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「昭和元禄落語心中」2話。八雲と助六の過去編が始まった

2016年1月22日 09時50分 ライター情報:杉江松恋
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昭和の時代を背景に東京落語の魅力を描くアニメ「昭和元禄落語心中」、1/15に放映された第2回は〈八雲と助六〉篇の序だった。原作である雲田はるこ『昭和元禄落語心中』の第2巻前半までの部分である。
『昭和元禄落語心中2』雲田はるこ/講談社

前回のラスト、弟子の与太郎に聞かせる形で八代目・有楽亭八雲の語りが始まった。時代は一気に戦前へと遡り、昭和10年代まで戻る。ゆえあって七代目・有楽亭八雲の内弟子へと預けられた「坊」こと前座名・菊比古(のちの八代目八雲)と「信さん」こと前座名・初太郎(のちの有楽亭助六)は同日同刻に師匠宅の門をくぐり、弟子入りする。修業を開始した2人が数年後、初高座を踏むまでが第2話の流れである。

落語の世界では入門順が絶対


ここで大事なのは八雲宅の門前で菊比古と出くわした初太郎が、先んじて中に入って先に弟子入りした既成事実を作ろうとすることだ。落語の世界では年齢と無関係に一日一刻でも早く弟子入りしたほうが「兄さん」であり、その順列は出世の如何に関わらず一生続くからである。
この決まりはもちろん現在の落語界でも守られている。ただし、何をもって「入門」と見なすかは団体によって違うはずである。たとえば落語協会では、師匠に弟子入りをお願いして許可された日ではなく、協会に届けを提出した時点で落語家の見習いとして認められたものとされる。若手真打として人気のある春風亭一之輔は、師匠・一朝が機転を利かせてくれたおかげで得をしている。一朝は一之輔に、入門を認めたその足で協会事務所に伴い、履歴書を出させたのだ。

一之輔 (前略)うちの協会は履歴書を提出した時点で登録されるんです。だから履歴書を出した瞬間、パシーンと香盤(注:序列)が決まる。(中略)その(注:一之輔が提出した)三十分後に、僕の香盤ひとつ下の(三遊亭)ぬう生(現・彩大)さん、彼は僕より三ヵ月ぐらい先に入門してるんですよ。その日、(三遊亭)小田原丈(現・丈二)兄さんがずっと(三遊亭)圓丈師匠に小言言われてて、家を出るのが遅くなったから、僕より下になっちゃった(広瀬和生『「落語家」という生き方』講談社)。

前座は入場料の内に入らない存在


菊比古と初太郎は入門してから前座として初高座を勤めるまで数年が経っているが、それだけの時間がかかる例は実際には少ないはずで、皆いくつも噺を憶えていない、本当の卵のような状態で寄席に出ることになる。だからこそ「前座は入場料の内に入らない」などといわれて、名前を書いた「めくり」なども準備してもらえないのである。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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