ヒップホップ界の重鎮ドクター・ドレーの元婚約者で歌手のミッシェルが、20日午前に放送されたヒップホップ・R&B専門ラジオ局「Power 105.1」の人気番組『The Breakfast Club』にゲスト出演し、彼から受けたドメスティックバイオレンス(DV)について赤裸々に語ったとして話題となっている。

 ミッシェルは同番組で、「目の周りに5回も青タンができたわ。

肋骨にはひびが入ったし、体にはひどい傷痕が残ってる。でも、これが普通だと思ってたの。周りのみんなも普通なんだって思ってたし。警察に通報するなんて考えもしなかった」「彼はね、げんこつで殴るの。ぎゅっと握り締めたこぶしでね」と告白。ドレーが彼女に暴力を振るっていても誰もなにも言わず普通にしていたため、被害者だという自覚がなかったことを明かした。


 そして、「謝罪なんてないわ。今まで全然。でも、今さら謝罪されてもなにが変わるわけでもないし。過去のことだからね。遠い昔のことだから」と言いつつ、「でもね。最初に殴られたときのことは今でも鮮明に覚えている。
初めて青タンをつくったときのことよ。2人でベッドに横たわり号泣したの。彼もアタシも泣いたのよ。アタシは痛みがひどく、ショック状態で泣いてた。ドレーがなんで泣いてるのかはわからなかったけど、彼は『ごめん、本当にごめん』って言ってたわ。あのときだけよ。
謝ってくれたのは。『もう二度と、絶対に目を叩かないから。ね?』とも言ったわ。アタシは『わかったわ』って言って、2人で眠りに就いたの」と生々しいやりとりを語った。

 ドレーは、西海岸ヒップホップシーンを大きく変えた伝説的グループ「N.W.A.」を結成する前に、「World Class Wreckin’Cru」というエレクトロ・ヒップホップグループで活動していたが、ミッシェルはそこに女性シンガーとして参加。2人はほどなくして交際を開始した。
ミッシェルはその後、「N.W.A.」のメンバーであるイージー・イーが立ち上げたレコードレーベル「ルースレス・レコード」とアーティスト契約を結び、ドレーのプロデュースによりデビューアルバムをリリース。収録していたシングル「Nicety」「Something in My Heart」がヒットし、アルバムは270万枚も売れた。

 その後、ミッシェルは極悪非道な危険人物として恐れられている実業家シュグ・ナイトのレーベル「デス・ロウ・レコード」に所属したが、セカンドアルバムは鳴かず飛ばずで、その後アーティストとしては低迷。ドレーとは婚約をし、1991年に長男を出産したが、女ったらしの彼に泣かされる日々に疲れて破局。その後、優しくしてくれたシュグと付き合うようになり、99年に結婚。2001年には長女を出産したが、シュグが前妻と離婚しておらず、ミッシェルとは法的に結婚していなかったことが明らかになり、破局。
シングルマザーになり、現在はライブ歌手としてバンドと共に活動している。

 ミッシェルは『The Breakfast Club』で、夫婦として8年間生活してきたシュグから、「一度だけDVされたことがある」ことも告白。「彼がアタシにしたことで、最もクレイジーなことは、平手でアタシのアゴのあたりを叩いたことね。緊急病棟に行って治療を受けなければならないほど、ひどいことになっちゃって。シュグに、『今すぐ病院に連れて行って。アナタが連れて行ってくれないなら警察に連れて行ってもらうしかなくなるわ』って頼んだら、しぶしぶ連れて行ってくれてね。
医者には、ボールが当たっちゃったって説明したの。真夜中の2時なのによ! 医者は、お見通しだったようだけど」と軽い口調で、あっけらかんと語った。

 彼女は以前、リアリティ番組『R&B Divas: Los Angeles』でもドレーからDVを受けていたことを告白。「アタシの母親は一度もアタシに『愛してる』って言ってくれずに死んだ。父親は最近言ってくれるけど、子どもの頃は全然。だから愛を知らなくて。ドレーから殴られても『あぁ、これが愛なんだ』って勘違いしてたの」「鼻が曲がっちゃったこともあるけど、殴ってくれる彼を尊敬すらしていた」と軽い口調で語り、「男が女を殴るなんてとんでもないって教えてくれたのはシュグなのよ」とも明かした。

 しかし、そんなシュグもとんでもない男で、偽の書類を用意して「前妻とは離婚しているから結婚しよう」と彼女にプロポーズ。ミッシェルは大喜びして彼と結婚したのだが、実はシュグは離婚をしていなかった。「刑務所に入っている人(当時、収監されていたシュグ)と電話で結婚手続きをすることはできないなんて知らなかったの」「アタシのことバカだって笑ってもいいわ。でも『愛してる』って言ってくれた彼のことを信じたの」と語り、ネット上で「愛に盲目とはこのことなのか、ただのバカなのか」と話題を集めた過去も。

 そんな彼女の今回のDV話に、世間は同情しつつも微妙な反応を見せている。ラジオの話を報じた米大手ゴシップ芸能サイト「TMZ」の記事コメント欄には、「彼女はDVが愛だと受け止めていたのだから仕方ない」「DVされるたびに、『愛してくれてるのね』って言えば、男もDVが止まらなくなってしまう」「DVは悪と教えてくれたというシュグにさえ殴られたというのだから、彼女にも責任がありそう」など、辛辣な意見が書き込まれているのだ。

 「別に謝ってもらわなくてもいいの」「DVは過去のこと」と言いつつ、DVの内容をベラベラと話したミッシェル。彼女のように親に愛されなかった女性がDV被害者になる可能性が高いということを世間に再認識させることになった点では意味がある告白だったといえるが、本人がいまいちDVの深刻さをわかっていないようで、「またDV男に引っかかるのでは」と心配する声も上がっている。

 なお、この発言についてドレーは沈黙。シュグはひき逃げ殺人容疑で裁判中で、体調不良で法廷で数回倒れるなど、それどころではない。今後もミッシェルが2人について暴露しまくるのではと、ゴシップ好きなアメリカ人たちは期待を寄せている。