「今さら聞けない」バイクに関するさまざまな疑問や不安に、バイクライターがやさしく回答する本連載。今回は、「エンジンオイル」に関するお悩みです。


エンジンオイルの違いがイマイチわからない… (男性/43歳)

○エンジンオイルの選び方とは?

前回、エンジンオイルの交換時期とその役割について解説しました。

しかし、一概に「エンジンオイル」といっても1リッターあたり1,000円を切る格安品から5,000円以上するものがあり、どんなオイルを選んだらよいか迷う方も多いはずです。一般的にエンジンオイルの値段と性能はおおむね比例しますが、その差はどこにあるのでしょうか。

「液体パーツ」と呼ばれるほどエンジンオイルの世界はマニアックなのですが、おおまかに「鉱物油」、「部分合成油」、「化学合成油」という3つのベースオイル(基油)に分類され、これらに酸化や粘度低下の防止など、オートバイ用エンジンに適した添加剤が加えられています。

この3種類のオイルの中で一番安価なのは、古くからある「鉱物油」で、原油を精製して作られます。その反対に高価なのが分子レベルまで精製した「化学合成油」ですが、原油を高レベルで精製した「VHIV」のほか、原油以外から作られる「PAO」と「エステル」系の上級グレードが存在します。この中間にある「部分合成油」は鉱物油に化学合成油をブレンドしたもので、一般ユーザーが使用するなら性能と価格のバランスがよいため、メーカー純正オイルにもラインアップされています。

また、オートバイとクルマは同じレシプロエンジンですが、オートバイはクラッチがエンジンオイルで浸っているため、クルマ用のオイルを入れると滑ってしまうリスクがあります。オートバイ用のオイルは「MA(MA1/MA2)」と「MB」の2種類があり、クラッチのあるモデルは「MA」、クラッチのないスクーターはクルマ用を使うこともできますが、一般的には「MB」が推奨されます。

そのほか、エンジンオイルには「5W-30」や「10W-40」といったマルチグレードの粘度が表記されています。「W」は「Winter」の意味で、最初の数字は少なければ寒さに強く、ハイフンを挟んだ後ろの数字は大きいほど高温下でも油膜を保持することを示しています。基本的にはバイクメーカーが指定している粘度を選べば間違いありません。

○迷ったらズバリこれ!

エンジンオイルはバイクメーカーの純正品のほか、オイルメーカーが販売する製品などたくさんありますが、“オイルでエンジンを守る”という目的は同じでも、安価な鉱物油を短期間で交換する人もいれば、高価な化学合成油にこだわる人など、さまざまな考え方があります。あまりメカに詳しくなく、オイル選びで失敗したくない方に最適なのは、ズバリ“自分の乗っているオートバイメーカーの純正オイル”です。

昔は有名なオイルメーカーが販売する製品の方が高性能だと言われる傾向がありましたが、現在はバイクメーカーの純正オイルも高く評価されています。そもそも純正オイルは大手の石油企業やオイルメーカーと共同開発したもので、モデルの開発時から使われているため相性はバツグンです。中には部分合成油でも化学合成油に匹敵する性能を持つオイルもあるため、“基本はバイクメーカー純正”と考えておけば間違いないでしょう。

オイルに興味がわいてきたら、「モチュール」や「ロイヤルパープル」など有名なプレミアムオイルに入れ替えてみるのもオートバイ趣味の楽しみ方のひとつです。すこし値は張りますが、高性能オイルのフィーリングを体感すればエンジンにとって最も重要な「液体パーツ」と呼ばれる理由がわかるかもしれません。ただし、とても高価な化学合成油の中には、レースなどの一発勝負で超高性能を発揮しても寿命が短い製品もあるため、交換時はバイクに詳しい人やショップに相談することをおすすめします。

津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら
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