『寫眞館』『陽なたのアオシグレ』、短編アニメーションが劇場公開される。
この二本、素晴らしい。
泣いた。ぜひ観てほしい。

『陽なたのアオシグレ』は、石田祐康監督作品。
だれ、それ? という人も多いかもしれない。
でも、YouTubeにアップされた『フミコの告白』の監督だ、といえば「知ってる!」という人もいるだろう。

学生時代に作った『フミコの告白』がYouTubeにアップされると260万回以上の再生数を記録。
ぐいぐいと惹き込まれるスピード感と圧倒的なクオリティで、「すごい!」と話題になった。
・2010年オタワ国際アニメーションフェスティバル特別賞
・YouTube Video Awards Japan 2009アニメ部門
・第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
・第9回 東京アニメアワード学生部門優秀賞
・勝手に選ぶ米光一成のゼロ年代ベストアニメーション賞を、『赤ずきんと健康』と共に受賞。
などなと、次々と賞をゲットしていく。
さらに翌年の卒業制作『rain town』で、文化庁メディア芸術祭で2年連続の受賞。

で、本作『陽なたのアオシグレ』が、その石田祐康監督の商業デビュー作品なのだ。
18分の短編作品。
勝手に選ぶ米光一成の2013年ベストアニメーション賞は、『風立ちぬ』と『陽なたのアオシグレ』にほぼ確定。
いや、ほんとにすごい。泣いたもん。

話はシンプルだ。
内気な男子小学生ヒナタくんが、大好きになたシグレちゃんが転校してしまうことになる。
ヒナタくんは、自分の思いを伝えられない。
シグレちゃんは列車に乗る。
「僕はシグレちゃんに想いを伝えるんだ!」
決意したヒナタは走りだす。
と、まあ、それだけだ。
それだけなのだが、挿入曲(スピッツ「不思議」)の流れるなか全速力パワーが炸裂する後半のヒナタくんの疾走。
その説得力。
物語や、テーマや、思想ではない。ただ、動く絵のちからが、ダイレクトに心を揺さぶる。
宮崎駿監督『風立ちぬ』が、大人のアニメーションであるとすれば、これは子供のアニメーションだ。
だが、絵に魂を込める意気込み、気骨は、同じベクトルを持っている。
ヒナタが決意して振り返るシーン、疾走するヒナタと妄想が融合する瞬間、東京が緑に覆われる画、鳥に乗って飛ぶときのぐっと力の入る絶妙な動き、そういった数々が、我を忘れさせて、動く絵の中に没入させる。
恐るべし。
1988年生まれ25歳のヤングな監督が、ここまでの作品を生み出した。見逃す手はない。


同時に上映される『寫眞館』は、なかむらたかし監督の最新作。
なかむらたかし監督は、『AKIRA』の作画監督であり、『パルムの樹』『ファンタジックチルドレン』の監督だ。
写真館を舞台に戦後から現代までを緻密に描く、ベテランならではの傑作。

11/9から
東京シネ・リーブル池袋(初日舞台挨拶アリ)
横浜ブリリア ショートショート シアター
大阪テアトル梅田
で公開。

2作品あわせても35分。短い。
だが、結晶のように貴重な映像体験の時間となるはずだ。
っていうか、もう1回観たい!と思うはずだから、2回観て、70分。
くはー、よかったーって、満喫してください。
(米光一成)