「今期っていうか、ここしばらく本当に豊作だねえ。じっくり楽しめるアニメが多いと本当に感じるよ」
「BDマラソン(注1・アニメは毎月順番にBD・DVDがでるので、全話集めるまでに半年以上かかる。
「俺も5つあるわ。まあ、嬉しい悲鳴だな」
「だなー。とはいえさ、最近ちょっと寂しい気持ちになることも多いんだよな」
「なんだかお前にしてはメランコリックだな、なんだよ一体」
「いやね、俺たちって、アニメ好きじゃん」
「まあ、な……なんか改めて言うと恥ずかしいな」
「ああ、俺も大人になってやっと言えるようになった気がする。高校時代クラスとかで隠してたしな。で、働いてお金も使えるようになって、BDとかも買い漁れるようになったのはいいんだけどさ、1クール(注2・12話、三ヶ月を差す。1年は4クール)でブーム入れ替わっちゃってさ」
「ブームの入れ替わり早いよなあ……放送終わったら一気に話題見なくなること増えたもんな。まあしゃあねえよ、アニメの本数が尋常じゃないし、そんだけ面白い作品が多いってことだし」
「そうなんだよ、そうなんだけどさ! 俺はね……大好きだった作品の話がまだまだしたいんだよ。好きでしょうがない作品がオワコン(注3・ブームとして終わったコンテンツ、の意味。たいていは煽り文句で使われる)って言われるのが辛くて……俺の中で終わってないんだよ!」
「わかった、わかったからまあ涙ふけ? な?」
「うっぐ、うっぐ!」
「そだ、お前に最近出たアニメ雑誌でいいのがあったから貸してやるよ」
「へ? でもアニメ雑誌って最近話題の作品ばっかりじゃないの?」
「まあいいから、表紙見てみろよ」
「お、おう……『月刊アニメスタイル』ね。……えっ、表紙が『とらドラ!』?!(注4・原作竹宮ゆゆこのラノベをアニメ化したもの。原作とアニメが同時に終了するという異例な展開が話題になった)ちょっとまてよおい、これいつのやつだよ!」
「2011年5月25日発売。紛れもなく最近だな」
「おいおいおい、『とらドラ!』のアニメ終わったの、2009年の春だぞ? なんで今さら『とらドラ!』なんだよ!」
「『とらドラ!』面白かったよな……。
「俺は亜美ちゃん(注6・『とらドラ!』のヒロインの一人。転校生のモデルの美少女)派だったな……。あの時、友達と飲みながらさ、朝まで語り合ったよな」
「大河派のあいつもさ、泣きながら熱弁してたっけな」
「そう、俺たち、『とらドラ!』が好きでさ……でもなんで今更、新雑誌で『とらドラ!』特集してんだよ? 今だったらもっと他に話題の作品あるだろ?」
「そこなんだよこの雑誌のいいところは! なあ、さっきお前さ『俺の中で終わってないんだよ!』って言ったよな」
「ああ」
「じゃあ読め、読んでみろ」
(読書タイム)
「なんだよこれ、どういうことなんだよ!」
「な。……おいおい、また泣いてるぞ?」
「俺さ、俺、やっぱり『とらドラ!』が好きなんだよ、大好きなんだよ! そうだよこの大河が会長と殴り合うシーンとかさ、亜美ちゃんの前でみのりんが泣くシーンとかさ……。これ書いてる人どんだけ『とらドラ!』好きなんだよ!これ解説本じゃないじゃんかよ、どのシーンがどれだけ素晴らしいかをものっすごい熱弁してる本じゃん! 読んでるだけでどんどんテンション上がってくるじゃん」
「あとスタッフのインタビューもすげえよな」
「ほんとだよ! 作り手がさ、本当にその作品が好きで、夢中でつくってるのが見えるよね。キャラクターの感情に、監督も現場もみんな入れ込んでいってるのがすごい伝わってくる」
「うん、ライターもスタッフも業界関係者も、書いていること全部絶賛になってる。でも嫌味ないんだよね。だって本当に好きなの伝わるんだもん。こんなに色々な人に愛されて作られたら、そりゃ俺達もさ……」
「好きに……なるよな。ここまで『とらドラ!』のDVD見直したいと思ったの久しぶりだわ。BD-BOXまだかなー」
「ほんとだよな、早く出てほしいわ。
「監督インタビューはよく見るけど、アニメーター一人にスポット当てるって面白いな。今回は馬越嘉彦さん(注7・「ハートキャッチプリキュア!」、「おジャ魔女どれみ」などのキャラクターデザインを手がけるアニメーター)か。しかも原画いっぱい載ってるから分かりやすいね。これなら作画とかよくわからないおれでもわかるわ。……ってかさ」
「ん?」
「今放送しているアニメの特集記事、なくね?」
「そうなんだよ。あくまでも『アニメを楽しもう』ってコンセプトの雑誌なんだよ。最新の情報とか、流行とかじゃない。好きなモノを思う存分徹底して知って、さらに楽しむための雑誌。珍しいと思うよ。ホントは2000年に一回でてるんだけど、廃刊になってWEBにうつってから、また雑誌になったみたいだな」
「僕たちはアニメが好きだ。
だからもっとアニメの話をしよう。
そうすれば、もっともっとアニメを楽しめるはずだ。」
(月刊アニメスタイル第1号 序文より)
「おれ、おれやっぱり……『とらドラ!』が好きだ。
「そのための雑誌だよ。だってみてみ、第二号のこれ……」
「え? ……ナディアじゃん!な、な、ナディアなの!? もう20年前だぞ!? だ、大好きだったよ、歌も歌えるよ!」
「まずは酒でも飲みながらさ、『とらドラ!』の話しようぜ。二号目が出たらナディアの話な。その時までに見直しとこうぜ。あ、売ってるのはアマゾン、アニメイト、ゲーマーズ、ツタヤとアニメスタイル関連イベントだけなので気をつけてな」
「アニメって……面白いな。俺アニメ、だいすきだわ。」
(たまごまご)