昨今、男性用化粧品は広く普及し、洗顔後に化粧水や乳液などを使用する男性が増えています。しかし、すがわら皮膚科クリニック副院長で美容皮膚科医師の菅原由香子氏は、化粧水等の使用は中止するべきだと主張しています。



 そこで菅原氏に、

・化粧品の危険性
・コラーゲンの誤った知識
・入浴剤の害

などについて聞いてみました。

●男性化粧品の実態

--化粧品を使う男性が増えていますが、なぜ菅原さんは使用中止を呼びかけているのですか?

菅原由香子氏(以下、菅原) 最近、若者を中心に男性化粧品が市民権を得つつあります。男性化粧品の売れ筋は、基礎化粧品である化粧水や乳液ですが、主な効能としてはニキビ防止のほか、肌がきれいになるとされています。乾燥しやすい肌に水分を補給して潤いを与える目的で使用する人が多いのでしょう。

 しかし、化粧水や乳液には合成界面活性剤が含まれています。洗浄剤としてではなく乳化剤として使われています。
これらの化粧品を使うことで、合成界面活性剤を肌にすり込んでいるのです。保湿のためと思って使用していても、合成界面活性剤は皮膚の構造を破壊し、かえって肌を乾燥させる危険があります。

--保湿するはずの化粧品が皮膚を破壊するので、使わないほうがいいというわけですね。

菅原 化粧品の使用は、今すぐにやめる勇気が必要です。そのように話すと「今やめたら肌がカサカサになってしまう。そんなことは考えられない」と言う方がいますが、化粧品を使う前はどうだったのか思い出してほしいのです。
その時のほうが間違いなくきれいな肌だったはずです。化粧品を使うことで肌が傷んでしまったのです。化粧品を使っている男性の肌に艶があるように見えても、それは合成ポリマーによるニセモノの艶です。

●コラーゲンの間違った知識

--ほかにも間違った知識があれば教えてください。

菅原 一般的に常識と思われていることでも、間違っている情報はたくさんあります。例えば、代表的なものとしてはコラーゲンに関する情報が挙げられます。


 寒い季節には熱い鍋料理が食べたくなりますが、多くの鍋メニューの中で特に女性に人気があるのは、フカヒレ、豚足、鶏皮、軟骨、魚介類、コラーゲンボールなどを煮込む「コラーゲン鍋」です。多くの人はコラーゲンを食べれば、肌がみずみずしくなると認識していますが、それは間違いです。コラーゲンはたんぱく質であり、消化されてアミノ酸に分解され、腸から吸収されます。アミノ酸は骨、筋肉、皮膚といった順で分配されるため、フカヒレや豚足を食べても、すぐに皮膚の養分となるわけではありません。

 また、皮膚を構成する大部分はコラーゲンからできているのは間違いありませんが、外からコラーゲンを補充することもできません。コラーゲンはとても分子の大きな物質なので、化粧品などに含まれていても皮膚には吸収されません。
最近では分子を小さくする技術が開発されて、肌の奥のまで届くコラーゲンもあるようですが、到達したからといって体内のコラーゲンと合体したり働きを強めることはありません。

●危険な入浴剤

--化粧品以外でも、肌のために気をつけたほうがよいことはありますか?

菅原 1日の疲れを取ってくれる風呂は、至福のひと時です。最近では湯船にきれいな色をつけて素敵な香りがする入浴剤が増えています。しかし、入浴剤の成分を見てみると、色の元は青色〇号、黄色〇号という名のタール色素で、これらは毒素成分です。1960年代に食品添加物として指定されていたタール色素に発がん性などが発見され、指定が取り消されています。今でも、清涼飲料水や駄菓子などに使用されているものがありますが、それらの多くは欧米諸国では自主規制対象商品になったものです。


 入浴剤には、タール色素以外にも、有害な化学物質が使用されています。湯船に浸かっている間に皮膚を破壊してアレルギーを引き起こしたり、発がん性が高まる可能性があります。湿疹がある人やお風呂上がりに体がかゆく感じる人は、入浴剤が影響している可能性があります。どうしても入浴剤を入れたいなら、天然の塩だけを入れるようにしてください。

--気をつけなければ、肌に悪いものが身近に蔓延していますね。

菅原 避けたほうがよいものは多いですが、美肌になるためにガマンすることが多いと、ストレスを感じてしまいます。
ストレスを感じず、負担にならない範囲で生活をするのが大切です。私は毎朝「幸せだな」と言ってからベッドを出ます。大変なことが起こっても「ありがとうございます。人生の勉強になります」と前向きに考えます。前向きに感謝の心を持って生活をしていれば、ストレスを感じない人間になれるのだと実感しています。

--ありがとうございました。
(文=尾藤克之/ジャーナリスト・経営コンサルタント)