流通大手のそごうやマイカルなど、昔であれば「まさか!」と思われた大企業が、いまや当たり前に経営破綻する時代。だが、企業にとっては「死」を意味すると思われがちな「倒産」という憂き目に遭った企業が、今も営業しているのはなぜなのか? 復活する企業と死ぬ企業の境界線とは?
今年6月、ネットカフェ大手のアプレシオが民事再生法の適用を申請し、メディアでは「倒産」と報じられた。
そもそも、「倒産」という言葉は厳密な法的用語ではなく、一般的には企業の経営が行き詰まり、債務を弁済できなくなる状態を指していう。「倒産」に伴う手続きは、会社を存続させずに潰してしまう「清算型」と、復活を目指す「再建型」の大きく2通りに分けることができる。
清算型の代表が「破産」である。
一方、再建型の代表が「会社更生法」や「民事再生法」と呼ばれる手続きだ。まだ会社に「望みがある」場合、潰してしまって残りのわずかな財産を分配するよりも、存続させて徐々に復活させたほうが、経営者はもちろん、債権者や従業員にとってもメリットは大きい。その場合、
債務弁済の猶予や一部免除により、時間をかけて再生が図られるのである。
「望みがある」のかどうかを判断するのは裁判所だ。いくら経営者が「うちの会社はまだ立ち直れます!」と、計画書を添えて会社更生法(または民事再生法)の適用を申請しても、裁判所が「もうおたくの会社は無理だね」と判断すれば、更生法は適用されずに会社は解散するしかない。
「会社更生法」と「民事再生法」とでは従来の経営陣が引き続き会社に残れるか、あるいは裁判所が選任した管財人に追い出されてすべての権限を失うかなど違いは多数あるが、ここではその専門的な差異には深く触れない。どちらも「再建型」の手続きで、倒産後も会社が存続できる合法的な手段である点を知っておきたい。
ところで、会社更生法(または民事再生法)の適用が裁判所に認められたからといって、当然ながらそれがすなわち再建の成功を意味するわけでない。破産例として挙げた「フットワークエクスプレス北海道」は、破産申請をする前の01年に、「民事再生法」の適用を申請して、それが認められている。
リストラ、解任、自殺......。会社更生の裏のドラマ
これまで多くの企業が復活をかけて申請してきた会社更生法(民事再生法)。その実例をいくつかみてみよう。
年間売り上げ1,700億円(09年2月期決算)の牛丼チェーン「吉野家」は、80年に115億円の負債を抱えて倒産している。
資産もなく、キャッシュフローも極度に不足し、大部分の店舗は賃貸で担保もない......。
裁判所から選任された管財人らは、不採算店舗を閉鎖し、肉やタレの味を改善、コストを徹底的に削減するなど、倒産原因の除去に地道に取り組んでいく。あまりに絶望視されていたため、あきらめきった債権者が債務弁済を放置気味にして猶予してくれたことは幸いだった。そのうえで、店頭に「裁判所の保全命令により営業継続。一層のご支援を」と開き直ったポスターを貼り、苦しい中であえて値下げキャンペーンを1週間実施したところ大反響。客数にして32%増加し、期間中だけで3億円近くを売り上げた。
そして83年、最終的にセゾングループが全面支援を決定。スポンサーによる資本注入で再建のめどが完全に立った吉野家は、その後も順調に債務を弁済し、7年間ですべての弁済を完了。会社更生法により本格的な再建を成功させた典型的な事例として、吉野家の再生物語は今も語り草になっている。
(続きは「サイゾー」8月号で/文=浮島さとし)
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