【あの頃、テレビドラマは熱かった】


「彼女たちの時代」(1999年/フジテレビ系)


  ◇  ◇  ◇


 細身スーツの30代が、iモードのケータイを手に「ソリューション」なんて口にしだした1999年。氷河期の就活生には、春の「だんご3兄弟」のマイナーコードがやけに染みた。

25万円もするロボット犬が発売予約開始20分で完売なんてニュースは別世界の話。


 それでも夏は来る。


 前の年にキャミソール姿だった女の子たちは、ちびTで体の線とおへそを惜しげもなくさらけ出してくれたけど、男たちはモヤモヤしていた世紀末の夏。


 そんな99年の夏に放送されたのが、「彼女たちの時代」(フジテレビ系)。深津絵里水野美紀中山忍が「73年オイルショック時生まれの26歳」という設定で、彼女たちの仕事、友情、恋に悩む等身大の姿を描いた。実年齢は水野さんだけ25歳だったけど。視聴率は当時としては低めの11%台なのに、いまだにドラマ通の間で語られる作品の一つだ。実際、複数のテレビ誌がこのドラマを99年のナンバーワンにしている。


 脚本の岡田恵和氏がバイブル的にしていたという山田太一脚本「想い出づくり。」(81年TBS系)と、ベースが似ていた。3人の20代半ば女性+30代男というのも。「想い出──」では柴田恭兵(81年当時30)がそうだったように、「彼女たち──」では椎名桔平(当時35)が印象的な役割を果たした。中山忍との不倫もありつつ、時期が時期だけに、彼が演じたエリートサラリーマンは壮絶なリストラに遭う。

地下の狭い個室に午前9時から午後5時まで閉じ込められて壊れていく演技は壮絶だった。おっと、主役は女性たちだ。3人の中でメインのフカッちゃんが演じたのは大手物流会社のOL。第1話での3人の会話の中でのセリフが秀逸だ。


「悪い人じゃないけど、感じは悪いよね」


 ああ、分かる。そんな人いる……ほとんどの人に特定の人物が浮かぶような絶妙な言葉が、ベリーショートのフカッちゃんの口からさらっと。この一瞬で見続けようと思った人がいたんじゃないか、と思わせる言語化だった。いかにも“彼女たち”が時代の主役みたいなタイトルの割に、ハッピーエンドでもなく、それぞれが前を向いて歩き出す話。別に正解とかないし、なんだかんだ言って自分が生きやすいように生きる手段はあるよ、って感じか。


 ん? いや待てよ。第1話冒頭で「私たちは不運な世代」と言っていた彼女たちこそが、実はずっと時代の主役なのかも。だって、急激に進歩するデジタル化を若いうちに体験して、次から次へと新しいツールを使いこなしている世代だ。

自分たちを「女子」って言い出したのも、この世代じゃない? で、今の年齢は……いや、それは言いますまい。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


編集部おすすめ