のぞみ自由席「4人で6席占有」の現場も……個人のモラルや暗黙のマナーに頼る新幹線ルールの限界
東海道・山陽新幹線。最近は繁忙期だけでなく、通常期も混雑することが多い(筆者撮影)
鉄道マナーが、いま物議をかもしている。少し前までは外国人旅行者のマナーの悪さが頻繁に話題になっていたが、最近ではそれとは別に、日本人の乗客を巡る個別の事例がたびたびSNS上で取り沙汰されるようになってきた。


■「のぞみ」2両のみの自由席に子連れが……
新幹線の「座席」マナーは、お盆や年末年始などの繁忙期になるとたびたび話題になる。

筆者が遭遇したのは、8月のある週末のことだ。東海道新幹線「のぞみ」の自由席に新大阪駅から乗車したところ、母親1人と子ども3人が、3人掛けシート2列分、合計6席を使用していた。片方の座席を回転させ、座席と座席の間にはベビーカーを畳むことなく置きっぱなしにしている。降車する際も、座席を元に戻す様子はなかった。

のぞみの自由席は現在、1号車・2号車の2両しかない。この列車は始発の新大阪でほぼ満席となり、次の京都駅では満席に、さらに次の新横浜駅までデッキで2時間立ちっぱなしの乗客やスーツケースを手に通路で立ち往生する外国人旅行者もいた。

そうした状況でも座席を譲り合う空気は生まれなかった。車掌が巡回する様子はあったが、特に声をかけている様子もない。子どもたちの声は静かな車内に響きわたっていたが、混雑した車内ではたびたび見かける光景の1つではある。

■「それってアリ?」ビジネス客向け車両にも子連れ客
のぞみ自由席「4人で6席占有」の現場も……個人のモラルや暗黙のマナーに頼る新幹線ルールの限界
「S Work車両」の案内シート。ビジネスパーソン向けと明記されている(筆者撮影)
新大阪~東京間の往路で自由席で懲りた筆者、復路では追加料金1050円で、のぞみ7号車の「S Work車両」を確保した。この車両は、JR東海が「ビジネスという同じ目的で利用する乗客同士が、気兼ねなく仕事を進められることを想定した車両」としており、筆者は以前からよく利用している。


ところが、だ。東京駅で乗車した筆者の近くに、ベビーカーを押す若い親子連れが乗ってきた。座席間(B席にあたる場所)にパーテーションがある「S Work Pシート」のA席とC席にそれぞれ座り、子どもを乗せたままのベビーカーを前後の座席間に畳むことなくはめ込んで固定。小さな子どもの声は、子連れの移動では珍しいことではないが、通常車両とは異なる「S Work車両」の静かな車内では、その声がいつも以上に響いていた。「S Work車両」はWebミーティングや携帯電話の通話は座席でも利用可能だが、乗客同士の歓談は控えるよう注意書きがある。

一方で「S Work車両」には子ども料金も設定されていて、以前は「1名のみ」「EX(エクスプレス予約、スマートEXなど)限定」といった予約制限があったが、現在はみどりの窓口や自動券売機でも購入可能だ。とはいえ、JR東海も明らかにビジネス目的ではない子連れ利用は想定していなかったのだろう。

■自由席切符で「グランクラス」車両へ立ち入り物議に
8月2日にも、「長岡花火」帰りの客で混み合う東京行き上越新幹線での出来事がSNSに投稿され、物議をかもした。

満席状態で自由席に座ることができなかった乗客が、グリーン車やグランクラスと呼ばれる特別車両に立ち入ったのだろう。本来、指定席の通路やデッキに立った状態で乗車する場合でも別途「グリーン券」などが必要で、自由席切符のみでは不正乗車にあたる。追加料金を支払ってグリーン車を予約した乗客にしてみれば、こうしたルール違反は気持ちのいいものではない。

■「暗黙のルール」が通用しない時代の鉄道マナー
のぞみ自由席「4人で6席占有」の現場も……個人のモラルや暗黙のマナーに頼る新幹線ルールの限界
新幹線の指定席も、利用する時間帯によっては混雑している(筆者撮影)
公共交通機関は、老若男女を問わず、また日本在住者だけでなく外国人旅行者の利用も大きく増えている。
不特定多数が利用する場になった今、「周囲を見て察する」「察してもらう」といった暗黙のルールは、もはや前提として機能しなくなっている。

複数座席を占有する親子連れ、ベビーカーを畳まず通路をふさぐ乗客、自由席切符でグリーン車やグランクラスへ立ち入る乗客——今回取り上げた事例に共通するのは、いずれも「自分だけは大丈夫」「今回に限ってはいいだろう」という、ごく個人的な判断の積み重ねだという点だ。

一つひとつは小さな選択でも、それが積み重なれば車内の空気は確実に悪くなる。鉄道会社側が具体的なルールとして明文化し、周知・徹底することとともに、利用者自身も自分の行動を振り返ってみる必要があるのではないだろうか。

この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。

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