【増田俊也 口述クロニクル「茶の間を変えたコメディアン 欽ちゃんのぜ~んぶ話しちゃう!」】#37


 作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。


  ◇  ◇  ◇


増田「昔はアマ野球とプロ野球しかなかったのが、その間の独立リーグという組織ができたと」


萩本「だってね、実力あっても、いま一歩でプロ野球に入れない人っていうのはたくさんいるのよ」


増田「はい。投げれば140キロ、145キロ出るけども、サラリーマンをしなきゃいけない」


萩本「そうそう。だからそういう人の受け皿を作らなきゃいけないって思った。それが今、プロ野球どころか独立リーグ出身で大リーグ行った人もいるじゃない」


増田「化けるんですよね」


萩本「そうだよね」


増田「ゴールデンゴールズの1つのきっかけになったのは、長嶋茂雄さんだとは知りませんでした」


萩本「そう。長嶋さんが野球を何とかしなきゃいけねえって。俺、長嶋さん大好きだし、野球は滅びちゃいけないって思ったらさ、やる気になっちゃったんだよ」


増田「当時、テレビのナイター中継見てて、あー、これは数字が落ちてくるなというのが」


萩本「そうそう」


増田「それはやっぱなんかそういう雰囲気が画面からにじみ出てくるんですか?」


萩本「出てくる。だいたい、みんな間違えてますから。だいたい日本の野球は大リーグからみんな持ってくるでしょ。大リーグの優勝のシーンなんかひどいですよ。終わると急いで部屋に入ってシャンパンかけてんのよ。客を喜ばせるんじゃなくて、自分たちで喜んでんのよ。間違いでしょう。

その点、日本はいいですよ。絵があんですよ。フィナーレの絵を持ってる。そういうところは日本のプロ野球は上を行ってんですよ。胴上げするっていう。それが大リーグはね、みんなバーッと部屋に入ってね、シャンパンをかけ合ってるの」


増田「真似し始めてますもんね」


萩本「うん。俺は野球はこうでなきゃいけないってのを言ったわけじゃないんだけど」


増田「長嶋さんは萩本さんに何時間も一生懸命話した」


萩本「ねんりんピックって朝から晩までだから。挨拶して、それが終わって『もう一回お願いします』『もう1回お願いします』と。その間、けっこう時間があるから、ずっと一緒にいたのね。そのあいだずっと話してた」


増田「5時間ぐらい」



「俺でもなんかできますかって言いたくなっちゃったんだよ」

萩本「5時間どころじゃないでしょ。Jリーグがやっぱり脅威でね、『子供がサッカー行っちゃう』と。『サッカーはボールひとつでいいのよ。

蹴るだけなんだ。野球はね、バット買わなきゃいけない。グローブも高えんだ』とかね。『ちきしょう。みんなにバットとグローブ送ってあげたいよ』なんて言いながら。それとね、やっぱり子供たちにね、グラウンドがなさすぎだよ」


増田「そうですね」


萩本「俺たちの時代はグラウンドなくても原っぱでやったよね。ああいう環境がなさすぎだよとか言ってさ、長嶋さん熱いね、あの気持ちね。聞いてるうち、俺でもなんかできますかって言いたくなっちゃったんだよ」


増田「7時間、8時間ぐらいずっと」


萩本「そう」


増田「すごい情熱ですよね」


萩本「ええ。これは、ゴールデンゴールズをつくったあとのことだけど、ゴールデンゴールズとプロ野球の二軍で試合をしたい、盛り上がるんじゃないかと思って、スポーツ紙の人に聞いたの。『どうしたらいいですか』って。そしたら『やりたいんだったら、まずは王さんとこ行ったらいい。王さんはOK、OKみんなやんなって絶対言う人だから』って。

それで王さんとこ行って『そういうのをプロでやるっていうのはいかがでしょうか?』って聞いたら『大いにやんなさい』って」


増田「へえ。ほんとに鷹揚な方ですね」


萩本「そうそう。あとは、ブツブツ言うから、ノムさんとこ行った方がいいって。野村克也さんね。ノムさんとこにも行って。ノムさん、『なんだおまえ野球やんのか? 金かかるぞ』とか言いつつ、『それでもやらなきゃいかんな』って言ってくれた」(つづく =火・木曜公開)


▽はぎもと・きんいち 1941年、東京都生まれ。高校卒業後、浅草での修行を経て、66年にコント55号を結成。故・坂上二郎さんとのコンビで一世を風靡した。その後、タレント、司会者としてテレビ界を席巻し、80年代には週3本の冠番組の視聴率がすべて30%を超え、「視聴率100%男」の異名をとった。社会人野球「茨城ゴールデンゴールズ」の初代監督、2015年には73歳で駒澤大学仏教学部に入学するなど挑戦を続け、25年10月にスタートしたBS日テレ「9階のハギモトさん!」は今年4月からSEASON3に突入した。


▽ますだ・としなり 1965年、愛知県生まれ。小説家。

北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。


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