各作品とも序盤から中盤に差し掛かりつつある、7月期の各新作ドラマ。山下智久主演の『コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命― 3rd season』(フジテレビ系)が第1話で視聴率16.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を獲得、その後も7月ドラマ戦線のトップの座をキープしてはいる。



 第2話以降、その『コード・ブルー』も少しずつ数字を下げ、第5話では13.8%、第6話では13.7%にまで低下してはいるのだが、それでも『コード・ブルー』の数字を上回りそうなドラマも特に見当たらず、7月期ドラマは全体的に低調気味といえるかもしれない。

 では、視聴率という観点からではなかなか浮かび上がってこない深夜ドラマはどうか。『孤独のグルメ』や『勇者ヨシヒコ』シリーズ(共にテレビ東京系)のように、話題を集め、後々続編が制作される人気シリーズになるような作品はないものか。ネット上の感想を探ってみると、有田哲平(くりぃむしちゅー)主演の『わにとかげぎす』(TBS系)が、ネット上の一部で好評を博している。視聴率も初回が2.3%、その後1.7%、1.8%と推移していたが、16日に放送された最新の第4話で2.6%と数字を上げてきている。

『わにとがけぎず』は、『行け!稲中卓球部』や、舞台化や実写映画化もされた『ヒミズ』などで知られる古谷実が描いた同名マンガが原作(版元はいずれも講談社)。
独身で、友人もいければもちろん恋人もいない孤独な警備員、富岡ゆうじ。孤独であることを罪と考える彼は、孤独に無為に過ごしていた生活を改めることを決意。流れ星にも「友達をください!」と願う――という導入から幕を開けるサスペンスフルなストーリーに、古谷実らしい人生観やコミカルな表現が散りばめられた人気作。

 放送されるのが、枠設立以来これといったヒット作がないTBSの「水ドラ!!」枠(毎週水曜日23時56分~0時26分)とあって、主人公の富岡を演じるのが連続テレビドラマ初主演となる有田であることが話題になったほか、古谷実ファンが盛り上がったぐらい。放送前の期待値はさほど高くなかったが、ネット上の視聴者の反応を見ると「有田、意外と演技が上手いじゃん」「キャスティングは結構あってる」「古谷の雰囲気がよく再現されている」と、マンガの実写化には何かと厳しいネット上でも、思いのほか好意的な声が多い。

 原作で32歳の富岡を、演じる有田の実年齢(46歳)にあわせて38歳と少しあげたが、もともとのルックスや雰囲気はなんとなく似ているところも多く(アゴが長いところとか)、違和感はさほどない。
富岡は冴えない中年童貞だが、なぜか憎めないというキャラクター。1人暮らしが長いため独り言やモノローグシーンが多く、普段人と接していないためか感情の発露が大げさだったり素直に表現できないという特徴がある。演技歴は少なくとも、コントや漫才の経験が豊富でセリフ回しが達者な有田だけに、相応にこなせている印象。ドラマ初主演作としては事務所が良いチョイスをしたし、今となっては上手いキャスティングだと思う。

 そんな有田が演じる富岡になぜか好意を示し、ぐいぐいと距離を縮めてくる隣人でヒロイン・羽田梓を演じている本田翼が、「ばっさー可愛いなぁ」「ばっさーばかり見てる」「生足とかサービスが素晴らしい」「有田いい役だな。代わってくれ」などと、ネット上で大絶賛なのだ。


 ルックスは良くとも、これまで女優としてはさほど評価されてこなかった本田。しかし、羽田は美人でスタイルもいいけどかなり癖が強い、ストーカー気質なところもあるという、ある意味富岡よりもエキセントリックな部分もあるというキャラクター。本田の発声やかつ舌の悪さも、あまり気にならない。

 また、1話目からシャワーシーンや、パンツがはみ出しているという原作のサービスシーンもしっかり再現するなど、深夜の30分枠なのに体当たりで演じているところや、ガチの漫画・『ドラゴンクエスト』好きと知られているところも、ネット上の視聴者からの支持を獲得できた一因となっているようだ。

 原作をコンパクトにしながらも、ストーリーラインはおおむね原作を忠実になぞっているドラマ『わにとかげぎす』。一方で富岡の部下となる花林役には賀来賢人、雨川役には吉村界人、そしてヤクザの愛人・吉岡華役にはコムアイ(水曜日のカンパネラ)と、周囲のキャラクターたちは設定をアレコレ変えながら、ビジュアルを原作から大幅に良くしている。


 原作が連載されていたのは06~07年。10年も経っていることを考えれば設定の変更も、原作では正直不細工だった脇役たちにイケメン、美人が配されているのもテレビでの絵面を考えれば、ある程度止むを得ない。主役が有田のところに、花林や雨川を原作に近いビジュアルでキャストを揃えてしまっていたら、それこそコント番組にしか見えなくなっていたと思われるので、良い改変だったのかもしれない。

 原作単行本全4巻のうち、ドラマで消化したのはまだ2巻の半ば程度。ここからどこまで原作の物語を消化するのか。決して抜群に演技がうまいわけではない2人がメインを張るなかで、ここまで上手に物語をまとめ、盛り上げてきたスタッフ陣の手腕と、本田のさらなるサービスシーンに期待しながら見守ってみたい。

(文=馬場ゆうすけ)