■体育会系一家なので
「うちは体育会系の家族なんですよ」
そう言って笑うエリさん(46歳)。夫はもと高校球児、高校生になった長男も野球漬け、中学生の次男はサッカーに夢中なのだという。エリさん自身、バレーボールやバスケに打ち込んだ学生生活を送ってきた。
「必然的というべきか、私と子どもたちの私服はTシャツにジーンズ。1年中変わりません。冬はTシャツの上にパーカー、もっと寒くなったらダウンを羽織る。みんな同じかっこうをしているんですよ」
職場ではパンツスーツのエリさんだが、「困るのが、ちょっとした会合のとき」だという。
仕事がらみならパンツスーツでかまわないが、私的に付き合いのある人の「パーティーというほど公式なものではない、プライベートな会合」に何を着ていくか、それを考えると頭が痛くなるという。
Tシャツとジーンズというわけにはいかないが、パンツスーツだと堅すぎる。そういうときはパンツに別のジャケットを合わせていくが、「そんな堅い服で来なくても」と言われることもあるという。
■独特すぎる夫のファッションセンス
一方、夫は私服では「独自のおしゃれ」を楽しんでいるようだ。やたらとピカピカ光るシャツや、わけの分からないメッセージ入りのTシャツ、ド派手なパンツなど、およそ堅苦しい企業に勤めているとは思えないセンスなのだという。
「まあ、でも私服なんだから何を着てもかまわないですよね。人それぞれ好きなものは違う。そう思って放置してきたんです」
エリさんの母が喜寿を迎えたのが今年の始め。きょうだいがそれぞれ家族を連れて母の元へ集まった。
「私は兄と弟がいて、兄のところは息子3人、弟のところは娘3人がいるんです。なんだか子どもの編成が偏っているんですよね、うちの家系。両親含め、総勢16人が中華料理屋に集いました」
それはそれはにぎやかな会だったという。
■「おじさん、ダッサいー」
その場で、兄や弟の子どもたちからいっせいに「おじさん、ダッサいー」「奇妙すぎる」と笑われたのが夫のファッションだった。
「夫としてはその日は気合を入れてキメてきたつもりだった。年代ものの革ジャンの下はパッチワークのような色とりどりの布を合わせた長袖パーカー。私だって『どこに行けばこういうのを売ってるの?』と思うくらいド派手な色の取り合わせ。
しかも革ジャンには、わけの分からない女の子のキャラクターの刺しゅうだかアップリケだかがあって。
ダサいと言われた夫は苦笑いしているだけだったが、それから数日後、エリさんは近所の人から呼び止められた。
「お宅のご主人、ミュージシャン? って。その方、越してきたばかりで、『うちの子たちが怖がっている』と。それにはちょっとカチンときましたね。うちの夫が何かご迷惑をかけましたかと逆に尋ねてしまいました。毎朝、普通にスーツを着て出勤しているのに。
休日くらい好きなかっこうで出かけてもいいだろうと思いました。『変わったファッションセンスをしているからって、変な人だとは限りませんよ』とだけ言ったけど、世間の見方ってそんなものかもしれませんね」
気の毒だから夫には言ってないけどとエリさんは笑った。夫は休日の学校開放のボランティアもしている。誰より地域の子どもたちの安全を願う側面ももっているのだ。だが、「奇妙な」ファッションのせいで勘違いされることもあるのだろう。
■「他人の目」を意識することも必要
「人は見かけじゃない。
他人の目を気にしてばかりいては生きていけないが、「そう思われているかもしれない」という考え方をもつことも大事かなとエリさんは思うようになったという。
「件の近所の人からは、後日、『この前はごめんなさい』と言われました。他の人に、夫が普通の会社員だと聞いたみたい。でも彼女、『奥さんはご主人のファッションを気にしないんですか』とも言っていました。
『個人の自由なので』と答えたら、『うちは私が選んだ服しか着ないんですよ』って。『あら、個人の自由がないなんてかわいそう』と皮肉っておきました。また変な人だとうわさされるんでしょうけど」
一言言わないと気が済まない自分もいる。面倒ですね、人との関わりは。そう言って、エリさんは苦い顔で笑った。









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