BYDが7月に発売した軽自動車規格のEV「RACCO(ラッコ)」が話題になっています。なぜ話題になっているのか? その良いところ、そうでないところは? など、気になるところを試乗会でチェックしてきました。
中国からやってきた黒船「RACCO」
この新型車RACCOが話題になった最大のポイントは、日本の軽自動車規格に向けて専用開発されたモデルであること。これまでも、海外ブランドの軽自動車は存在していましたが、それは海外市場向けに作ったモデルを日本にあわせたものばかり。日本の軽自動車規格にぴったりとあわせて専用開発したのは、今回のBYDのRACCOが初めてです。日本メーカーが守ってきた聖域に、いわば黒船が来襲したようなものです。注目となるのも当然でしょう。
RACCOは今最も売れている、スライドドアを持つスーパーハイトワゴンというスタイルを採用しました。実のところ、日本の軽EVには商用車ベースのスーパーハイトワゴンしかないという状況です。そのうえ、RACCOは自社(BYD)製のリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載するため、コスト的に有利なのです。そのおかげで、販売価格は国のEV補助金を使うとエントリーモデルが200万円を切りました。売れ筋のスタイルで、しかも安い! ということでも話題になりました。
新参の中国メーカーなのに売れそうなものだから、さらに注目度が高くなっていると言えます。ましてや、最近は日本と中国との関係は冷え切っていますから、アンチが増えている状況です。そうした人にもRACCOは目につく存在。
プレーンでクセのない内外装のデザイン
RACCOのデザインは、内外装ともに、とてもプレーンでシンプル。日本車と並んでいても、それほど強く自己主張しません。日本の街中に、すっと溶け込むデザインです。
インテリアの印象も、エクステリアと同じく、プレーンかつシンプルなもの。日本車のディテールに凝った室内デザインと見比べると、そっけない印象を抱くかもしれません。ある意味、このプレーンさが、中国ブランドのBYDの特徴になるのでしょう。
ちなみに、RACCOの装備はかなり充実しています。スライドドアは電動開閉するだけでなく、ドア下にあるセンサーを足先で感知させれば自動開閉する機能も上位グレードに用意されています。スマートフォンをクルマのキー代わりにする機能もあります。先進運転支援システムのACCだけでなく、車線逸脱防止機能も備わります。
幼児置き去り検知機能もあり、6個のエアバッグなど安全装備も充実。上位グレードには合皮のシートに、運転席の電動シートまでを用意。
バッテリーに制御系を統合した「X-PACK」
RACCOの技術的なトピックは、BYDが開発した「X-PACK」の採用にあります。X-PACKは、BYD製のリン酸鉄リチウムイオン電池「ブレードバッテリー」に制御ユニットを一体構造としたものです。これにより、ボンネットの中に置くユニットは、モーターとギヤのみという、非常に小さなものとなりました。
その空いたスペースを、衝突安全性能のために使用することで、RACCOは高い衝突安全性を実現しているのです。また、バッテリーと制御系を一体化したX-PACKは車体の構造体とするべく、強度の高い鋼材が採用されており、高い車体剛性にも貢献しています。
どっしりとした普通車のような落ち着いた走り
そんなRACCOを試乗した感想は、「まるで普通車のような高い安定感がある」というものです。パワーステアリングの手応えは重めで、どっしりとしています。試乗車が最上位グレードの「300プレミアム」だったことで、車両重量が1230kgもあり、タイヤが165/65R15という大径だったことも、安定感を強く感じた理由でしょう。
ただし、スタートはEVらしい力強さとスムーズさ、静かさがありました。モーターのスペックは、最高出力47kW、最大トルク160N・mと、ターボエンジン車同等のパワーと、より強いトルクを誇ります。ただし、トルクのピークに早めに到達してしまい、加速に伸びがありません。勾配のきついワインディングロードを苦もなく上ってゆきますが、速いわけではありません。
それよりも感心したのは、ワインディングロードを走っても、軋み音はしませんし、しっかりと4輪が路面をつかんでいたことです。床下に積んだX-PACKが、高い車体剛性を実現しているのでしょう。ボディがしっかりしているので、サスペンションが良く動き、その結果しっかりとタイヤが路面に追従しているのです。
インバーターからの嫌な高周波の音も、しっかりとマスキングされていました。軽自動車というよりも、小さな普通車という印象。満足できる走りでした。
充実の内容から割安感を感じる
実際にRACCOを走らせてみれば、EVらしい静かさとスムーズさ、力強さがありました。ハンドリングは安定性が高く、乗り心地も不満のないものでした。また、機能も今どきの軽自動車として十分以上なものが用意されていました。
EVとして気になる航続距離は、エントリーグレードの「200」はバッテリー容量が22.4kWhで210km(WLTCモード)、上位グレードの「300プラス」と「300プレミアム」は35.84kWh搭載で320km。現在の日本の軽EVのベストセラーである日産「サクラ」が20kWhのバッテリー搭載で航続距離が180kmだと考えれば、RACCOのスペックは十分なものと言えます。
それでいて価格は「200」が214.5万円、「300プラス」が239.8万円、「300プレミアム」が249.7万円。
走行性能に機能、価格を合わせて考えれば、RACCOは相当に割安感があります。コスパの良いクルマと言えるでしょう。そんなBYDが掲げたRACCOの販売目標は年間1万台。これは、サクラと軽EVトップを争うラインです。
モノの良さは確認できました。あとは、市場がどう判断するのか? 果たして、RACCOはサクラとトップ争いできるかどうかに注目です。
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「RACCO」ギャラリー

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