企業規模が小さな会社の場合、すべての意思決定は社長が行う「ワンマン経営」になりがちだ。しかし働いている人にしてみれば、色々と不満がたまっているかもしれない。

言うに言えない思いを、間に立ってうまくさばいてくれる人がいればありがたい。


6月28日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)では、そんな珍しい光景が見られた。群馬・昭和村にある従業員15人のこんにゃく工場の二代目社長(53歳)は、「工場のあちこちで作業の流れが停滞する」という悩みを持っていた。(ライター:okei)


■無用の大型機械が作業場を占領「新しもの好きなんで」



そこで社長は改善のため、群馬県の「改善インストラクター」にコンサルティングを要請した。同県は大手企業出身者の経験やノウハウを中小企業の業務改善に生かすべく、インストラクターを養成して派遣している。


派遣されたのは、去年自動車部品の大手メーカー「サンデン」を定年退職した古澤秀明さんと、自動車のベアリングをつくる大手メーカー「日本精工」出身の山越志郎さん。

山越さんは工場内で、早々に問題点を発見する。


作業場にはいくつもの大型機械が陣取り、作業の邪魔になっていた。2メートル四方はあろうかというレトルト用殺菌機(2000万円)や、自動包装機(600万円)など、試作品開発のために数回使った程度の機械を前に、社長は照れ笑いをしながらこう言い訳していた。


「新しいものが好きなんで、機械を先に買っちゃう。(社員からは)『これ、いつ使うんですか?』とよく言われます」


低い位置で座って行う作業にもダメ出しが。材料が入ったカゴを膝に乗せ、かがみ込むように加工機械に入れている。

「大変だよね。低すぎる」という古澤さんの指摘に、社長も「いちいち腰を曲げて入れてる。足を動かせないから腰に来るよね」と賛同していた。


その声を背中で聞いている、作業中の従業員たち。淡々と作業しながら「分かってるなら、社長がなんとかしてよ!」とイライラしていたかもしれない。


■社長の表情は、みるみるこわばっていくが…


改善インストラクターの2人は、社長になかなか直接意見が言えない従業員のために、話を聞いてもらう場を設けた。

古澤さんが社員たちを諭すようにこう促す。


「『社長、ここが大変なんです』と話すことで、社長が気付かなかった、実際に作業をしている人の状況を社長が深く理解できるんです」


事前に従業員から聞き取った「改善リスト」をプロジェクターで表示。部署間のコミュニケーション問題や作業負担への不満、機器の不調まで、びっしりと意見が並んでいる。噴出する多種多様のホンネは、まるで「不満リスト」だ。


「事務受付が製品在庫数を知らない」
「外部問い合わせの連絡を製造現場へ伝えづらい」
「こんにゃく枠の角がめくれ、指を切りそうになる」
「新しいんこんにゃく枠は7キロで重い」


社長の表情は、みるみるこわばっていく。これまでなら、その程度は我慢しろと言ってきたのかもしれないが、従業員たちはここぞとばかり「一人だと無理です」「気を付けていても切ってしまう」などと口々に言い募った。

長年ワンマン社長が引っ張ってきた会社が、ついに変貌していく瞬間だった。


■「社員に参加してもらって、変えていくことが一番」


その後行われた作業場のレイアウト変更では、従業員の声を聞きながら社長自ら率先して動いていた。女性社員は社長に向かい、使っていない機械を「もっと向こうにいかないかな」と遠慮なく言っていて小気味いい。社長はこれを素直に受け止め、心情をこう明かす。


「こうしてみんなに参加してもらって、変えていくことが一番の今回のキモ」


結局、「作業の流れが停滞する」原因は、現場に耳を傾けない社長だったといえるのかもしれない。会社は人で動くのだから、働く人の声で問題点を考えることが大切だ。

今回は大手のノウハウというより、「間に人が入ったこと」でコミュニケーションがうまく回った例のように見えた。(ライター:okei)


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