昨年10月に発売されたPILOTのKakuno以来、万年筆ブームが来ています。正確には、入門用万年筆ブームでしょうか。
各地の文房具屋において、入門用ペンの売り場面積が拡大されているのを目にします。ブームの火付け役となったKakunoに関しては以前記事にしましたので参考にしてください。

売れているのはPILOTのKakunoだけではありません。今年の2月に発売されて以来、じわりじわりと取り扱いが増えている注目のペンがあります。セーラー万年筆の「MY FIRST」です。

Kakunoは子供用の万年筆であるにも関わらず大人も使える完成度というコンセプトでした。
例えば、普通に持つと正しいペンの持ち方になるように、グリップが三角形になっています。一方のMY FIRSTは、大人がこれから初めて使う時の入門用万年筆というコンセプトです。もうペンの持ち方の指導はいらないというわけで、ペン軸もグリップ部も丸くなっていて、自由に持つことができます。また、はめ込み式(嵌合式(かんごうしき)と正確には言います)で手軽にキャップを付け外しできるKakunoに対し、MY FIRSTはネジ式でしっかり密封できます。

MY FIRSTのケースの中にはペン軸が1本、ペン先が2つ、カートリッジが3つ入っています。カートリッジはブラック、ピンク、スカイブルーの3色。

面白いのは、ペン先が2つ入っているところでしょうか。ひとつはMF(中細)の普通のペン先で、普段使い用。もう一つはペン先が曲げてある特殊なペン先。これらをどちらも同じペン軸で使うことができるのです。

この特殊ペン先は、もともとセーラー万年筆の「ふでdeまんねん」で採用されていました。ペンを寝せて書くと根元を使うことになるので太くなり、立てて書くとペン先を使うので細くなる。
自分で線の強弱を自在にコントロールできるのです。慣れれば筆で書いたような文字を書くことも、万年筆画を描くこともできます。

太い字が書けるということは、それだけインクが紙に多く接していることであり、摩擦が低くなるということ。そのため、他の万年筆よりもすらすらと滑らかな書き心地でした。ただ、細かいメモ書きにはあまり向いていないというか、ずっと細いままをキープするのは意外と難しかった。これは僕が普段からペンを寝かせて書く癖があるからでしょう。


もちろんコンバータにも対応していて、カートリッジを使い終わったらいろいろなインクを楽しむことができます。説明書には、コンバータの使い方も載っています。インクの色の変え方や、メンテナンス方法も図入りでわかりやすい。

実は万年筆で一番多いトラブルは、あまり使わなくなってしまってペン先が乾いてしまうことですが、MY FIRSTでは、乾きにくいネジ式キャップを採用しています。乾いてしまっても、ペン先が交換できるので、メンテナンスが容易。また、3色のカートリッジを交換するときにペン先を洗うことで、自然にメンテナンス方法が覚えられるように工夫されています。


これから万年筆を使ってみようという方、ちょっと面白いペンを使ってみたい方は、MY FIRSTから始めてみてはいかがでしょうか。
(杉村 啓)

MY FIRST(amazon)