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オタク偏差値75以上のデル・トロ監督らしいこだわり「クリムゾン・ピーク」

2016年1月20日 18時40分
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ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんの対談。今回は映画『クリムゾン・ピーク』について語り合います。

昔ながらの、ゴシックホラー?


(C) Universal Pictures

藤田 『クリムゾン・ピーク』、『パシフィック・リム』で怪獣映画・ロボット映画という日本の十八番をハリウッド的に革新して度肝を抜いたデル・トロ監督の新作ですが、『パシフィック・リム』とは全然違いますね。

飯田 あらすじを言うと、勃興しつつあるアメリカ産業界でのしあがってきた父親を持つ小説家志望の女の子が主人公。でも社交界のリア充的な空気になじめない彼女は、やはり産業界から疎外されている落ちぶれたイケメン英国貴族の発明家と恋に落ち、そして彼が住む、俗世から隔絶された荘厳なお屋敷に……って昔の少女マンガの恋愛ものかハーレクイン・ロマンスかと。館もののゴシックホラーですね。しかもめっちゃベタな。デル・トロが撮ったアメコミアクションものの『ヘル・ボーイ』や『ブレイド2』ともまた全然違う。

藤田 本人も、昔ながらの王道を敢えてやっていると言っているので、意図的なんですが…… ベッタベタでしたね、本当に。おもちゃっぽい感じの映画でした。

飯田 あ、全身が真っ赤な人体が出てくるという意味では『ヘル・ボーイ』といっしょだけど……w

藤田 あの「ねるねるねるね」的な色味に対する偏愛はなんなんでしょうねw それはともかく、後半の館の造型などは、趣味が炸裂していて楽しかったですけどね。

飯田 もともと特殊メイク出身というのもあるんだろうけど、今回も館や服のビジュアルセンスはすごい。オタク偏差値75以上のデル・トロ先生らしいこだわりは端々に感じられますよ。今回のネタは館もののゴシックホラーだったと。

高慢と偏見とオバケ


藤田 一応、批評的なことを言うと、本作は、ジェイン・オースティン(少女ラブコメ)と、メアリ・シェリーと、コナン・ドイルという作家が言及されていますよね。
 ジェイン・オースティンって、今読んでも通用するラブコメですよ。『高慢と偏見』とか、都会から来た男を、「いけすかない!」って思っているお転婆娘が、だんだん惹かれていって、「最初に思っていたのと違った!=偏見と違った」っていう話ですからね。男の実像=嫌なやつか、誠実なやつか、の見え方が、自分の気持ちの揺れとともに変化して、本当はどうなのかわからないというのが、サスペンスの肝なわけです。
 セス・グレアム=スミスが、『高慢と偏見』をリメイクして『高慢と偏見とゾンビ』という作品を書いて、映画化もされてますが、本作は、いうなれば『高慢と偏見とオバケ』。
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