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「孤独のグルメ」は常連客をつくるドラマ

2014年7月30日 08時00分 ライター情報:杉村啓

『孤独のグルメ』巡礼ガイド(扶桑社ムック)
ドラマのSeason1から3、そして原作に登場したお店を紹介している。原作者インタビューや松重豊インタビューも掲載されていて、ドラマ収録の裏話も多数。聖地巡礼派には必携の一冊。

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第3話「神奈川県足柄下群箱根町のステーキ丼」が予告で登場した後の木曜日には予約の電話が殺到し(定休日だったにも関わらず)、週末は三連休だったこともあってか大変な混雑だったようだ。

他の番組と『孤独のグルメ』ファンとで大きく違う点が二つある。一つ目は『孤独のグルメ』を見てきた客は、その後も何度もリピートするということ。他の番組を見て来たよりも、孤独のグルメの客(ちなみに注文するメニューがドラマと一緒で、すぐわかるとのこと)。番組に出た複数のお店の人から聞いたので、ほぼ間違いない。

もう一つは、「孤独のグルメファンは行儀がいい」ということだ。ここで7月24日に発売された「『孤独のグルメ』巡礼ガイド」内の原作者インタビューを引用しよう。

「夫婦で営業してるんで、急にたくさんのお客さんが来ちゃうとさばききれない。なので、お客さんには看板メニューの釜めしは「2時間もかかりますよ」って言ったら、みんな「待ちます」っておとなしく待ってくれたらしい。しかも誰かが片付けを自分で始めたら、みんなが後に続いてやってくれたんだって。「もう涙が出るようだった」って言ってましたね」

まるっきり、お店の事情がよくわかっている「常連」としての振る舞いだ。

この理由についても、前述のインタビュー内で久住はこう語っている。

「シーズン3までやってその理由がやっとわかったんだけど、どうやら五郎が静かな客だかららしい。『孤独のグルメ』のファンは、井之頭五郎になりきって食べるから、みんな騒がないんだよね」

原作でもドラマでも、五郎は静かに食べる。3話でも、知恵の輪に挑戦したあと、同じ知恵の輪をやっている子供の一家が多少騒いでも、「知恵はがんばれば授かるものではない。少年よ。人生には解答がでないときもあるのだ」と声に出さずに応援したりする。

根底には原作の名台詞「モノを食べる時はね。誰にも邪魔されず、自由でなんというか、救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」(原作第12話「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」)があるのは間違いない。なので、邪魔をされたり、個人の自由が侵害されたとき、五郎は怒り、相手にアームロックを決める。「人生には…大嫌いなものを黙って食べなきゃならない時もある。だけど、人が嫌がるものを無理矢理食わせる権利は誰にもない」(原作「三鷹のお茶漬けの味」週刊SPA2011年7月5日号掲載)ということだ。

ライター情報

杉村啓

醤油と日本酒と料理漫画とその他諸々をこよなく愛するライター。なんでも超丁寧に解説します。近著に『白熱日本酒教室』(星海社)、『醤油手帖』(河出書房新社)ほか。

URL:醤油手帖

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