ボーズのヘッドホンと聞くと、音質やノイズキャンセリングの性能がとても良いけれど、大人のオーディオファンに向けた少し高価な製品、というイメージを持つ方も少なくないかもしれません。新しい「Bose QuietComfort Headphones(第2世代)」(以下、QCH2)は、ボーズの実力をもっと気軽に、ファッション性も含めて楽しめるスタンダードモデルです。
今回は、iPhone AirとMacBook Neoを組み合わせ、BluetoothとUSB-Cによる有線再生を試しました。上位モデル「QuietComfort Ultra Headphones(第2世代)」(以下、Ultra)との違いも詳しく紹介します。
機能的で軽やかな新デザイン
QCH2のデザインは、従来のQuietComfortシリーズよりもシンプルで、輪郭をシャープに仕上げた印象です。今回試したホワイトスモークは、イヤーカップの内側にライムグリーンを差し色として配置。定番のブラックを含む5色が用意され、デュードロップミントなど明るい色も選べます。
樹脂を中心にした外装素材は、Ultraがあしらうメタルパーツほどの重厚感はないものの、安っぽさは感じさせません。服やスニーカーを選ぶようにコーディネートが楽しめる、最新のポータブルオーディオらしいフレッシュさとインパクトがあります。
本体は約230g。約260gのUltraより30g軽く、手に持った時だけでなく、頭に装着した瞬間にも数字以上の差を感じました。締め付けが強すぎず、1時間を超えて使っても疲れにくく感じます。ただ、イヤークッションの厚みと柔らかさ、側圧の穏やかさではUltraが一枚上手でした。
イヤーカップを立体的に折りたたみ、付属のハードケースへコンパクトに収納できます。ケース内のポケットに充電・リスニング用のケーブルを収められるため、出張や旅行にも安心して持ち出せます。
暑い夏の屋外なら、さすがにワイヤレスイヤホンの方が快適です。イヤーパッドに付着した汗は不快なだけでなく、手入れを怠ると表面素材の劣化を早める原因にもなります。一方、空調の効いた室内や飛行機、長距離の列車移動では、これから残暑の厳しい季節にもQCH2が活躍すると思います。完全ワイヤレスイヤホンのように本体を落として紛失する心配が少なく、使用していない間は首に掛けておくことができるのも利点です。運動中はイヤホン、仕事や長距離移動にはヘッドホン、という使い分けが理想的です。
ノイズキャンセリングはUltraに負けない消音効果
ボーズ独自のノイズキャンセリングは、QCH2の大きな特徴です。エアコンの運転音や電車、自動車の走行音がスッと消えます。さらに音楽を再生すれば、カフェで隣の人が話す声もかなり気にならなくなりました。
QCH2には、適応型フィードフォワード制御が新たに採用されました。眼鏡や髪型、帽子の影響でイヤーカップが耳もとに密着しにくい場合も、6基のマイクを使ってすき間による影響を補正し、ノイズキャンセリング効果を維持します。眼鏡を掛けたり外したり、キャップを被ったりしながらノイズキャンセリングやサウンドのバランスの変化を確認しましたが、ブレを感じませんでした。なお、上位のUltraはさらに8基のマイクに加え、耳の形に合わせて音とノイズキャンセリングを自動調整するCustomTuneも搭載しています。音のバランスが崩れない安定感は、QCH2も互角の性能です。
屋外では、周囲の音を聞ける「アウェア」モードが欠かせません。取り込まれる音は自然で、マイクを通したノイズ感もありません。ActiveSenseをオンにすると、アウェアモードを保ったまま、クラクションや工事音などの突発音にノイズキャンセリングを働かせます。装着した耳の近くで強く拍手して大きな音を鳴らしてみると、スッとノイズキャンセリングモードに切り替わりました。ユーザーの耳を保護する大事な機能です。
操作は、イヤーカップに配置された物理ボタンが中心です。
一方、Ultraが搭載するヘッドホンの着脱自動検知には対応していません。ヘッドホンを外しても再生が自動停止しないため、スマホなどペアリングした機器で再生をストップしない限り、ゲームのサウンドなどが外したヘッドホンから漏れっぱなしになるので要注意です。
Boseアプリでは、低音・中音・高音の調整や、ノイズキャンセリングの強さを変えたリスニングモードを作成できます。操作はとてもシンプルです。
Bluetoothは、2台の機器と同時接続できるマルチポイントに対応します。Macで音楽を聴きながら、iPhoneにかかってきた通話にも素速く切り替えられます。内蔵バッテリーによる連続駆動は最長24時間。UItraの最長30時間には少し劣りますが、付属のUSBケーブルを携帯すれば、Macに接続して音楽を聴きながら充電もできるので、不意にバッテリー切れに見舞われる不安もなく使えました。
ボーカルとメロディが映えるサウンド
Apple Musicで配信されている楽曲を聴きながら、QCH2のサウンドを確かめました。
宇多田ヒカルのアルバム「DISTANCE」からタイトル曲の『DISTANCE』を聴くと、活き活きとしたボーカルと、ギターやキーボードの豊かな音色が印象に残ります。リズムセクションも軽快で、爽やかな疾走感があります。
ボーズ伝統のパワフルな低音は健在ですが、量感だけをむやみに主張しません。中音域を華やかに引き立てながら、スピードと弾力のある低音で全体をバランスよく支えます。小音量でも、演奏の細部が埋もれにくいほど彫りが深く、音楽の躍動感を伝えます。ノイズキャンセリングと組み合わせれば、賑やかな場所でも無理に音量を上げずに済むので、やはり耳にやさしいヘッドホンであると感じました。
角野隼斗のアルバム「Chopin Orbit」から『エチュード 白鍵』では、ピアノが艶やかに踊るような力強さで、鮮烈な情景を描きます。中音域のきらびやかさと、音像の明瞭さも際立ちました。好きな歌手の声や楽器が奏でるメロディーなど、「楽曲の主役」を追いかけたい方に相性のよいヘッドホンです。
上位モデルであるUltraの印象についても、比較のため少し触れておきます。
イマーシブオーディオで動画コンテンツにものめり込む
これまではUltraだけの機能だった「イマーシブオーディオ」も、QCH2に搭載されました。オンにすると、左右に加えて高さと奥行き方向へ音場がグンと広がります。音楽系のコンテンツだけでなく、映画やアニメ、YouTubeなど映像配信系のコンテンツのサウンドを楽しむ時にも相性のよさを実感します。
QCH2は、USB-Cによるデジタル音声の入出力にも対応しました。初代QuietComfort Headphonesでは、USB-C端子は充電専用だったため、この点は明確な進化点です。USB接続時には、最大48kHz/24bitのデジタルオーディオ入力に対応します。Macに接続してApple Musicのロスレス音源を聴くと、同じ曲をBluetoothで聴く場合よりも、音と音のすき間に“ゆとり”が生まれ、リラックスして聴ける感触が得られると思います。
さらに、USB接続時にも内蔵マイクが使えるので、オンライン会議などの場面でも本機が活用します。無線接続よりも有線の方が音途切れが起こりにくかったり、ヘッドホンを充電しながら使える安心感があります。
初めてのボーズ・ユーザーのための新定番
4万円を超える本機の価格は、必ずしも安価ではありません。それでも、強力なノイズキャンセリング、バランスがよく没入感のあるサウンド、軽快な携帯性などの魅力をひっくるめて考えると納得感があります。
上位のUltraの価格は59,400円。両者の価格差は13,200円です。CustomTune、aptX Adaptive、装着検知、最長30時間のバッテリーに加え、より上質な装着感や広い音場まで含めれば、上位機にふさわしい体験価値がUltraにはあります。
ただ、QCH2はUltraを安価にしただけの製品ではありません。自分の個性を主張できるアイテムとして、お気に入りのヘッドホンを長く愛用したい方には、ボーズが提案する新世代のQuietComfortをぜひ体験してもらいたいと思います。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら











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