朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)11月27日(金)放送。第9週「炭坑の光」第53話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:新田真三

53話は、こんな話


炭坑労働者たちが毎日楽しそうに石を掘るようになり、あさ(波瑠)は皆から感謝される。
苦労が報われたあさがつい眠ってしまっていると、その枕元に五代友厚(ディーン・フジオカ)が現れて・・・。

あかんふたり


「わてら同じですな。置いてけぼりのさみしい者同士や。」(新次郎/玉木宏)
はつ(宮崎あおい/さきの大は立)と新次郎が一瞬、心と手を触れ合わせるが、すぐさま新次郎は「あかん!」と言って川に落ちてしまう。
このときの「あかん」には、川に落ちる危険を感じた「あかん」と、はつと何かあったら「あかん」というダブルミーニングだろう。うまい。
その後、通りすがりのひとから夫婦に間違われ、ふたりは、もしも・・・を想像してしまう。
寂しさについつい揺れる気持ちを収めるように、お地蔵様にお参りするふたり。

目をつむって祈るはつを新次郎が横目で見るが、その後、お地蔵様にカットが切り替わる。新次郎がはつを見て何を思うか、はつは祈りに没頭したままなのか、それを視聴者の想像に委ねたところで、
〈その夜は 誰もが何か寂しさを抱えて それをそっと抱きしめて眠るような
そんな静かな夜でした〉(語り/杉浦圭子)
という突然叙情的な語りが入って、なんとも言えないムードをつくりだす。
あさと新次郎とはつの表情が映る前に、五代が映るのだが、五代も寂しさを抱えているひとりにカウントされているのだろうか。

五代は独身なのか


さて、五代。炭坑までやって来ちゃうとは。いったい何を考えているのか。

そして、どうしたって気になる、五代は独身なのか。
映画やドラマにもなっている「夫婦善哉」の織田作之助の書いた小説「五代友厚」(現代社/1956)を読んでみると、創作ものなので、こちらはこちらであさとはまた違う女性が登場していた(さすが織田作之助、冒頭からすいすい読ませるのだこれが)。
だが、五代の養子五代竜作が記した「友厚覚書」が掲載されていて、そこには、慶応3年に結婚し、後に故ありて離婚、明治3年、鹿児島から大阪に来た年に再婚したと書いてある。
「あさが来た」9週の最初は1873年──明治6年。史実だとすでに再婚しているはずなのだ。
「あさが来た」ではあくまで創作でいくつもりなのだろうか。


いずれにしても、あさ、新次郎、はつ、五代友厚、惣兵衛・・・と各々の微妙な関係性を、ディープに行き過ぎないふんわりした感じで、視聴者をドキドキさせながら回数を重ねていく構成は、月9などの連続恋愛ドラマを経験している大森美香の自家薬籠中の物だろう。
(木俣冬)

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