本来、「笑顔」は誰でも美しいとされる。
また、「笑う門には福来る」とか「笑いは百薬の長」「笑いにまさる良薬なし」なんて言葉もあるように、笑うことは何より重要なこととも思う。


とはいえ、うかつにも本気笑いをしすぎたとき、ときどき予期せぬ悲劇がやってくることがある。それは、「笑いすぎて鼻がブヒッとブタのように鳴ってしまう」ということ。

親しい間柄の者同士では、「ブタになったよ!(笑)」などとツッコミが入り、さらなる笑いの連鎖にもつながるけれど、遠慮のある間柄では、一瞬、水を打ったような静けさが訪れることすらある。
本人ばかりが赤面し、「あ、鼻、鳴っちゃった(笑)」などと呟くが、周りは笑うわけにもいかず、気まずいまま時が流れる――そんな経験、誰もが一度はしたこと・目撃したことがあるのではないだろうか。

では、なぜ笑いすぎると、鼻がブヒッと鳴ってしまうのか。

「笑いすぎたときに鼻がブヒッと鳴るのは、大きく笑うことにより、最大呼気の状態となり、そこで吐いた分だけ吸気をしなければならないからです」というのは、東京都江東区・みやさか内科医院の宮坂隆院長だ。


大きく笑ったときには、大量の空気を一気に吸うことになるが、口からの吸入量だけではまかないきれず、鼻からも空気を吸うことになる。それが原因なのだという。
「一気に鼻からも空気を吸うことになると、急速に鼻腔内に空気が流入し、軟口蓋(のどの奥のやわらかな部分)で振動して、ブヒッと音が鳴るのです」
確かに、あまりに大きく笑いすぎて、「苦しい……息ができない……」なんて笑い死に状態になっている人、息苦しくなっている人も、よく見かけるもの。

こうした「鼻がブヒッ」状態になりやすいのは、もしかして鼻で息をしづらい人=鼻が詰まった人だったりして? あるいは、リアクションの大きい人なのだろうか。
「鼻が詰まっていなくても、鼻がブヒッとなりますよ。鼻が詰まっていると、かえって口呼吸になるので、起こりにくいのでは? やはりリアクションの大きい人になりやすい傾向はあると思います」
激しくブレスしながら話す人、マシンガンのように喋る人などにも共通するところはあるのかもしれない。


余談だが、皮膚科医によると、皮膚のシワは何度も同じ場所を折りたたむことでできやすくなるため、「よく笑う人は笑いジワができやすい」「リアクションの大きい人は表情ジワができやすい」というのは、よく聞く話だ。

幸福なはずの「笑い上戸」で、鼻がブヒッと鳴ったり、シワができるなんて……ちょっと皮肉な話ではないか。
もちろん美しく、たおやかに笑えば良いことなのかもしれないが、鼻を鳴らさないで笑うにはどうしたら良いんでしょう?
「これを止めるには口で空気を吸う意識をすることです。意識しないと止められないと思います」

楽しく大笑いするのは良いけれど、鼻は鳴らさず、可憐な笑いを身につけたいものです。
(田幸和歌子)