生きていてつらかったり、「こういう生活でいいのかな」と疑問を感じたり、周囲と自分があってない気がしないだろうか。今だけじゃなくて、将来も。


不安や心配事の可能性が、現代の不安定な日本には多い。昔、長い間続いた封建制度や、数十年前に一瞬ひろまった高度経済成長期のライフスタイルとちがって、今は「定番の生き方」というものがない。それだけ自由だということでもあるけど、昔のままの社会制度や人の考え方なんかとズレが生じている。

「正社員として新卒で就職すべき」とか「結婚して子どもを生んだら一人前」とか、既に「当たり前でもないし、おいしいとも限らない」のが現実だ。

数億円持っていれば一生安泰で、心配もないし社会や周囲に気をつかって生きる必要もないかもしれない。でも、それはなかなか難しいから、数億円に頼らない方法を考えないといけない。


『持たない幸福論』は、そういう考え方を知ったり、自分でも考えられるようになれるかもしれない本だ。
仕事も家族もお金も持たない生き方『持たない幸福論』が示す生き方サンプル
『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』pha著/幻冬舎

大学を出て就職したけどやめてニートになって、シェアハウスを運営したり田舎にシェア別荘を借りてみたり、「納得できる生き方」を模索してきた著者のphaさんが、題名の通り「持たない」をテーマに書いている。

「仕事」「家族」「お金」についてがメインだ。何十年もぶっ通しで働くとか、結婚して核家族で1軒に住むとか、そういうものに対してどんどん「無理して全員がやる必要がない」「やめたほうが幸せに生きられるケースもある」と言っている。旧来のものを否定するんじゃなくて、「自由に考えて、それぞれ自分のオリジナルで居心地いいようにやっていこう」っていう話。

phaさんが実際にどんなふうに過ごして収入を得ているかとか、別荘が月5000円だとか、かなり細かく書かれているので、彼みたいな生き方をしてみたいと思っていなくても、1つの「生き方サンプル」として参考になる。


既存の生き方を自分用にカスタムしたり考え出せない人でも、「本を読む」とか「人脈を作る」とか、生き方をチューンするための方法が色々と紹介されてる。「自分から集団に溶け込むのが苦手でも、ゆるい飲み会をこういう感じで企画すると人が集まったりしてラク」とか、体験に基づいて具体的な方法が紹介されているのも面白い。

そして、ただノウハウや彼の生き方が紹介されているだけでない。例えば以下の一文。

「多少変な人だと周りから見られるのさえ気にしなければ(そもそも違う価値観の人の目なんて気にしなくていい)、今は今までで一番なんでもいろいろ自由にやりやすい時代だと思う。」

いちいち親切に書かれたカッコの中身がうれしい。こういうことを「あ、やっぱり、こう考えててもいいんだな。
オッケー。」と確認したり自信が持てるのもうれしい。若い人は特に、自分のビジョンを固める材料になる。

『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』 はpha著。幻冬舎より。kindle版はこちら。(香山哲)