主に問題となっているのは、両作に共通している"国家による無作為に選ばれた国民の殺害"という設定。『生活維持省』がこれをオチで明かしているのに対し、『イキガミ』では死亡を予告された人間のドラマに焦点を当てているという違いはあるのだが、確かに物語の根幹となっている設定が酷似していることは間違いない。この問題について、自身のHPでも詳細な検証を行っているミステリ作家の藤岡真氏は次のように語る。
「この2つの作品は、基本的にまったく似ていません。『生活維持省』は美しく平和な生活を維持するために国家が国民を間引いて人口を減らしているという話で、一方の『イキガミ』は星新一公式HPに掲載されている小学館の公式見解にもありますが、"余命24時間と宣告された若者が、死と向き合ってどう生きるのか"というドラマを描くものです。これって、いわゆるお涙頂戴の"難病モノ"と同じなんですよ。
ちなみに前述した小学館の公式見解によれば、『イキガミ』の作者・担当編集者共に、最近になるまで『生活維持省』を読んだことがないと主張し、似ているのはすべて偶然であるとしている。
しかし──と藤岡氏は続ける。
「『イキガミ』に著作権侵害が成立するかといえば、これはしないだろうと思います。物語のアイデアや設定は、基本的に著作権で保護されるものではないからです。ただ、こうした態度は星新一が残した素晴らしい小説を冒涜していると思うし、またオリジナルを超えるものを描く自信がなければ、同じような設定を使うべきじゃないと考えます」
星新一氏の次女で星作品の著作権を管理している星マリナ氏も、HPで「納得はできないが、これ以上の抗議はしない」と表明していることなどから、この問題もこのまま沈静化していくと思われる......。
(橋富政彦/「サイゾー」11月号より)
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