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イチローが一昨年まで長く履いていたアシックスでも、米球界で幅を利かせるナイキでもない。彼のスパイクの側面を飾るのは、アルファベットのBを横に寝かせたようなキャラクターライン…。
まず飛びついたのはジェフリー・ローリア球団オーナーをはじめとするフロント上層部だった。米球界のレジェンドであるイチローが選んだ未知のブランドに興味を持った彼らは、メーカーにかけ合って昨年夏、マーリンズカラーのランニングシューズを特注。届いた靴をオフィスでの日常業務の中で履き始めた。
やがてこのブームは、マーリンズ選手の間にも広がる。
最終的には40人の選手が、合計55足を入手した。もちろん、彼らのほとんどは他メーカーとのシューズ契約がある。にもかかわらず、室内トレーニング場や自宅などで履くために欲しがったのだ。メーカー契約のない選手の中には、スパイクまでオーダーした者もいるという。
この謎のブランド、名を「ビモロ」という。
耳慣れない響きだが、正真正銘の日本メーカーである。運営しているのは、鳥取県鳥取市に本拠を置く「ワールドウィングエンタープライズ」。
スポーツに詳しい読者ならピンときたかもしれない。従来の肉体の動かし方の定説を覆(くつがえ)す「初動負荷理論」を唱え、その理論に基づいたトレーニングでイチローをはじめ、内川聖一(ソフトバンク)、山本昌(元中日)、三浦知良(横浜FC)、藤田俊哉(元磐田)、青木功(ゴルフ)、伊東浩司(元陸上短距離)、杉山愛(元プロテニス)ら、そうそうたるアスリートの体づくりと動きづくりを担当してきた小山裕史(やすし)氏が代表を務める、トレーニング施設と研究施設を併せ持つ企業だ。
つまり小山氏が、自身が確立した初動負荷理論に基づき、シューズ作りにまで取り組んだ結果、生まれたブランドがビモロなのである。この名前は、初動負荷理論の英語名「Beginning Movement Load Theory」の頭文字を組み合わせてつけられた。
ブランド誕生のいきさつを、小山氏が語る。
「私は約30年前から、師であり、兄貴分でもある元マラソン日本代表の宗茂(そう・しげる)、猛(たけし)兄弟とのトレーニングを始めたのですが、2000年代に入ったある日、彼らから受けた相談がきっかけでした。
『極限まで鍛え抜いているはずのトップランナーでさえ、履いているシューズのせいで故障することがあまりに多いんです。しかしそれをメーカーに訴えても、彼らにはその当事者意識がないのか、まるで聞く耳を持ってくれない。陸上選手の足や体に負担をかけず、パフォーマンスを最大限に発揮させるシューズを、なんとか作れませんか』と。
実は宗兄弟と出会った当初から、私なりのシューズに対する基本アイデアがあり、それを彼らに話していたのを覚えていてくれたのです。
●この続き、記事全文は発売中の『週刊プレイボーイ』15号でお読みいただけます。
■週刊プレイボーイ15号(3月28日発売)「謎のイチロー愛用シューズ『ビモロ』の実力」より