『連続テレビ小説 梅ちゃん先生』(NHK)が9月29日に最終回を迎え、視聴率が出揃った7月クールの連ドラ。
主演がジャニーズだらけの前クールでは、『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系)、『ATARU』(TBS系)などが平均視聴率15%を超え健闘したが、今期の結果やいかに? ランキング形式で振り返っていきたい。
■堀北真希主演の超さわやかドラマ『梅ちゃん先生』が独走トップ
まず、平均視聴率のトップ10は以下の通り(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
1位『連続テレビ小説 梅ちゃん先生』(NHK)21.4%
2位『GTO』(フジテレビ系)13.2%
3位『遺留捜査』(テレビ朝日系)12.5%
4位『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)12.4%
5位『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)11.8%
6位『大河ドラマ 平清盛』(NHK、7月1日~9月30日の放送分)11.0%
7位『ゴーストママ捜査線~僕とママの不思議な100日』(日本テレビ系)10.9%
8位『トッカン 特別国税徴収官』(日本テレビ系)10.5%
9位『京都地検の女』(テレビ朝日系)10.3%
10位『ビューティフルレイン』(フジテレビ系)10.1%
なぜか毎年、視聴率に伸び悩みの傾向がある夏ドラマだが、今年も例外ではなかったようだ。そんな中、安定して20%をキープし続けた堀北真希主演『連続テレビ小説 梅ちゃん先生』がトップに。最終回では、高橋克実演じる梅子(堀北)の父が、『NHKのど自慢』に出演。それを見るため、家族がテレビの前に集合するという、なんとも微笑ましくユルい展開で放送を終えた。
同作は、連続テレビ小説には珍しく最後まで厳しい意見が集中。「終戦直後とは思えないほど平和で、リアリティがなさすぎる」「家族の温かさが伝わってこない」「医療の描き方が軽すぎる」などの声が多かった。しかし結果的に、“夏の朝”にはそんな「軽さ」が合っていたのかもしれない。
続く2位は、EXILEのパフォーマー・AKIRAが主演を務めた『GTO』。AKIRAへの演技批判は最後まで叫ばれていたものの、茶髪の熱血教師の言葉は、特に現代の若者の胸にストレートに届いたようだ。
一部報道で「降板か!?」とウワサされていたあの大女優も、ラストシーンまで無事に登場。特に、間違った考えのまま子育てをしている新校長へ向かって「あの子にとっての母親はあなたしかいないのよ! あの子の心の傷がわからないの?」と言い放つ最終回のシーンでは、感情のこもった素晴らしい演技を見せていた。
ちなみに宣伝のため、舞台となった東京・吉祥寺に拳型のボタンが付いた看板「『GTO』仲間(ダチ)になろうぜ!ウィ~ッスボード」を設置していたが、9月中旬に、何者かによって破壊されてしまったとのこと。番組HPには「拳を傷つけられ、完全に壊されてしまいました。(略)鬼塚英吉のリアルな拳を再現するため、手作りで3週間かけて制作していたため、期間中に修復が間に合うか微妙です」とあり、制作期間まで書くあたりにスタッフのやりきれない心情が伝わってきて味わい深い。
■「この夏、最も泣ける」はずの『ビューティフルレイン』は、実は「泣けない」ドラマだった!?
6位の松山ケンイチ主演『大河ドラマ 平清盛』は、前クールと変わらず10%前後をウロウロ。8月5日放送分では7.8%まで落ち込んだが、弁慶と牛若丸が橋で出会うキャッチーなシーンが登場した9月30日放送分で突然、平均視聴率14.3%までグンと上昇。この回をきっかけに暗雲の時期が終わるか?
初回16.0%と首位でスタートした、名取裕子主演『京都地検の女』も、一時7%台まで下がり、結果9位に。しかしシーンが切り替わるたび、テレビ画面に入れ代わり立ち代り現れる、寺島進や益岡徹、大杉漣といった日本が誇る名優たち。彼らが醸し出す、笑ってしまうほどのものすごい安定感は、その辺のドラマでは決して味わえないだろう。『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)や『水戸黄門』(同)が終わってしまった今、長く続いてほしい名シリーズだ。
10位は、豊川悦司演じる若年性アルツハイマーの父と、芦田愛菜演じる娘の親子愛を描き、フジ自ら「この夏、最も泣ける親子愛」と息巻いていた『ビューティフルレイン』。同時間帯の向井理主演『サマーレスキュー~天空の診療所~』(TBS系)が初回14.7%と好発進だったため、「またしても、魔の“花王提供枠”惨敗確定か?」と思われていたが、その後『サマーレスキュー』がみるみる低迷(全話平均10.0%)。全話平均では、わずかながら『ビューティフルレイン』に軍配が上がった。
最終回では、芦田が「父ちゃんが美雨(芦田)のことを忘れちゃっても、美雨は父ちゃんのことを忘れないから。そしたら、父ちゃんはいつまでも美雨の父ちゃんでいられるでしょ? だから、だいじょうブイ!」と往年のシュワちゃんよろしく、笑顔でVサインをキメる感動のシーンが。しかしそのその後は、トヨエツが夏祭りでおいしい焼きそばを焼くシーンなどが続き、ヌルッと終了。
壮絶な闘病系ドラマかと思いきや、病気の進行はほとんど見られず、結局のところ「もしも身近に若年性アルツハイマーの人がいたら」というテーマを軸にしたハートウォーミングな作品であった。映画『頭の中の消しゴム』のような展開を期待していた視聴者の中には、「悲劇的なエンディングを期待してしまった」「ズコーッ」「泣きたかった」「え? うそ……これで終わり?」などと拍子抜けしてしまった人も多いようだ。
■『ビギナーズ!』で、不純な動機で警察官になる男性が続出!?
今期は、特にTBSのドラマが揃って惨敗。夜9時台にして最終回5.7%という悲しい結果を出した藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)主演『ビギナーズ!』(TBS系)もその一つ。当初より、厳しい警察学校において、主人公が茶髪だったり、教官による体罰がコミカルに描かれるなど、リアリティが疑問視されていた同作。最後までその路線は変わらず、漫画原作であることを割り切って見ることが視聴者に求められたが、ドラマ全体に漂う生真面目な空気が、それを難しくしていたのかもしれない。
最終回では、警察学校の夜の屋上で、藤ヶ谷演じる落ちこぼれ生徒が、剛力彩芽演じるクラスメイトに「おれ、お前のこと好きだわ」と告白。対し、剛力は「ずっと待ってたんだよっ」と100点の表情で返事をし、イチャイチャ……。この放送後、突然「お母さん! 俺、警察官になるよ!」と言い出し、のちに「思ってたのと違う!」と後悔するいたいけな青年が続出しないことを願いたい。
深夜ドラマはというと、丸山隆平(関ジャニ∞)が体当たりでダメサラリーマンを演じた『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(テレビ朝日系)、菜々緒が恥ずかしいコスプレに挑戦した『主に泣いてます』(フジテレビ系)が共に全話平均5%台。どちらも映像や音楽にこだわりが見られ、今どきの作風が若者を中心にハマッたようだ。
一方、同じく夜11時台の山田優主演『VISION 殺しが見える女』(日本テレビ系)は、映画『NIGHT HEAD』や『アナザヘヴン』で有名になった飯田譲治氏が脚本を手掛けるも、テレビドラマにしては見せ方がスタイリッシュすぎたのか、全話平均3.1%と伸び悩んだ。
派手さはなかったが、ドラマフリークのための通好みの作品が多かった印象の夏ドラマ。10月からは、ついに新相棒の成宮寛貴が登場する『相棒season11』(テレビ朝日系)をはじめ、キムタク主演の月9や、GACKTが活躍する『悪夢ちゃん』(日本テレビ系)、『家政婦のミタ』(同)の遊川和彦氏が脚本を手掛ける『連続テレビ小説 純と愛』などが始まり、とても華やかな印象だ。併せて、主要キャラクターがドッキリの落とし穴に落ちて亡くなったり、椿鬼奴がセックス中毒OL役で出演するなど、すでに話題の昼ドラ『赤い糸の女』(フジテレビ系)も佳境に向け、展開が見逃せない。この秋は、夏以上に連ドラに期待できそうだ。
(文=林タモツ)