Text by 吉田薫
Text by 寺内暁
Text by 瀬川結美子(有村架純)
Text by リン リェン リー(黒木華)
Text by 新山いずみ(有村架純)
Text by 下永田亮樹(黒木華)
映画『マジカル・シークレット・ツアー』(6月19日公開)は、主婦たちが「金の密輸」をしたことで逮捕されたという実際の事件に着想を得た作品だ。
有村架純が演じるのは、夫の横領によって突然借金を背負った二児の母・和歌子。
本作で描かれるのは、自分の努力だけでは解決できない状況に置かれている女性たちだ。
今回、主演・有村架純と黒木華の2人に話を聞いた。現代社会が女性に課す理不尽な壁を正面から描きながら、それでも一歩踏み出した人間の疾走感と爽快感を体現した2人が、撮影を経て何を感じ、何を思ったのかを語ってくれた。
―有村さん演じる和歌子と、黒木さん演じる清恵はどんな人物だと思いましたか?
有村架純(以下、有村):私が演じた和歌子は、「これが自分の人生なんだ」と自分で自分を無理やり納得させてきたような女性です。周りを受け入れることが大事なんだ、いい妻・いいお母さんでいなければ、と真面目がゆえに自分の首を絞めてしまっていたのかなと感じました。
なので、踊ったり飛び跳ねたりという解放的なシーンでは、日頃の窮屈さが際立つようにテンションを高めにすることを意識していました。
有村架純(ありむら・かすみ)。1993年2月13日生まれ。2009年デビュー。
黒木華(以下、黒木):清恵は理系の研究職で、自分が出した成果を組織に取られてしまう理不尽な環境にいる女性です。研究室のトップが言うことが正しいとされてしまう。そういう状況や環境に憤りを感じながら、「私はこうしたいんだ」という強さもある、感情に起伏のあるキャラクターでした。
事前に研究職に関する資料をいただいて、ポスドク問題や女性研究者が少ない状況などを知りました。何十年と努力してきたことが不当な理由や環境で認められない状況は、相当やりきれないだろう、と想像しながら演じていましたね。
黒木華(くろき・はる)1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年にNODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。7月上演の舞台『NORA』、8月公開の映画『時には懺悔を』に出演。
―3人が金の密輸という犯罪行為に手を染めることについて、脚本を受け取ったときや演じているときにどう受け止めてましたか?
黒木:何かに抗おうとしている人たちって魅力的に映るんですよね。自分自身を変えたくて、いまの環境から抜け出したくて頑張る人たち。
有村:3人の置かれている状況は、自分だけではどうにもできない、社会や政治によるところも大きいと感じました。罪を犯したこと自体はもちろん間違いです。でも、そうせざるを得なかった背景は、私たちだけでは解決できない問題があると思いました。
社会が変わらなければ、彼女たちのような苦しみはなかなか無くならないのだろうな、どうすればいいのかな、と自分に置き換えながら考えていました。
ー本作で3人は破滅的な行為を繰り返しながらも、一方でふっきれた様子もありますよね。シンガポールを駆け抜けるシーンには楽しさも感じました。
有村:生きづらさや犯罪といった重いテーマを持つ作品ですが、雰囲気を暗くしてしまうのは違うかなという感覚が、最初の本読みのときからありました。3人が楽しそうにしているからこそ、彼女たちの人生の難しい部分との濃淡が表現できるんじゃないかなと思っていたので。みんなでワイワイしたり、女子会的な雰囲気だったりを大切にしていました。
ー黒木さん演じる清恵は関西弁でテンションも高く、作品に軽快な雰囲気を持ち込んでくれていますよね。
黒木:監督に「もっとテンションをあげて!」と何度も言われましたね(笑)。
―お互いの印象や、刺激を受けた部分はありましたか?
有村:映画もドラマも舞台も、黒木さんの作品は何度も拝見しています。黒木さんにしかないたたずまいと声と空気感があって、それが現場でも空間にすっと落ちてくるんです。間近で見て、ただただ圧倒されましたし、同時に自分にはまだこういうことが足りないんだなと気づかされました。お芝居だけでなく、現場での振る舞い方も含めて本当に刺激を受けました。
黒木:いえいえ、そんな……私は現場で結構ふざけてしまうことがあるのですが(笑)、有村さんは座長として締めるところはきちんと締めながら、それでいて現場を緊張させないんです。佇まいや雰囲気で現場の空気を変えてくださるのが本当にすごいと思いました。
有村:あと、みんなフラットというか、無理をしていない現場でしたよね。海外ロケもあったので楽しい思い出になりましたし、撮影の空き時間は自然とみんなで集まって買ってきたものを一緒に食べよう、と声をかけあったり。そういう優しさに本当に助けられていました。
黒木:作品のなかでも支え合う関係性だったけれど、現場でも助け合っていましたね。
―社会や経済のシステムからこぼれ落ちてしまった女性たちが、自力で状況を打開する姿や、一方でお金の感覚が変化していってしまう描写は、ハラハラするものがありました、そんな本作の最後に、主題歌である椎名林檎さんの“ありあまる富”が流れるのが印象深かったです。最後に、お二人は本作を通じてあらためて「富」とは何だと思いましたか?
有村:この作品を通して豊かさとか、富について考えるなかで、「人生を終えるときに何を持っていけるかな」と考えたんですけど。モノやお金は持っていけないですよね。もう記憶しかないんじゃないかなって。だからこそ、あらためて、いろんなものを目に焼きつけて、感じて、経験を積んで生きていきたいなと思いました。
黒木:私もそう思います。何をどれだけ感じられるかが、自分を豊かにしてくれているんだろうな、と思いますね。
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