しなの鉄道の観光列車「ろくもん」によるクルーズトレイン。そのルートのひとつ、料理と「日本三大車窓」姨捨駅を楽しめるコースに参加しました。

このルートでは、姨捨駅に2回立ち寄りますが、そこには大きな意味がありました。

「姨捨」をめぐるクルーズトレインの旅を手軽に

 しなの鉄道(長野県上田市)が2014年から運行している観光列車「ろくもん」。火、水、金、土休日に軽井沢~長野間を走るのがおもな運行形態ですが、2016年より、この列車で北信地域を回遊する「クルーズトレイン」が、月1回から2回ほど運行されています。

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姨捨駅に停車中の「ろくもん」。駅から善光寺平を一望できる(2017年5月13日、中島洋平撮影)。

 2016年の「クルーズトレイン」は、行程に宿泊が組み込まれたものでしたが、2017年4月からコースを一新。

選べる5プランが設定され、すべて日帰りになりました。

 2017年5月、そのプランのひとつである「日本三大車窓」を楽しむコースの試乗会に参加。しなの鉄道の観光列車「ろくもん」のクルーズトレイン、いったいどんな旅を体験させてくれるのか、リポートします。

近年、飛躍的に知名度が高まった「姨捨」

「ろくもん」のクルーズトレインが訪れる「日本三大車窓」は、JR篠ノ井線の姨捨駅(長野県千曲市)付近。眼下に善光寺平(長野盆地)の大パノラマを楽しめることから、古くより「三大」のひとつに数えられています。

 この「ろくもん」クルーズトレイン姨捨ルートは、上田駅(長野県上田市)からしなの鉄道線を走ってJR篠ノ井線へ入ったのち、姨捨駅を経て聖高原駅(長野県麻績村)へ、そこで折り返し再び姨捨駅へ立ち寄ったのち、長野駅を経て豊野駅(長野市)まで走るという、4時間弱の行程。

姨捨駅に18時台と19時台の2回停車することで、「日本三大車窓」の夕景と夜景の両方を楽しめるのが大きな特徴です。

「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)
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「ろくもん」の車内。

「姨捨駅周辺から眺める善光寺平の夜景は、『日本三大車窓』のひとつとして国鉄時代から知られていますが、姨捨駅がJR東日本のクルーズトレイン『TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)』の立ち寄り駅となったことで、飛躍的に知名度と価値が高まりました。その、姨捨をめぐるクルーズトレインの旅を手軽に、かつ日帰りで楽しめます」と、しなの鉄道の玉木 淳社長は話します。

車内で和膳に舌鼓、そして「日本三大車窓」姨捨駅へ到着

 17時過ぎ、上田駅に列車が到着すると、アテンダントがほら貝を「ぷおぉー」と吹き鳴らし、その合図で列車のドアが開かれます。これは、しなの鉄道沿線ゆかりの戦国武将、真田信繁(幸村)の軍がいくさでほら貝を合図に使っていたことに由来するそうです。

 記者の座席は、3号車「レストランカー」のコンパートメント。向かいあったソファーのあいだに設置された大きな木のテーブルには、二段の重箱が用意されていました。「小布施 鈴花」(長野県小布施町)による、長野県産の食材が多く使用された特製の和膳で、ドリンクとともに楽しむことができます。

「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

アテンダントが吹くほら貝の合図で列車のドアが開けられる。
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車内で提供される「小布施 鈴花」の料理。
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ご飯ものは、信州ポークの角煮添え。

 その後は、暖かい汁ものやご飯もの、食後には抹茶と茶菓子、そして水菓子などが、ツアーの進行に応じて提供されていきます。メニューはその時々で旬の素材を生かすよう、毎回少しずつ変えているそうです。

姨捨駅ではボランティアが風景を解説

 篠ノ井駅(長野市)を出た列車は坂をのぼり、いったん停車。そして進行方向を変える「スイッチバック」を行って18時02分、姨捨駅に到着しました。40分ほど停車し、まずその夕景を楽しみます。ここでは地元のボランティア団体「楽知会」が、その風景について説明してくれました。

「眼下に善光寺平の棚田が見えるでしょう。『水田のひとつひとつに月が映る』ことから、この風景は『田毎(たごと)の月』と呼ばれています。実際にはそう見えることはないのですが、江戸時代、広重の浮世絵にそのように描かれたことで、一躍有名になりました」(楽知会)

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広重の浮世絵に描かれた「田毎の月」を解説する「楽知会」のボランティアスタッフ。
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スイッチバック構造の姨捨駅。左はJR東日本の観光列車「リゾートビューふるさと」。
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姨捨駅の事務室はイベントスペースになっており、演奏会も行われる。

 姨捨駅には「四季島」乗客向けの専用ラウンジが設けられているほか、この「日本三大車窓」の夜景を楽しむことを目的としたJR東日本の臨時快速「ナイトビュー姨捨」も運行されています。

いよいよ「夜の姨捨」、その風景は? もっと夜景を楽しめる場所への案内も

 姨捨駅をあとにした「ろくもん」はさらに南進。聖高原駅でしばらく停車したのち、折り返します。19時13分ころ再び姨捨駅に着くと、あたりは暗くなっていました。2度目の姨捨駅では30分間の停車。今度は夜景を楽しみます。

「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

夜の姨捨駅に停車する「ろくもん」。
「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

姨捨公園からの夜景。
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車内を消灯し、車窓からの夜景を楽しむ演出も。

「夜景をもっとよく見られる、駅近くの『姨捨公園』への散歩にご案内します」

 そうしたアナウンスののち駅の外に出て、徒歩5分ほどで小さな公園に到着。そこには、光に彩られた善光寺平のパノラマが広がっていました。公園周辺の明かりが少ないことがかえって夜景を引き立たせるのか、「これはすごい。ここでぜひ一杯やりたい!」といった声が試乗会参加者からあがります。

 姨捨駅に戻って、列車が発車したあとも、しばらく室内灯が消され、車窓から夜景を味わう演出が行われました。

 また、2017年6月から「ろくもん」の車内限定で提供される新しいカクテルも振る舞われました。長野県内の酒造業者などと連携し、県内産の原料を使った3種のカクテルは、それを車内で提供する「ろくもん」アテンダントの女性たちが考案したものだそうです。

「ろくもん」のクルーズトレインは選べる5コース

 20時45分、長野駅に到着。ここで記者は旅を終えました。列車はこの先、北しなの線の豊野駅まで運行されますが、これはスタッフの回送を兼ねたものだそうです。

 2017年の「ろくもん」クルーズトレインは、今回の姨捨ルートのほか、軽井沢~長野~黒姫間のルートでも運行されます。後者のルートでは列車に乗車するだけのコースと、黒姫駅(長野県信濃町)からバスで移動し、小布施、もしくは戸隠を散策するコースもあり、いずれも列車内で料理を楽しむことができます。

 また姨捨ルートでも、料理の異なるもう1種類のコースがあり、クルーズトレインとしては合計5つのコースが存在します。ちなみに今回乗車した、「小布施 鈴花」の料理が提供されるコースの旅行代金は、大人、子どもとも1万8500円(税込)です。

「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

2017年6月から提供予定のシャインマスカットを原料にした新カクテル「小松姫」。
「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

夜景を楽しんだあと提供された「レモンゼリー」。
「日本三大車窓クルーズトレイン」を体験 「姨捨2回」その実力とは? しなの鉄道「ろくもん」(写真27枚)

左から飴善晶子さん、玉木 淳しなの鉄道社長、山越幸弘さん。

 また7月8日(土)には、「信州DCワインバレー号」として軽井沢発塩尻行きと、塩尻発軽井沢行きの2コースが運行されます。大型観光キャンペーン「信州デスティネーションキャンペーン(DC)」に合わせたもので、「ろくもん」がJR塩尻駅まで乗り入れるのは初めてのこと。車内では、ながの東急百貨店の山越幸弘さん、元JAL客室乗務員で昭和女子大教員の飴善晶子さんの両ソムリエが選ぶ、運行ルートにちなんだワイン5種類の飲み比べが行われます。