■「罪と業を描く」物語かつ「イヤミス」の魅力も
そんな『映画ちいかわ』はかわいらしい見た目に反して「怖い」「実は大人向けでは?」という感想も多く届いています。
実際に本作と似ている大人向けの作品をあげる意見も多く、特に「罪と業を描く」物語からは先日に訃報が報じられた東野圭吾の小説や、「イヤミス(読後に良い意味で嫌な気持ちになるミステリー)」の第一人者である湊かなえの作品を挙げる声も多くありました。
ここでは、『映画ちいかわ』に打ちのめされた人におすすめしたい、似ている要素がはっきりとある8作品を、映画作品から厳選してテンポよく挙げてみます。ダークな大人向けの作品を多く挙げていますが、最後の2作はお子さんと一緒に見られますので、ぜひ参考にしてみてください。
■1:『容疑者Xの献身』(2008年)
東野圭吾の代表作の映画化作品で、孤独な天才数学者が殺人を犯した隣人の女性を守ろうとする、狂気的なまでの愛情が描かれています。終盤の展開は『映画ちいかわ』の犯人および主人公・ちいかわの「選択」と重なる(あるいは相対する)ところもありました。
■2:『告白』(2010年)
湊かなえのベストセラーの映画化作品で、女性教師が娘の死に関わった生徒たちへ「静かな復讐」を始めていく物語です。登場人物それぞれの業と罪が描かれていることはもとより、「罪を犯しても裁かれずにいた」恐ろしさと、加害者側の心理が克明に示されていることが『映画ちいかわ』と似ています。
■3:『砂の器』(1974年)
松本清張の小説を原作とした、殺人事件の犯人の悲しい過去と、ある親子の運命が明らかになっていく物語です。『映画ちいかわ』と大きく共通するのは、終盤での真相の解明が「ずっとセリフなしで進行していく」演出で、「劇中で真相を追い求める側(刑事またはちいかわ)が知らない」「でも映画を見ている観客だけが知っている」からこそ、より感情を揺さぶられるでしょう。
■4:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023年)
『映画ちいかわ』から『犬神家の一族』『獄門島』などの横溝正史作品をあげる声も多く、それらと「恐ろしい因習のある場所での殺人事件を追う」共通点のある本作もよく引き合いに出されていました。犯人が「加害者でありながらも被害者でもあった」悲劇性と、それでも主人公が「正しい選択」をしようとする心理も『映画ちいかわ』と一致しています。
■5:『シンプル・アクシデント/偶然』(2026年)
2025年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した、イランを舞台にしたサスペンスです。「自分を拷問した看守を見つけて生き埋めにしようとする」発端は恐ろしい一方でダークなユーモアもまぶされていました。「疑わしき者を罰するのか?」という心理、そして究極の選択など、『映画ちいかわ』とほぼ同じテーマを扱っていると言っていい内容です。
■6:『温泉シャーク』(2024年)
『映画ちいかわ』は脅威的な存在の弱点を探り作戦を立てて倒そうとする「王道の怪獣映画」的な展開があり、こちらの「日本製のB級サメ映画ですけど何か?」な『温泉シャーク』もその魅力があるため本当におすすめできます。また、『映画ちいかわ』の「島二郎」は正体がよく分からないけど圧倒的なパワーで助けてくれるのですが、その印象は『温泉シャーク』における「マッチョ」という謎すぎるキャラとかなり似ていました。
■7:『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(2019年)
「すみっコ」たちが不思議な絵本の世界に入り込み、元の世界へ帰る方法を探しながら「ひよこ」との交流をしていく物語で、『映画ちいかわ』とは「孤独」や「居場所」にまつわる感情はもとより、前述した『砂の器』にも共通する「セリフなしのクライマックス」が用意されていることも一致していました。
■8:『映画 キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』(2025年)
『映画ちいかわ』とは「島が舞台」であることと、特定のキャラクターが「長い時を過ごす」真実が物語に深く関わるという共通点があります。脚本を手がけたのは『鬼太郎誕生ゲゲゲの謎』の吉野弘幸であり、悲劇性が強いそちらを「反転」させたようなクライマックスに涙を禁じ得ませんでした。
■ほかにも、似ている作品は?
ほかにも『映画ちいかわ』からは、歓迎された明るく見える場所で恐ろしい目に合う様から映画『ミッドサマー』、楽曲「今日の日はさようなら」を“異化効果”的な使い方をしていることから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、業と罪をダークファンタジーとして描く様からアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』、人魚を食べて不老不死となった八百比丘尼の姿を追う漫画『火の鳥 異形編』も、この『映画ちいかわ』から連想しました。
■これから公開される東野圭吾原作の映画も
また、これから公開される大推薦したい映画に、9月4日に公開される『白鳥とコウモリ』があります。こちらも東野圭吾の同名小説の映画化作品で、「殺人事件の容疑者の息子と被害者の娘がバディを組む」奇妙でキャッチーな発端から、複雑で深遠な業と罪の物語へ誘われる物語は、前述した『容疑者Xの献身』以上に『映画ちいかわ』を強く連想させました。さらに、9月18日からは『八つ墓村』も公開。
■やはり、子どもにこそ見てほしい理由は
前述したように『映画ちいかわ』は「実は大人向けでは?」という声があり、ここでも大人向けの作品を多く挙げましたが、個人的には本作は「ダークな物語に触れるきっかけになる」「主人公が『何が正しいのか』を考え続ける物語である」ことなどから、むしろ教育的にも良く、子どもにこそ見てほしい作品と思えました。
その上で、上記の「ちょっぴり怖い」「勧善懲悪ではない物語」の作品にも、ぜひ触れてみてほしいです。
この記事の執筆者: ヒナタカ
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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