◆ダメ人間を描く繊細なユーモア
エマニュエル・ボーヴの新しい翻訳が出た。これまでに3冊、ボーヴの小説は訳されてきたが、今度もやっぱりダメな人間を描いていて期待通り!
主人公のニコラは23歳、無職。
ニコラは誰かれともなく金を無心し、踏み倒す。浪費癖は抜けず、追いつめられ就職するが、適応できず出社拒否に陥る。そして破滅へと向かっていく。
まあ、救いのない話。陰鬱(いんうつ)になる。だがこの人の小説には、じつに繊細な細部がある。ちょっと他の人には書けないような、ユーモアに溢(あふ)れたディテールの輝きがあるのだ。
一読、社会参加なんて言葉とは縁がなさそうな小説だが、じつはそうではない。たとえば移民政策の変動にボーヴ自身、影響を受けているし、それが小説に影を落としてもいる。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2010年6月2日
【書誌情報】
のけ者著者:エマニュエル・ボーヴ
翻訳:渋谷 豊
出版社:白水社
装丁:単行本(314ページ)
発売日:2010-05-01
ISBN-10:4560080674
ISBN-13:978-4560080672