羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「おいしかったです」加藤綾子
『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系、9月16日放送)
情報番組や、バラエティ番組において、節約ネタは欠かせない。出演する女性タレントたちは、激安スーパーの野菜の値段に目を輝かせ、節約のカリスマに食費節約のかさましレシピを教われば、「やってみよう」と目を丸くする。
きちんとした節約主婦であれば、こういった情報を即生活に移すのだろうが、私のようなひねくれ者は、女性タレントに対して「またまたそんなこと言って、絶対やらないくせに」と思うだけである。
キー局のゴールデンタイムの番組に出られるタレントは、一流である。当然、ギャラも高いだろう。収入と節約度合は正比例するわけではないが、顔を知られたタレントが、激安もやしを求めて、わざわざ都下のスーパーに行くとは考えにくい。
番組の中心とも言えるべきタレント陣が腰を低くするとなると、必然的にもっと腰を低くしなければならないのが、タレントを立てることを基本とするアナウンサーである。例えば、スポンサー企業からの利益供与疑惑を報じられ、1億7,000万円のマンションに住み、2,000万円の外車に乗っていることが明るみになる前の日本テレビ・上重聡アナウンサーは、イギリス王室キャサリン妃の愛用ブランドの洋服について「高すぎて買えない」「彼女に買ってあげるのは無理」と庶民派を偽装したコメントを出していた。実生活は別として、視聴者に「こんなお給料の高そうな職業の人も、そんなもんなんだ」と視聴者を安心させるのは、アナウンサー最大の“お仕事”と言ってもいい。
“庶民プレイ”という“お仕事”が一番下手な女子アナ、それがフジテレビのカトパンこと加藤綾子アナである。
バラエティ番組全盛の昨今、加藤アナのように、美人で個性の薄いキャラはお高く止まっていると誤解されやすいことや、プロ野球選手との熱愛報道がマイナスに働いたなど、いろいろ原因はあるだろうが、前述した通り、加藤アナは“庶民プレイ”が下手なことも影響しているのではないかと私は思っている。
具体例を挙げてみよう。現在、加藤アナは『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)において、明石家さんまのアシスタントを務めている。9月16日放送回では、タレントのヒロミが温製と冷製のパスタを2種類作り、出演者にふるまう企画が放送されたが、その際、さんまが「昨日、我々も温製と冷製パスタを食べたばっかりだけどな。なぁ、加藤」と加藤アナに同意を求め、それを受けた加藤アナは、「おいしかったです」と述べた。
大物芸能人と局アナは、同じ仕事をしているわけだから、食事に行くこともあるだろう。しかし、だからといって、それをそのまま公にするのは、NGなのである。なぜなら、庶民は大物芸能人とは食事に行かないものだし、大物芸能人においしいパスタをごちそうになる図とは、“ご寵愛を受けるカトパン”を女性視聴者に連想させるからである。
会社員は仕事の出来不出来によって評価されるのが建前だが、役員や管理職に男性が多い場合、それとは別に“お気に入り枠”の女性が存在する。大抵若い女性や美しい女性がそこに該当し、彼女たちは豪華な食事に連れて行かれたり、仕事上の便宜を図ってもらったりする。
それなら加藤アナは、視聴者から嫌われないために、どう答えるべきだったのかといえば、「〇〇さんの送別会でした」「××さんとご一緒しました(××さんは女性が好ましい)」など、2人きりではなく、会社員として正当な理由があっての会合で、プライベートではないことを強調することである。
かつて、元TBSの田中みな実アナが同番組に出演した際、マツコ・デラックスは「加藤は(田中みたいに)ガツガツしてない」と褒めるニュアンスを込めて述べたが、野心なしにわたっていけるほど女子アナの世界は甘くないだろう。
大物芸能人や、会社の上司など権力者に影でたっぷり愛され(でないと番組に出られない)、
表ではそれをおくびにも出さず、一般人の男性視聴者、つまり非権力者に従順そうな印象を与え、いい思いはこっそりと味わって女性視聴者の嫉妬を避ける。愛される女子アナに必要なのは、相手によって態度をうまく使い分ける“狡猾さ”なのではないだろうか。
(仁科友里)
※画像は加藤綾子公式ブログより