カルト芸人というイメージの強い鳥居みゆきだが、最近のテレビでの活動を見るに、わりとお茶の間対応した芸風になってきてるのかな......と思っていた。しかし鳥居みゆきは、まだまだどーかしていたのだ!

 人生初となる海外ロケを敢行したDVD『世界鳥居紀(奇)行 IN タイ』。

鳥居みゆきがタイを旅して魅力を伝えるポップなDVDなのかと思いきや、そこには異国の地で奇行を繰り広げまくる鳥居の姿が。

 旅行番組のフォーマットを踏襲しようとしつつも、まったく成り立っていないシュールな映像が詰め込まれたDVDについて何を聞いたもんやらと、困惑したままインタビューに向かったのだが......。

――今回のDVD『世界鳥居奇行 IN タイ』は本編が3分、映像特典が69分というすごく変な構成で、見はじめたらすぐに本編が終わっちゃったんでビックリしましたよ。

「あー、それはデッキが壊れてたんじゃないですか」

――いや、壊れてないですけどね。

「私んちのデッキも壊れてたんですよ。事務所から『チェックしといて』って渡されたサンプルDVD見ようと思ったら『ぷっすま』がはじまって......。

髭男爵さんが変な特技をやってエライ空気になってるのをひとりで見ちゃいましたよ」

――それは何かが根本的に間違ってますね。

「そしたら事務所の人が『違うの渡しちゃったよー』って。でも、このDVD(『世界鳥居奇行』)は、ジャッキー・チェンなんですよ! ジャッキーの映画って最後にNG集が入ってくるじゃないですか。『それだ!』と思って」

――別にジャッキー映画もNG集が69分あるわけじゃないですよ。

「だから、逆ジャッキー・チェンです。ユン・ピョウだ!」

――タイに行くことになったのは鳥居さんの希望だったんでしょうか。

「私はパリに行くと思ってたんですけど......。エッフェル塔の前でフランスパンとオレンジを持って、パリジェンヌになりたかったんですよ。ナイススティックも好きだからフランスパンじゃなくてもいいんですけど」

――その企画、ワンカット撮って終わりですよ。

「それをやろうと思ってたのに、着いてみたらタイだったんでチョー腹が立って! しかも、お札がくさいし」

――ところで鳥居さんは今回が初海外だったそうですが、飛行機とかは大丈夫なんですか?

「昔は好きじゃなくて。危ない......危ないから......。すごくおっかないです! だって、飛行機って全員が『浮く』って思わない限り浮かないじゃないですか。

乗ってる人がひとりでも『落ちる』って思ったら、落ちるから」

――だとしたら、鳥居さんと一緒には乗りたくないですね。

「私なんかずっと『みんな頑張ってくれ!』ってお祈りしてましたから。飛行機にはじめて乗ったのも20歳を超えてからですもん。それまではおっかないから全部フェリー移動で」

――フェリーだって沈む時は沈みますよ。

「またまたー、フェリーは沈まないよー! うふふふふ。だから遠くに行くのは全部フェリー」

――目的地が内陸だったらどうするんですか。

「そういうところは行かない」

――はじめて行った海外の印象はどうでしたか。

「トイレが汚い!」

――ああ、タイのトイレってトイレットペーパーないですもんね。

「だからお尻とか水で洗うの。ホースでジャーッてするパターンと、桶でバシャバシャかけるパターンがあるんですけど、どっちにしろ便器がベッチョベチョになっちゃってるから。そんな便器に自分のお尻つけたくないじゃないですか。スタッフの人たちもみんな、腰をちょっと浮かせてするのが大変だって言ってたんで、私も『イヤだなー』って思いながらトイレに行ったら全然大変じゃなかったの。

私、日本でもちょっと浮かせてウンコしてたみたい」

――日本のトイレでも汚いからお尻をつけたくないと。

「いや、私の中でその高さまでが便器っていう概念なんでしょうね」

――タイの虫料理にも挑戦してましたよね。偏食で知られる鳥居さんですけど、大丈夫だったんですか。

「虫はねー、いつも食べてるのよりマズくてねぇ」

――......何を言ってるんですか。

「え、だって口に入っちゃうじゃないですか、歩いてると。そっちの方が美味しい」

――ああ、蚊柱的なものが。

「あとはご飯の上に虫が乗ってたりすると、チャレンジするんですよ。『お皿から口まで運ぶ間に逃げられるかな?』って。でも、わりと逃げないんでそのまま食べ ちゃうの、美味しいから。タイの虫は食べやすくしてるんでちょっと......」

――タイで売られている虫は調理してありますからね。

「だから虫のブチュッていういい食感が全然なくて。味も薄味だし。......そういえば、カールにも薄味ってありますよね。アレ、なんで薄味なんかにしちゃってるんですかね。濃い方がいいのに、へんなのー」

――それは明治製菓に聞いて下さい。

「んふー!」

――DVDの中でワニ園に行ってましたけど、あそこは楽しかったんじゃないですか。ワニ釣ったりとかして。

「全然面白くない! ワニの口を開いてパフォーマーのおっさんが頭入れたり腕入れたりして『どうよ?』みたいな、しょーもない茶番をやってるんですよ。ワニとコントみたいなことをやったりもするんですけど、お客さんからお金が投げ入れられたらコントを中断して拾いに行くんですよ。コントなんてどうでもいいの、銭ゲバ! あとは、ワニの口開いて『ワニ皮の財布ですよー』みたいなことをしてお金入れてもらったり......ホント面白いですよねぇー」

――さっき面白くないって言ってたじゃないですか。

「ある意味、面白い! 歴代のワニ・パフォーマーの人たちの写真が飾ってあったんですけど、もうボロボロになったおじいちゃんがポーズ決めて写ってて、それが面白くって......。絶対みんな死んでるんですよ」

――全員ワニに食われてたらイヤですね。

「そんな体はって生きてきて、最後は階段から転げ落ちて死亡だったらもっとイヤですけどね!」

――もうちょっと、タイで楽しかった話を聞きたいんですけが......鳥居さんって濃い顔のおっさん好きじゃないですか。

「えーっそんなことないよ」

――石原伸晃さんとか好きでしょ。

「伸晃さんは全然濃くないよ!」

――濃いですよ。じゃあ鳥居さん的に濃い顔っていうのは......。

「ゾマホン!」

――うん、まあ確かに濃いですけどね。

「あとは、私のチーフ・マネジャーの小林さんっていうのがビッグフットみたいな顔してるから、濃い!」

――濃い顔が好きだったらタイ人とか好みなのかなと思ったんですが、そうでもなかったんですね。

「タイ人の中では、なよっとしてる人の方が好みだなって思いました。でもそういう人ってみんなゲイなの。それ以外の人はモサッとしてて、汚いし、くさいし! 伸晃さんは小ぎれいじゃないですか。タイの人も、もっと小ぎれいにしてヒゲを濃くしてもらって、国土交通省とかに一回入ってもらったら好きになれますけどね」

――国土交通省っていうのが重要なんですね......。じゃあタイで一番記憶に残っているところってどこでしたか。

「記憶に残ってるところ......タイじゃなくてもいいですか?」

――うーんとダメだけど、とりあえず言ってみて下さい。

「記憶に残ってるのは、このあいだ行ったセブンイレブン。そこの店員さんに惚れられて、モテキがいきなり来たんです。煮物を買ったら『これくらいの温度でいいですか?』とか『熱すぎますか?』『かわいい服ですね』とかちょいちょい色目を使ってきて、箸を五本もつけてくれたんですよ」

――鳥居さんだって気づいてたんですかね。

「気づいてなかったんだけど、変える時に気づいたらしく『はあああーーっ、鳥居さん! すみません、もう一本つけます』って、結局箸を六本ももらいました」

――タレントパワーは箸一本分だと。

「あ、そうか。どういうことだよー!」

――DVDのタイトルに「IN タイ」って入ってますが......。

「引退しないですよ! 失礼な」

――いや、「IN タイ」です。シリーズ化するとして、今後行ってみたい国はありますか。

「続編が出てパリとかに行ってたらDVDが売れたんだろうなーって感じはしますよね。熱海とかになってたら、あんまり売れなかったんだ......って」

――熱海だったらもはや『世界』じゃないですね。やっぱり行きたいのはパリなんですね。

「いや、タイランド......」

――タイは行きましたよ、もう。

「あとは、梅毒で亡くなった加藤清正の井戸とか行きたいです」

――清正の井戸なんて、明治神宮にあるんだから今からでも行けばいいじゃないですか。

「梅毒で亡くなった加藤清正のパワーがもらえるんで。みんな梅毒のパワーを携帯の待ち受けにしてるんでしょ!」

――はあ......まあ、とにかくDVDが売れてくれればいいと。

「別に売れなくてもいいです。『弾丸トラベラー』(日本テレビ系)とかで海外に連れてってもらえばいいんで」

――じゃあ最後に、このDVD、何なんだと思って見ればいいのか教えて下さい。

「私なりの『情熱大陸』です!」

――全編、情熱ゼロな顔してましたよ。

「じゃあもう、全部私が悪いってことでいいです! 是非、劇場版もお楽しみに」
(取材・文=北村ヂン/撮影=尾藤能暢)



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