2巻、3巻もそれぞれ106円。
3巻完結なので「まとめ買い」でも217円だ。

「めちゃくちゃ怖いトラウマ恐怖漫画・ベスト18」をセレクトするときにも、これは絶対外せないと思った恐怖漫画だ。
これは、ぜひ、読むしか!
と言いたいところだが、精神的に落ち込んでる人やダークになってる人、ちょっと弱ってるなって人にはオススメしない。
それぐらいドス黒い漫画だからだ。
怖いだけじゃない、気持ちがドン底に堕ちる内容だ。
廃校直前の中学に転校してきた野咲春花。
わずか十数人の生徒しかいない。
東京から転校してきた春花は、よそ者ということで壮絶なイジメにあう。
「あと2カ月もすれば卒業なんだから……」と我慢する春花。
先生も、あと2カ月おおごとにならずにどうにか過ぎてくれればいいのに、と見て見ぬふりだ。
沼のようなゴミ溜めの穴に、靴やカバンを投げ捨てられ、拾いにいく春花に、罵声が浴びせられる。
「今を 耐えて 耐えて」というナレーションの後にくるのが、衝撃のページだ。
真っ黒に燃えている家。
「それから数日後に私の家族は焼き殺された」
以上が、第1話。
ここまででもハードだが、ここから1話ごとにハードさが増す。どんどん黒くなる。
もう止めて! と心のなかで叫びながら、読むのを止めることはできない。
クラスの階級的な抑圧による人間関係とドロドロとしたイジメを引き出す気持ちが混ざり合って、とんでもない事態を引き起こす。
そして、クラス中を巻き込む殺し合いがスタートするのだ。
「デスゲーム」モノの漫画も、殺し合いを描く。
だが、デスゲームであれば、巨悪である何者かに殺し合いを強いられる。
登場人物たちは、どうしようもなく殺し合いをするというある種の「ピュア」さが担保される。
だが、『ミスミソウ』は違う。
巨悪はいない。
いるとすれば、それぞれの子供の心の中にいる。我々の中にいる。
だから、ただただ暴走する狂気が凄惨なドス黒い殺し合いを生み出していくのを読まされると、胸の底に重いモノが溜まっていく。
押切蓮介『ミスミソウ』、この毒薬漫画を読み終わったあと、陰惨な気持ちを、あなたはどう抱えて生きていくだろうか。
(米光一成)