■働き方改革の前に横パス上司の意識改革を



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日本では現在「働き方改革」が叫ばれ、様々な仕事の仕方、その多様性のあり方が話題です。一方、仕事の仕方が変わっても仕事の効率を決める大事なポイントについてはつい見落としがちではないでしょうか。

今回は会社をうまく回そうとする際に支障となるであろう「物事を決められない上司(通称「横パス上司」)」について考えてみたいと思います。



■横パス上司とは何か



メールやグループウェアを使って仕事を進める流れが定着してきた会社もあるかと思いますが、その一方で「効率化されたはずなのに何か思うように仕事が進まない」と感じる人も多いのではないでしょうか。



そこには、仕事を進める上で意思決定をしない、できないという「横パス上司」の存在が見え隠れします。



では、横パス上司とは意思決定においてどういった動きをするのでしょうか。



横パス上司の行動の最も顕著なパターンは決定的な場面でシュートを放たない、つまり何も決めないというところです。しかも自分が上司=ストライカーだという自覚はあるのが厄介な点です。



横パス上司は「自分から提案してこい」「案を出してこい」「最後は俺が決める」とストライカー宣言をし、パスを求めます。ところが、いざ部下から上がってきた案にはいいともダメとも言いません。かといって改善ポイントや建設的なアイデアが出てくるわけでもありません。挙句の果てに「大事なことだからみんなで決めようよ」と協調性を押し出してくる、そんな人物です。本来は次の展開を企画し、物事を先へ先へと進めなければならないのにいつまでも同じ状態を続けてしまいます。



サッカーでいえば、敵のゴールを目指すのではなく、ディフェンダー同士、またはミッドフィルダー同士で横パスを繰り返す状況に似ています。

局面を打開するアクションに結びつかないのです。



日本サッカー代表監督のハリルホジッチ監督は「縦に速い攻め」を強調した戦術を使っています。これは日本サッカーの決定力不足を解決するための一つの案ですが、それ以前に欧州などでは当たり前の展開です。



少し話がそれましたが「私の周りにはそんな上司はいない」という方は幸せです。でもいつそんな上司が現れるかわかりません。今、日本の仕事現場に必要なのは「縦への推進力」です。

この動きのカギを握るのは、日本の部長以前の課長、次長レベルの人材の意思決定です。



■横パス上司は「傷つきたくないストライカー」



仮に横パス上司がいても物事が進めば何の問題もありません。たとえば横パス上司の上司が優秀で、部下が「横パス上司の上司」にアクセスすることが容易な場合などです。とはいえ結局は周りがどんなに効率的な働き方をしたからといって、この横パス上司が物事を決めなければ、全体の効率は上がらないのも事実でしょう。しかし横パス上司はなかなか縦にボールを動かしません。なぜなら彼らがスピードや効率ではなく、失敗しないことであったり、自分の心が傷つかないことを最優先していたりするからです。



たとえば外部とのやり取りが必要な案件や自分があまり得意ではない領域は、部下に丸投げにしたり「関わらない」と宣言することで心の安寧を保ちます。でもこれは任せたということではありません。自ら作った”知らない”というシチュエーションも彼らを傷つけてしまうのです。部下からすれば本来一度で済んだ話を何度もしなくてはならず「本当にそれでいいのか」「あの部署はOKといっているのか」などと口まで出されてヘトヘトになります。手が空いているときであれば対応も可能ですが、横パス上司の部下は往々にして忙しいものです。



傷つきたくないストライカー=横パス上司にとって「決める」ということは大変な重圧なのです。

その結果、プロジェクトに関する横パスも多くなり、いくらグループウェアやテレワークが導入されても、仕事そのものの進め方は昔のままです。



部下が「横パスせずに上に突き進めよ」と心の中で念じても改善するはずもなく、横パスのパスワークが延々と続くことになってしまいます。



■働き方改革そのものは歓迎すべきだが、その前に必要なことは



今「働き方改革」が叫ばれるなか、様々な仕事の仕方、多様性が模索されています。働く場所に縛られずに仕事ができるようになれば、たとえば女性が産休・育休から復帰しやすくなり、男性も育児に積極的に参加しながら仕事をしやすくなる可能性があります。こうしたことは誰にとっても歓迎されるべきものでしょうし、今後日本の労働力人口が大きく上昇する可能性が低いと想定した場合にも、必然的に求められてくるでしょう。



保育園に預けることができず、日本の社会に落胆をした親の発言が以前大変議論を巻き起こしましたが、保育園に預けられれば親は安心して仕事ができるかというとそうでもありません。

朝保育園に預けたばかりの子供が会社に着くか着かないかのうちに熱を出し、飛んで戻るというような経験は子育て中には誰もが経験することだと思いますし、職場に子育て中の同僚がいるという方はそれが思った以上に頻繁だと実感しておられることでしょう。厳しい”保活”を乗り切り保育園に子供を無事預けられることができたとしても、一安心というわけにはいかないのが残念な現実なのです。



こうしたとき、家からテレワークなどを活用して仕事ができる選択肢があれば、個人の時間の使い方はかなり効率的になるはずです。しかし、横パス上司の行動に振り回され、常にその場にいてケアしなければ話が進まないといったことでは本来有効に機能するはずの仕組みも使えなくなってしまいます。それ以前に会社をダメにしてしまうことさえありえるのではないでしょうか。



■まとめにかえて



いかがでしたでしょうか。仕事環境や働き方改革の前に、横パス上司の意識改革と横パス上司が存在しない組織づくりという発想こそ、実は最も日本の仕事の効率化には必要かもしれません。