リニア中央新幹線、田町~品川間での新駅開業など注目が高まっている品川駅では、京急線の駅大改造計画も進行中。列車の運行ほか道路の渋滞、人の動きにも変化が起きそうです。
東京都、港区、品川区、京急電鉄は、2017年1月27日(金)と28日(土)に京浜急行電鉄本線の泉岳寺駅~新馬場駅間連続立体交差化計画素案の説明会を開催。都市計画にあたり、現在は高架である品川駅については地下化も検討された結果、地上化が、現在は地上にある北品川駅については地下化も検討された結果、高架化が選択されたことが明らかになりました。
泉岳寺駅~新馬場駅間連続立体交差化計画の平面図(計画説明会スライドより)。計画の正式名称は「都市高速鉄道京浜急行電鉄湘南線」です。湘南線とは現在の京急本線を指します。説明会では「京浜急行電鉄湘南線を本線と呼びます」と紹介して進行しました。
構造形式は地下式、地表式、高架式の組み合わせ。改良する駅施設は品川駅、北品川駅となります。ホーム延長は品川駅が約220mで、北品川駅が約110mです。京急本線を走る車両は1両18m。
立体化によって除却(解消)される踏切は3か所です。お正月の「箱根駅伝」でその姿が映る八ツ山にある品川第一踏切と、ほぼ隣接する品川第二踏切、北品川駅の南側にある北品川第一踏切です。これらの踏切は朝夕ラッシュ時間帯に1時間あたり40分以上が締め切られるため、渋滞の原因となっています。また、踏切事故も多いとのことです。
計画路線を地下の泉岳寺駅から見ると、地上へ出て横浜方面へ向かう下り線の上り勾配は少し緩やかになります。京急品川駅の北側にあり、京急社員などから「新品川駅」と呼ばれている引き上げ線は高架から地上に移され、やや北側になります。京急品川駅も地上になり、現在の駅の北側、東よりに移ります。現在は山手線の留置線となっている部分と重なります。
品川駅から北品川駅にかけて、現在の線路の東側に勾配線路を設置し、八ツ山の高架まで一気に駆け上がります。その後も現在の線路の東側に高架線路を設けて、北品川駅は現在の地上駅から高架駅となります。そのまま現在の線路の東側に高架線路が作られて、新馬場駅の手前で現在の高架線路に接続します。
意味がある京急品川駅、北への移動京急品川駅の地平化(地上駅化)は、品川駅周辺開発計画の一環として説明されていました。京急品川駅を地平化すると、JR品川駅の2階にあるコンコースと自由通路を西側の高輪口まで延長できます。さらにペデストリアンデッキを延長すれば、国道15号の横断歩道の混雑も解消されます。
都市計画では、京急品川駅を北側に移動します。
都市計画案の作成にあたって、京急品川駅と北品川駅を地下にする案も検討されていたとのことです。この場合、泉岳寺駅からの勾配線路を水平化し、北品川地下駅から新馬場駅へ勾配を作ります。この案でも、当初の目的であった3つの踏切を解消できます。
しかし、地下駅の建設は費用が大きいうえに、北品川地下駅から高架の新馬場駅までは勾配の長さが足りないため、新馬場駅を南側へ建て替える必要があります。さらに、現在、北品川駅と新馬場駅のあいだにある高架下道路については、勾配の下になるため高さ制限が厳しくなり、トラックなどの通行に支障があります。
費用を比較すると、京急品川駅地平、北品川駅高架案は約900億円。両駅の地下案は約1700億円と試算されました。これらの用件を勘案した結果、京急品川駅は地平化、踏切解消と北品川駅は高架化という案になりました。
2027年にはリニアも開業予定 どうなる? 未来の品川駅地平化された京急品川駅はホーム2面、線路4本の「2面4線型」となります。地下鉄直通列車、京急線内折り返し列車の両方が発着しやすくなりそうです。現在の京急品川駅南側の交差ポイントも不要になり、平面交差が解消されるなら、運行本数を増やせるかもしれません。
なお、京急品川駅が東側へ寄ると、現在の山手線の留置線が使えなくなります。この件については1月28日(土)の説明会の質疑応答で、「JR東日本は田町新駅の開業に合わせて京浜東北線・山手線ともに海よりに移す方向で検討している。山手線ホームと留置線は京急の新ホームと干渉しないように調整中」という趣旨の説明がありました。
今回の計画素案説明会によって、都市計画の手続きがスタートしました。今後は、説明会以降に寄せられた意見を参考にしつつ、計画素案から計画案の作成と説明会、住民および利害関係者の意見聴取、環境影響評価、都市計画審議会による経過決定、事業認可、工事着手という手順になります。長い道のりになります。事業主体の東京都は、2027年のリニア中央新幹線開業を踏まえて進めたい考えです。
【地図】対象は京急品川駅付近、約2kmの区間