東京・小金井市で、過去にアイドル活動の経験もあったシンガーソングライターの女子大生が、想いをこじらせたファンの男に刺され、一時重体となった事件は記憶に新しいが、中国でも女性アイドルがファンに殺されるという惨事が起きた。

「光明網」(6月15日付)によると、安徽省淮北市のビジネスホテルで、女性の遺体が発見された。

女性は刃物でメッタ刺しにされており、その傷は全身19カ所に及んでいたという。

 警察の捜査により、被害女性は22歳の教師であることが判明。さらに、ホテル内の防犯カメラの映像から、この部屋に宿泊していた19歳の少年を容疑者として割り出し、身柄を拘束した。

 その後の取り調べで、2人の意外な関係性が明らかになった。少年の供述によると、被害女性は教鞭を執る傍ら、ネットアイドルとして活躍していたというのだ。ネットアイドルといっても、ライブストリーミングで歌を歌ったり、チャットでファンらと交流する、いわゆる“生主”というやつである。
ちなみに中国の女性生主の実態については、これまでにもお伝えしてきた。

 被害女性は、美しい歌声や明るい性格で、多くのファンを獲得していたという。犯人の少年も、彼女の熱狂的ファンのひとりであった。

 少年はこれまで、被害女性にオンラインで多額の経済的援助を行ってきたという。そんなある日、少年が「実際に会おう」と提案したところ、被害女性が同意。対面が実現した。


 2人は会うとすぐに意気投合し、親密な関係になっていった……と、少年は思っていた。しかし数日後、被害女性は少年に対し、“サービス料”として1,300元(約2万1,000円)を要求。これに少年が憤慨し、刃物で被害女性を殺害したようだ。

 中国の社会問題に詳しいフリーライターの吉井透氏は、今回の事件の背景に、当局による生配信規制があると指摘する。

 中国文化部は4月、「胸部の露出は上3分の1まで」「腹部の露出はヘソ下2センチまで」という規制を打ち出している。こうした中、「お色気で稼げなくなった女性生主らが、ファンに売春を持ちかけるケースが増えている」(吉井氏)というのだ。


 オンラインでの収益が下火となる中、オフラインで稼ごうとする生主が増加するのは、自然な流れといえる。しかし、「ファンは生主に歪んだ恋愛感情や憧れを抱いているケースも多く、トラブルになることが多いんです」(同)という。

 今年4月には、ネットアイドルとして動画配信などをしていた女性がファンの男性と会ったところ、薬物を飲まされ、性的暴行を受ける事件も発生している(鳳凰網4月13日付)。

 日本でも、アイドルとファンの間でさまざまなトラブルが起きる中、両者の距離が議論されているが、これ以上ないほどファンと密着した中国のアイドル稼業は、まさに命懸けだ。