気軽に売り買いができるフリマアプリとして、若年層を中心として急激にシェアを拡大している「メルカリ」。しかし、実態をみると、違法性の高いアイテムや詐欺まがいの出品が相次いでおり、その荒れた市場で騙したり騙されたりしている人々は、一部で「メルカリ民」と呼ばれて蔑まれてすらいる。



 なぜ、メルカリを利用する人のモラルが低くなってしまったのか。実際にサービスを利用しているユーザーに話を聞き、その実態について探った。

●現金で1万円札、無記名の領収書も出品

「無記名の領収書」「妊娠米」「1万円札」……。これらの商品は、メルカリで実際に出品されたものだ。もちろん、違法だったり利用規約違反だったりするモノばかりだが、こうしたアイテムを平気で売り買いしているのが、メルカリ民と呼ばれる一部の利用者である。

 メルカリは、2013年にサービスがスタートしたフリマアプリ。
スマートフォンスマホ)ひとつで出品から売買取引までを行えるという手軽さが受け、右肩上がりでユーザーを増やし、16年には4000万ダウンロードを達成。現在は1日100万品以上の商品が出品され、月間流通額は100億円を超えるといわれる巨大な“市場”だ。

 インターネットでは「ヤフオク!」などの個人売買サイトが先行していたが、メルカリが後発ながらも支持されたのは、あくまでも“フリーマーケット”であるという点。商品価格は出品側が設定することができ、買う側は通信欄を使って価格交渉をすることも可能だ。それだけに、出品物はバラエティに富み、石ころから高級車まで、ありとあらゆるモノが売買されている。

 なかでも最近話題となったのが、相次いだ「現金」の出品だ。
「1万円札」が「1万3500円」で出品されていたりするケースだが、これはクレジットカードの利用枠を現金化したい多重債務者などに需要があるという。

 現金の出品は違法であり、利用規約にも反するため、すぐに禁止となったが、その後も「チャージ済みのSuica」や「パチンコの特殊景品」、さらには「キャッシュバック付きのパワーストーン」など、ネタなのか本気なのかわからないが、とにかく換金性だけは高いモノが相次いで出品され、運営側の規制とのイタチごっこが続いている。

 こうしたメルカリ民の実態について、さまざまな個人売買サイトで多数のハンドメイド商品を出品し、メルカリにも詳しいAさんは「メルカリユーザーは若年層が多いのでは」と指摘する。

「メルカリに限らず、スマホの売買サイトを見ていると、文面が幼い感じの利用者が多い。それに、商品ページの説明や注意書きを読まない傾向があるので、記載されていることをあらためて聞いてきたりすることが多いです」(Aさん)

 また、執拗な値下げ交渉や購入確定後の値引き要求など、モラルの低い行動も常態化しているという。

「購入後に商品状態を確認して『キャンセルしたい』と言いだしたり、本物を取り扱っているにもかかわらず『偽物』と主張してキャンセルしたりするケースも多いです。
こちらは新品の商品を送っているのに、『不具合があった』と返送してきた商品が、明らかに私が送ったモノとは違う中古品だったこともあります」(同)

●ユーザーのモラル崩壊で荒れるメルカリの現状

 一部ユーザーのモラルが崩壊しているメルカリでは、「騙されたほうが悪い」という状況になっているようだ。なかでも、たちが悪いのが「無在庫販売」だという。

 これは「Amazon」や「楽天」などの通販サイトから適当な商品を選び、その写真や説明文を盗用し、さらに価格を割高にしてメルカリに出品する。商品が売れたら、そこで初めて通販サイトから購入して転売するという手法だ。これも明らかな規約違反である。

「このようなユーザーは、メルカリの出品・販売を効率化させるために非公式の『ツール』を使っていることが多く、運営側も対策として使えなくしたり1日の出品数を規制したりしていますが、完全にはなくなっていないようです」(同)

 こうした現状について、メルカリ側は「犯罪抑止のため全国の捜査機関や公的機関と情報交換を行い、そこで得た知見をカスタマーサポートのパトロールに活用しています」と説明しており、特に偽ブランド品や著作権侵害物には目を光らせているという。


 また「ヒト・システムによるパトロール」も行い、「24時間365日の体制で禁止出品物のチェック」「不適切な商品は発見しだい削除しています」という。

「確かに規制はしていますが、メルカリは大きく変わることはないのではないでしょうか。規制をかけすぎて廃れた『LINE MALL』という前例もありますし……。メルカリというのは、何が起こるかわからない『ネット闇市』的なところが最大の魅力でもあるんです」(同)

 メルカリはあくまでも当事者同士の取引なので、“ネタ”として楽しむのも個人の自由だ。しかし、モラルの低下がいきすぎてしまえば、運営側にとっても利用者側にとってもメリットはない。

 また、ネット上ではなく売買者同士が直接会ってやり取りする「メルカリ アッテ」というサービスもあり、こちらも一部のユーザーによって犯罪の温床になることが懸念されている。


 メルカリ民の“闇”がネタでなくなってしまう日が、すぐそこまで近づいているのかもしれない。
(文=清談社)