Web無料漫画配信サービスジャンプ+にて「ファイアパンチ」第28話が配信されている。序章「覆われた男」が閉幕し、次話から頗章「覆う男」が開始される。

ファイアパンチ 28話。序章終了「覆う男」ってなんだ

28話あらすじ


アグニの生きる理由は、妹ルナの最後の言葉「生きて」だ。この言葉がなければ、いくら再生能力の持ち主でも全身が燃え盛る炎に何年も耐え続けることが出来る訳がない。そして生きる目的は、ルナの仇討ち。しかし、その仇であるドマが死んでしまったと聞かされ意気消沈してしまう。ルナそっくりのユダに全ての心のうちを見透かされ、もう生きる意味などないという事を優しく諭される。そして、ユダにルナを重ね、死ぬことを選ぶ。

「なんで俺に生きてなんてひどい事を言ったんだよ」

ユダは優しくアグニの顔を触り、朽ちるまで消えない炎を自身の身体に点火させた。
そしてアグニも、自分の意思で再生を止め、死のうとしていた。しかしその時、何者かがユダのクビを切断。そこに立っていたのは、防寒具に身を包んだ、存在しないはずの氷の魔女を名乗る顔に影が差す女だった。アグニは再びルナとの約束を思い出し、文字通り燃え始める。

頗章


最初が序章で、次が頗章、読み方は“はしょう”。では、頗章ってなんだろう?調べてみるとそんな言葉は無い。どうやらオリジナルのようだ。
“じょしょう”の次に“はしょう”となると、序破急のことだろうか。

序破急とは、「能」の基本的な構成理念のこと。起承転結と近いもので、よりテーマを直接的に表現したい時に使う手法となっている。“序”で物語の核になる部分と状況、事実を説明、“破”で話を展開させて、“急”で締める。この三部構成となっている。

この頗章が破章の事だとしたら、“頗”とはなんなのだろうか?これまた調べてみると、「偏っている」という意味。
すでにこれだけ偏った漫画なのに次からはもっと偏るらしい。

覆う男


序章のテーマは「覆われた男」だった。これは炎に覆われた男、アグニを指す言葉だ。では、「覆う男」とはなんなのだろうか?

素直に取るならこの覆う男も主人公であるアグニを指している言葉だろう。一度は自殺を図り、氷の魔女登場によってもう一度自分の身体を炎で覆ったという意味だろう。しかし、これだと序章の後半には自らの意思で炎を覆っている事が発覚するので、少しだけシックリこない。もしかしたらアグニではないのだろうか?そうなると誰になるのか?「地球を覆う男」という事で、氷の魔女だろうか?しかし、氷の魔女は女。
このままだと、もっとシックリこない。

氷の魔女


そもそも氷の魔女とはなんなのか?それはユダが作り上げた架空の人物のはずだった。氷河期と国民に伝えると絶望してしまうので、祝福を持った一人の人物を最もらしく悪として作り上げ、討伐という目標を作ることで希望を持たせたのだ。しかし、今話で氷の魔女を自称する人物が現れた。

つまり、この氷の魔女が、ユダが作り上げた人物像と異なっている可能性は高い。氷こそ作れるものの世界を凍らせてはいないかもしれないし、ただ「みんながいう氷の魔女ってやつです」と皮肉交じりに自己紹介しただけかもしれない。
もっと言えば、女じゃない可能性だってある。一人じゃない事も有り得る。もしかしたら他にも氷の祝福者がいて、「地球を覆っている男」が別にいるのかもしれない。

「覆う男」が氷の祝福者だとしたら、そいつがこの章のボス的存在だ。だが、覆っている理由はなんだろう?農作物を作れなくして、得があるような気がしない。では、“覆う”のではなく、“覆わざる負えない”だとしたらどうだろうか?例えば「氷河期ではなく、異常な温暖化が地球を襲っている」とかだ。
もしくは、覆うつもりないけど、生きているだけで覆っちゃう奴がいるとか。覆うことで、何かを選別しているとか。

今話で登場した氷の魔女は、アグニの完全な敵ではない気がする。敵なのか、敵じゃないのか、そういう立ち位置のキャラクターに見える。しかし、世界を氷から救う鍵を握っている人物なのは間違いない。おそらく、とんでもない急展開が待っている頗章のスタートは、本日だ。

(沢野奈津夫)