椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

■椎名林檎 (生)林檎博’15 −垂涎三尺−
2015.08.16(SUN) at 台湾・台北南港展覧館(Nangang Exhibition Hall)
(※画像9点)

まさに“垂涎三尺”(=よだれが出るほどの)!! 初の台湾公演を大成功させた椎名林檎

まだあの日の興奮の余韻が消えない。8月16日、椎名林檎は台北南港展覧館で椎名林檎『(生)林檎博’15~垂涎三尺~』を行った。
彼女にとって初の海外遠征となるこの公演、チケットは早々にソールドアウトとなり、現地メディアの関心も高く、椎名が台北松山空港に到着した際には、多くの現地ファンの熱烈な歓迎から、一時場が騒然としたほどだった。また公演当日の会場では朝からオフィシャルグッズを求めるファンによる長蛇の列が見られるなど、様々な角度からこの公演への強い期待感が伝わってきた。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

台北南港展覧館は広く平たい多目的会場である。日本に置き換えると、千葉の幕張メッセのような、と言えばある程度はイメージしてもらえるだろうか。チケット10,000人分のソールドアウトが、彼女の現地での人気ぶりを理解してもらえるのではなかろうか。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

そんな注目のなか幕を開けた本編の1曲目は「茎~大名遊ビ編~」。
祭壇を祀り崇める巫女のような出で立ちで神秘的に演舞するダンサーは、この公演で椎名のライブに初参加となったSAYAとYUKA(from ELEVENPLAY)だ。この二人を左右に従え、朱赤の長襦袢を着た椎名が床に膝を付いた姿勢からゆっくりと立ち上がり姿を現わすと、観客の興奮は早々にピークへと達した。筆者はこれまでも彼女のステージを何度も観てきたが、この登場の瞬間の神々しさには、思わず電流みたいな鳥肌が全身を駆け巡った。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

すると一転、幻惑に包まれた客席の空気を切り裂かんと、2曲目は「NIPPON」の電光石火だ。中国語で「お元気ですか?」と呼びかけると、「自由へ道連れ」、「ありあまる富」を続けて演奏する。

椎名はこの冒頭の4曲で台湾のファンへ最上級の礼を尽くし、大和撫子の心意気を見せつけながら、しかも同時にその孤高の存在感と音楽家としてのイデアを提示したのだ。
彼女にはソロでも東京事変でもツアーやライブの度に毎回驚かされてきたが、海を越えてこんな芸当ができるなんて。ライブ序盤にして、改めてその表現者としての破格の才を思い知らされる。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

さらに本編は続く。最新アルバム『日出処』からの「走れゎナンバー」や、リリースされたばかりの新曲「神様、仏様」で大喝采を受けると、椎名は花道からその姿を消した。

インストによる「葬列」を挟んで、衣装を変えて再びステージへ。総レース仕立てのシャツワンピース姿で「おいしい季節」「女の子は誰でも」を歌い上げ、スイートな魅力の楽曲を歌い上げていく。
そしてステージ上で黄色と黒のエッジィなミニドレスに早替わりを果たすと、拡声器を手に初期の名曲「本能」へと突入。続く「浴室」では、2008年に行われたデビュー10周年記念公演【RINGO EXPO’08】で見られたキッチンセット上での林檎の乱切りを実演。多くの観客が固唾を呑んでステージを凝視していた。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

次いで「罪と罰」、「迷彩」を見事に歌い上げると再び椎名が姿を消す。やがて聴こえてきたのはインストナンバー「望遠鏡の外の景色」。この公演のためのスペシャルバンド“MANGARAMA(マンガラマ)”の面々が映像で紹介されていく。
メンバーは浮雲(Gt)名越由貴夫(Gt)、ヒイズミマサユ機(Key)、佐藤芳明(accordion)、西村浩二(Trumpet)、小池修(Sax&Flute)、鳥越啓介(Ba)、玉田豊夢(Dr)、そして村田陽一(Trombone)と、近年彼女の作品に携わった名だたる手練の選抜軍である。よく見るとこの紹介映像も、ここ台北南港展覧館の場内を使って撮影されたようだ。随所まで心憎い演出ではないか。そして映像の最後に椎名のシルエットと共に“Starring SHEENA RINGO”の文字が映し出されると、場内からひときわ大きな歓声が上がる。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

その歓声に迎えられ、白のタイトなマリン風ユニフォームに身を包んだ椎名は、2012年の東京事変解散ライブ“Bon Voyage”でも演奏された栗山千明への提供曲「青春の瞬き」を披露。そして最初期の名曲「歌舞伎町の女王」を堂々と歌い上げると、「ちちんぷいぷい」へ。
気づけばステージ上には “GIRL”、“SUGER & SPICE”、“RINGO EXPO”の電飾が。昨年末の【(生)林檎博'14 -年女の逆襲-】で登場したキャバレー“Bon Voyage”が台湾のステージに遠征してきた格好だ。間奏の“RINGO!”コールも見事に観客と決めてみせ、セクシーなイラストをバックに「密偵物語」、「殺し屋危機一髪」、「カリソメ乙女」といったコケティッシュな高速ジャズを華麗にお見舞いすると、SAYAとYUKAと共に結印(※忍者の“ドロン”のポーズ)を決めて、煙と共にステージを去って本編を終えた。

そしてアンコール。一糸乱れぬ満場の手拍子で迎えられた椎名は、ブルーのロングコートを纏い「丸の内サディスティック」のクールなアレンジヴァージョンである「(サ)」をキメると、通訳を介しながら日本語に中国語を交えてのMCに興じる。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

「台湾が気に入ってしまったので、呼んでいただけたらまたすぐに来てもよろしいでしょうか?」という彼女の語りかけに、10,000人の観客が手旗と拍手喝采で応えた。


この一言がそれまで比較的整然と観戦していた台湾の観客の心の火に油を注いだのか、浮雲とのデュエットによる新曲「長く短い祭」では、黒いスパンコールのレオタード姿で花道を歩いてきた椎名と浮雲目掛けて多くの観客が押し寄せる一幕もあった。

椎名林檎 初の台湾公演の模様を詳細に伝える/ライブレポート
撮影/荒井俊哉

最後の曲は「旬」。いまこの瞬間の生命の繋がりを綴った歌詞によって、台湾の観客と互いの敬いを確かめ合うと、彼女はステージを後にした。

全23曲。彼女と観客の長く、短い、一夜限りの祭はこうして大団円を迎えたのだった。

椎名は秋から全国ツアー【椎名林檎と彼奴等がゆく百鬼夜行2015】を展開する。初の海外公演を成功させ、更なる輝かしいキャリアを刻んだ彼女の百鬼夜行とは果たして!? やはりこの秋も、椎名林檎からは目が離せない。
(取材・文/内田正樹)

≪セットリスト≫
1. 茎(STEM)~大名遊ビ編~
2. NIPPON
3. 自由へ道連れ
4. ありあまる富
5. 走れゎナンバー
6. 神様、仏様
7. 葬列
8. おいしい季節
9. 女の子は誰でも
10. 本能
11. 浴室
12. 罪と罰
13. 迷彩
14. 望遠鏡の外の景色
15. 青春の瞬き
16. 歌舞伎町の女王
17. ちちんぷいぷい
18. 密偵物語
19. 殺し屋危機一髪
20. カリソメ乙女 DEATH JAZZ Ver.
<アンコール>
21. (サ)
22. 長く短い祭
23. 旬

≪リリース情報≫
Single
『長く短い祭/神様、仏様』
2015.08.05リリース
UPCH-89233 / ¥1,200(税抜)

≪ライブ情報≫
【椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015】
10/14(水) オリンパスホール八王子 18:00/19:00
10/15(木) オリンパスホール八王子 18:00/19:00
10/26(月) フェスティバルホール 18:00/19:00
10/27(火) フェスティバルホール 18:00/19:00
11/6(金) NHKホール 18:00/19:00
11/7(土) NHKホール 17:00/18:00
11/12(木) 名古屋センチュリーホール 18:00/19:00
11/13(金) 名古屋センチュリーホール 18:00/19:00
11/19(木) 新潟県民会館 18:00/19:00
11/25(水) 仙台サンプラザホール 18:00/19:00
11/30(月) 福岡サンパレスホテル&ホール 18:00/19:00
12/1(火) 福岡サンパレスホテル&ホール 18:00/19:00
12/8(火) 神奈川県民ホール 18:00/19:00
12/9(水) 神奈川県民ホール 18:00/19:00
12/11(金) ニトリ文化ホール 18:00/19:00
12/17(木) 神戸国際会館こくさいホール 18:00/19:00
12/18(金) 神戸国際会館こくさいホール 18:00/19:00
12/20(日) 広島 上野学園ホール 17:00/18:00
チケット料金:¥8,640(税込)
チケット一般発売:9月26日(土)

≪関連リンク≫
椎名林檎 オフィシャルサイト
エキサイトミュージック レポート掲載記事一覧
excite music official Twitter
excite music official Facebook
excite music official YouTube channel