じて、当面はがまんして温かい漬け物&ポテトサラダを食べるとする。
全国の独身男性の皆さん、今はまだ耐えましょう。
いつか「冷たいまま食べたいものは冷たいまま」の弁当が販売されることを夢見て……。

余談だが、前述のチルドタイプのお弁当、現在は技術のみが宙に浮いてしまっている状態だが、「栄養バランスがよく、なおかつ添加物の少ない弁当」や「郷土の味を、鮮度を保ったままおいしく楽しめる弁当」などをコンビニで提供するにはうってつけの技術なのだそう。

う~ん、それって昨今のニーズにマッチしていると思うんだけどなぁ。
きっとこういう埋もれた技術がまだまだいっぱいあるのだろうと思うと、まさに「MOTTAINAI」と感じる今日この頃であった。
(新井亨)