インドの中央部マディヤ・プラデーシュ州に暮らす13歳のマヘンドラ・アーリワー君(Mahendra Ahirwar)は筋力・筋緊張が低下し寝ていても頭が持ち上がらない「先天性ミオパチー(筋原性疾患)」という難病によって、生後6か月で首がぐにゃりと曲がり始めた。3歳にして首が180度近く曲がってしまい立つことさえできなかった彼は、今年2月に行われた手術により新しい人生を手に入れた。
英メディア『dailymail.co.uk』などが伝えている。

首が曲がったままのマヘンドラ君のニュースが世界を駆け抜けたのは、昨年4月のこと。学校にも通えず悲しい目で床を見つめるマヘンドラ君を見て「自分の息子を重ねてしまい、いてもたってもいられなくなった」と語るのは、6500キロも離れたイングランド北西部マージーサイド州リヴァプールの高校でキャリア・コーディネーターとして働くジュリー・ジョーンズさん(Julie Jones、35)だ。2児の母でもあるジョリーさんはマヘンドラ君の治療のためとクラウドファンディングを立ち上げて募金を呼びかけた。

この呼びかけに応え、世界各国から集まった善意の募金は1万2000ポンド(約150万円)にも上ったという。そしてジュリーさんからの思いもかけないプレゼントに一番驚いたのはマヘンドラ君の両親だった。


家族はマヘンドラ君のためにありとあらゆる医師を訪ねたものの病名さえもわからない状態で、手術の2年前には治療をあきらめていた。マヘンドラ君の母親スミトラーさん(36)は当時を振り返りこう語っている。

「部屋の隅に座り、何もできないでいるマヘンドラを見るのは本当につらかった。いっそのこと死んだほうが楽になるのではとさえ思っていました。立つことすらできず、誰かの世話にならないと食べることもトイレに行くこともできない。あの子が成長したら誰が世話をするんだろうって悲観してばかりでした。
友達にも無視され、あの子に明るい未来などなかったのです。」

しかしインドでも、マヘンドラ君の周囲は騒がしくなっていった。ニューデリーのアポロ病院で働く脊椎外科医ラジャゴパラン・クリシュナン氏(Rajagopalan Krishnan)が、マヘンドラ君の手術を無償で行うと名乗りを上げたのだ。クリシュナン氏はイギリスの国営医療サービス機関で15年間働いたという経歴がある。

「マヘンドラ君を初めて見た時、なぜ12年間も適切な処置がされなかったのだろうと悲しくなりました。でも手術によって彼は人生を取り戻し、世界をまっすぐ見つめることができると確信したのです」とクリシュナン氏は手術前にメディアのインタビューに答えている。

こうしてたくさんの人々の善意やサポートによりマヘンドラ君への手術は今年2月に無事執り行われた。
クリシュナン氏率いるチームはマヘンドラ君の首前部からメスを入れて頚椎部分を開き、頚椎椎間板を取り除いて骨盤から取った骨を移植、金属プレートを入れて首がまっすぐ留まるように固定した。

マヘンドラ君の首は手術から7か月経ってもまっすぐに保たれており、今では11歳と14歳の姉弟と一緒に公立小学校に通うことができるまでになっている。

クリシュナン氏は「頭頸接合部が安定すれば、これ以上のことはありません。3か月ごとの定期検査はもちろん、再び手術をする必要性もでてきますが、今までの12年間と比べたら雲泥の差ですよ。彼はとても外交的になり活動の場を広げています。彼だけでなく家族の幸せそうな顔を見ることができて本当に嬉しく思います」と述べている。


父親のムケシュさんは「首が曲がっていた頃のマヘンドラはシャイで言葉数も少なかった。しかし手術後は人が変わったように明るくなりました。奇跡が起こったのです。この変化を一番喜んでいるのはマヘンドラ自身です。今までは行きたくても行けなかった学校でしたが、彼にはきちんとした教育を受けさせたいと思っています」と未来を見つめる。

マヘンドラ君は、学校で友達と共に文字を書くことを学んでいる。
マヘンドラ君の叶わなかった夢はひとつひとつ現実となり、その夢は広がる一方だ。

出典:http://www.dailymail.co.uk
(TechinsightJapan編集部 A.C.)