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「バケモノの子」細田守監督は、そんなに観客の理解力が信用できないんでしょうか

2015年7月18日 10時50分 ライター情報:多根清史

ファンタジーもボーイミーツガールも全部入り


さあさあ、よってらっしゃい見てらっしゃい。明るく楽しい冒険活劇だよー!
そう劇場の入り口で呼び込みしたくなるぐらい、細田守監督の劇場アニメ最新作『バケモノの子』は、堂々とした冒険活劇です。エンタメ度や作画のリッチさを数値化できるなら『天空の城ラピュタ』にも肩を並べるはず。チケットのお値段以上の満腹感を持ち帰れることは保証付き。
「バケモノの子」全国東宝系ロードショー中

両親が離婚して母とも死別した9歳の少年。無神経な親戚の手を逃れ、渋谷でバケモノの格闘家・熊徹と出会い、その背中を追ってバケモノ界に迷い込む。そこで熊徹に九太と名付けられ、奇妙な共同生活と親子のような関係が始まり……。ひとりぼっちの少年が「バケモノの子」になるあらすじには、理解につまずくところが一つもなし。

様々なお店や通行人、坂道だらけで起伏ある地形も、日本をギュッと詰め込んだような渋谷の街。そんなディテールまで描かれた箱庭から、まるで9と4/3番線ホームのように異空間に通じた路地を抜けると、そこはバケモノの棲む「渋天街」。
雑然とした中に活気も溢れスケール感ある渋天街は、昔の日本の懐かしさもありヨーロッパの街並みのようでもあり、久々の冒険アニメだなあ!という劇場大作の風格あり。『千と千尋の神隠し』の異形で賑わうワクワク感が再びです。

バケモノといっても「ケモノが服を着て歩いてる」程度で、お子様連れのご家族にも安心。熊徹に卵かけご飯を出されて、九太が生臭いと反抗するのも「異文化の中で暮らす疎外感」ではなく大人と現代っ子の世代差ぐらいのさじ加減。ちょっと田舎の親戚の家にホームステイする感覚ですね。
最近の漫画では避けられがちな修行を楽しめるひと時に仕上げているのも、細田アニメのスゴさ。師匠が弟子に技を「教える」のではなく「盗む」真髄を、熊徹と九太の動きのシンクロでコミカルに表現。それは我流で強くなった熊徹が「教える」ことの学ぶや、擬似親子関係の深まりでもあります。

やがて17歳に成長した九太は「2つの世界」を行ったり来たり、ボーイミーツガールもあります。人間の17歳なりに悩みも抱えつつ、「2つの世界」を繋いで揺るがす事件も起こります。まだ劇場に行ってない人は急げ!

「父親役」として信用されてない熊徹


細田守監督の前作『おおかみこどもの雨と雪』は「遺体(狼)が清掃車に回収」で妻が夫の死をダイナミックに乗り越えた一方でスペクタクル控えめでしたが、今回は映像の快楽に振り切った景気の良さです。

ライター情報

多根清史

1967生。『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)など。

URL:Twitter:@bigburn

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