海老天、かき揚げ、コロッケなどから好きな1品を選べる、ゆで太郎名物の「無料クーポン」。2009年に始まったこの企画には、「10円引き」「30円引き」「50円引き」は絶対にやらないという、当初からのルールがありました。


同じような金額でも、「値引き」と「無料」では感じる価値がまったく違う――。『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)から抜粋してご紹介します。
○値引きより「得した!」を売る

ゆで太郎へ行くと、お会計の時にお客様がお財布から小さな券を取り出して店員へ渡している光景をよく目にします。

今ではゆで太郎の名物になった無料クーポンです。海老天、かき揚げ、コロッケなど8種類の無料券が1冊になっていて、430円以上のお会計で1枚使える仕組みです。

このクーポンを始めたのは17年前、2009年のことでした。創業5年を迎え、「感謝セールでもやろうか」という、ちょっとした思いつきから始まった企画です。

ただ、一つだけ最初から決めていたことがありました。

「10円引き」「30円引き」「50円引き」は絶対にやらない。そう決めていたのです。

理由は単純です。30円引きと言われても、お客様はそれほど得した気分にはなりません。
財布に入れておこうという気持ちにもなりにくいでしょう。でも、「海老天無料」と言われたらどうでしょう。

「これは得だ」

そう直感的に感じてもらえます。人は数字ではなく、体験でお得さを感じるのです。

この読みは当たりました。

当初は年1回だけのつもりだったクーポンは、好評だったため年2回になり、現在では3月・6月・9月・12月の年4回実施しています。実際には各回15日ほど配布し、残った分を翌月初めに配布するため、「月初になるとクーポンをもらえる」という印象を持たれている方も多いでしょう。

もちろん、有効期限も設けています。「また来よう」と思っていただくための仕掛けだからです。

実は、このクーポンには社内の仕組みにも一つこだわりがあります。例えば海老天を無料でお渡しした場合、その分は販促費ではなく、原価として処理しています。一見すると、販促費として計上した方が自然に思えるかもしれません。


しかし、そのやり方ではお店の売り上げが見かけ上増えてしまいます。さらにロイヤリティーが売り上げ歩合なら、その分だけ加盟店の負担も増えてしまいます。

私は、それが嫌でした。ゆで太郎のロイヤリティーは売り上げの5パーセントです。だからクーポン分は売り上げを立てず、原価として処理する。その方が加盟店さんにも納得していただけます。

クーポンは値引きではありません。お客様にもう一度来ていただくためのセールスプロモーションです。

「得した」

そう感じてもらえれば、その満足感は次の来店につながります。実際、今では加盟店の皆さんもクーポンを歓迎してくださっています。現場で、お客様が喜んでいる姿を見ているからです。人は、30円引きではあまり心は動きません。
でも、「無料」という言葉には強く反応します。同じような金額でも、伝え方一つで価値の感じ方はまったく変わる。

何気ない思いつきから始まったこのクーポンは、今ではゆで太郎にとって最も強力な販促ツールの一つになっています。

まとめ
値引きではなく、「無料」という体験がお得感を生む

○『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)

「駅前一等地には出店しない」「職人は育てない」「薄利多売にも頼らない」外食産業の常識を次々と覆し、全国200店舗超へと成長した「ゆで太郎」。その成功の裏には、競争しない立地戦略、職人技を分解して誰でも再現できる仕組み化、利益率より来店頻度を重視する価格設計があった。本書では、22年連続黒字を支えた経営の考え方を初公開。人手不足時代の組織づくり、フランチャイズ運営、商品開発、価格戦略、外国人雇用まで、「再現性のある経営」の本質を余すことなく明かす。外食業はもちろん、あらゆる業種の経営者・管理職に役立つ一冊。
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