2014年1月、鹿児島県姶良市の介護老人保健施設「青雲荘」を利用していた当時80歳の男性が、パンをのどに詰まらせ意識不明になる事故があった。男性とその家族は「男性は飲み込む力が弱っていた。

事故は予見できたはずだ」と施設側を訴えていたが、3月28日、鹿児島地裁で判決が下された。南日本放送が報じた。


その内容は、「パンをそのまま提供した施設側に責任がある。小さくちぎって提供する義務があった」と施設の過失を指摘し、約4000万円の支払いを命じるものだった。


■介護に詳しい弁護士は「今後こうした訴訟は増えるのではないか」と予想



この判決に対し、ネットでは疑問の声が出ている。自身も老健施設で働く管理栄養士は



「介護施設の食事は全員ペースト食で、食事中は厳重な監視と介助のもとで行えと??咀嚼しなくなると認知症進行を早めて結果誤嚥のリスク上がりますけどね!」


とツイート。

他にも、「そもそもただでさえ1人に付きっ切りはスタッフの数的に無理だし、パンが食べれるレベルの人に付いてパンちぎってずっと見てるのは無理だから…」といった声が介護や看護に関わる人から出ていた。


一方で、



「介護の仕事を少しでもかじっていれば機能低下してる利用者にはパンを小さくちぎって出すわ。利用者の状況に合わせてオカズを小さくしたりお粥にしたりっていうのはこの世界では常識」
「嚥下障害があるのなら、食事に配慮が必要だったな 妥当な判決」


と、判決を支持する声もあるが、「4000万円は高すぎる」と金額の大きさに首をかしげる人も多い。


介護・福祉に詳しい外岡潤弁護士はキャリコネニュースの取材に対し、金額が高騰した理由をこう分析する。



「高額になったのは、被害者が80歳とまだ若いこと、存命であることの2つが考えられます。この方は現在も意識不明ですが、このまま平均余命まで生きる前提で入院費用などを算出したのだと思います。

通常の誤嚥による死亡事故でも慰謝料は2000万円前後ですから、ここまで高いものは初めて目にしました。今後こうした事故や訴訟は増えるのではないでしょうか」


また、今回の判決を受けて



「判決文を読んでいないので詳しいことは言えませんが、現場がどこまで対応すべきなのか基準を設けないと、リスクが高い人の受け入れを拒否したり、責任を負わない契約を結んだりする施設が出てきてもおかしくありません」


と、今後の介護の在り方を危惧していた。


■施設側は判決文が届き次第控訴を検討


一方で、訴えを起こされた青雲荘は「判決文が届いていないので詳細はコメントできないが、我々の思いが全く通じなかったのは非常に残念」と語った。



「利用者の方の中には、食べ物を丸飲みする人、飲み込む前に自らどんどん口に入れてしまう人がいます。こうした人の場合はどれだけ小さくちぎってもだめです。誤嚥や窒息の防ぎようがありません」


さらに事故の訴えそのものについても



「そもそも窒息したのは食事中ではなく、食後1時間経過後とされています。

新聞では、のどに5センチほどのパンが詰まっていたと報道されていますが、そんな大きなものが詰まっている人が、1時間の間、入れ歯を洗浄したり話したりなどできるでしょうか」


と、話していた。判決文が手元に届き次第内容を確認し、場合によっては控訴するとのことだった。今後の動向に注目したい。