安全性に関するトラブルが発生し難しい状況のなか、国鉄時代なら廃止対象の路線が6割を占めているJR北海道。そうした採算性の厳しい路線について今後どうするのか、JR北海道は考えを示しました。

北海道の地図から鉄道路線がごっそり消えてしまう未来、あり得ない話ではないのかもしれません。

国鉄時代末期に相次いだ路線廃止とその基準

 安全に関わるトラブルが相次いだJR北海道は、そのコンプライアンスや企業経営のあり方などについて外部の視点から助言を得るため、2014年6月に「JR北海道再生推進会議」を設置しました。議長には日本郵船代表取締役会長の宮原耕治氏、委員には北海道知事の高橋はるみ氏らが名を連ねています。

 2014年12月26日、JR北海道は12月5日に行われた「第4回JR北海道再生推進会議」について、その議事の概要を発表。そこには、委員からJR北海道に対する次のような質問がありました。

「JR北海道は、輸送密度が2000人未満の線区を多く抱えるが、現在、安全投資と修繕の計画を策定する重要な時期において、この件についてどのように考えているか」

 国鉄が分割民営化される前の1980年代初頭、「国鉄再建法」によって「特定地方交通線」という廃止対象路線が選定されました。

そして例外を除き、旅客の輸送密度が2000人/日未満の路線はバスへの転換、または路線の廃止が行われていきます(「輸送密度」:1日1kmあたりの乗客数)。

 つまりこの委員の質問は、JR北海道が難しい状況に置かれている現在、国鉄分割民営化前の基準に照らし合わせると廃止対象となる路線がJR北海道には多く存在しているが、それについてJR北海道はどう考えているか、ということになります。

例に挙げられる廃止された江差線

 この委員の発言について言い換えれば、JR北海道はその再建にあたって採算性の厳しい路線が多く存在している現状について考えねばいけない、という意味に取ることができるでしょう。

 JR北海道はこの委員の質問に対し、国鉄時代では廃止対象になった輸送密度2000人/日未満の線区が同社の6割を占めていると説明。そして2014年5月12日に江差線の木古内~江差間についてバス転換したことを例に挙げたのち、「今後も地元に対してそれぞれの線区の状況を説明し、地域のご意見をいただき、理解を得ながら対応していく予定」としました。

 どの路線にどのような対応をしていくのか明言はされていませんが、JR北海道の6割をも占める往時なら廃止されてもおかしくない路線について、江差線を例に出し、現状のままでもないことがうかがえます。

 JR北海道は2014年12月現在、2457.7kmの路線網を持っています。しかしそのうちの6割が輸送密度2000人/日とのこと。そこでJR北海道が発表した2013年度のデータに基づき、国鉄時代なら廃止対象になる区間を地図から削除してみました。

最大でも山手線の1/24、白くなる北海道の地図

 輸送密度2000人/日未満の区間は全路線2457.7kmのうち61%を占め、それを消すと札幌周辺の通勤通学需要が多い区間と旭川、釧路、函館、青森方面といった主要都市を結ぶ区間、およそ950km程度しか残りませんでした。

 JR北海道のデータによると、輸送密度が高い区間は以下の通りです(以下、データは2013年度のもの)。

【1】4万4703人/日:函館本線:小樽~札幌(33.8km)
【2】4万4381人/日:函館本線:札幌~岩見沢(40.6km)
【3】4万4312人/日:千歳線・室蘭本線:白石~苫小牧(65.4km)
【4】2万8281人/日:千歳線:南千歳~新千歳空港(2.6km)
【5】1万7023人/日:札沼線:桑園~北海道医療大学(28.9km)

 これに対し、低い区間は以下の通りです。

【1】81人/日:札沼線:北海道医療大学~新十津川(47.6km)
【2】110人/日:石勝線:新夕張~夕張(16.1km)
【3】149人/日:留萌本線:深川~増毛(66.8km)
【4】165人/日:江差線:木古内~江差(42.1km)
【5】284人/日:根室本線:滝川~新得(136.3km)
【6】312人/日:日高本線:苫小牧~様似(146.5km)
【7】419人/日:宗谷本線:名寄~稚内(183.2km)
【8】428人/日:根室本線:釧路~根室(135.4km)
【9】485人/日:釧網本線:東釧路~網走(166.2km)

 このうち2014年に廃止された江差線は輸送密度が165人/日となっていますが、その廃止が発表され注目を浴びたのちのデータで、前年比115%増になっているため、この数字をそのまま受け取ることはできません。廃止決定前の2011年度における江差線(木古内~江差)の輸送密度は41人/日と、2013年度のデータで最も輸送密度が低い札沼線(北海道医療大学~新十津川)のさらに半分しかありませんでした。

 ちなみにJR東日本のデータによると、最も輸送密度が高いのは山手線(品川~新宿~田端)で108万888人/日。それに埼京線(池袋~赤羽)が73万718人/日で続きます。

 またJR東日本で、JR北海道の最も輸送密度が高い区間と同等の区間としては内房線(蘇我~君津)の5万7906人/日、成田線(佐倉~成田)の4万1338人が挙げられます(共に千葉県)。